「ほの、晃一の内蔵が奇麗にせんかった、後に残った汚い物

があるじゃろ、ほれがじゃわだ、大事じなけんな」

 

 考え及ばない謎めいた晃一の顔が物語った。

 

「ほれがな、晃一、母やんに、助けられたけんな」
「ふうん、母やんがか、バアやん」

 

 母の胎内がどれほど不思議か晃一にキクは教えたかった。

 

(…ほれ、晃一に母やんの凄さ、教えとかんあかん…)

 

 胎児を守り育む母胎機能は完璧だった。

 

「のう、母やんはな、晃一の体に残った、汚れた物な」
「ほれが、どうなるん、バアやん」

 

「もう、母やんは、臍の緒を使いお腹に取り込んだけん」
「ほうか、汚い物を母やんが、取ったんか」

 

「ほの、晃一の汚い物な、母やんが外に出したけん」

 

 母胎機能の説明に骨を折ったキクは汗を拭いた。

 

「ほうか、バアやん、ほうじゃったんか」
「なあ、晃一、解ったか」

 

(…もう、汗が噴き出たわ、やっと晃一も解ったけん…)

 

「うん、羊水の中にした、小便が綺麗の解ったわだ」
「ほれな、晃一、母やんに、助けられたじゃろ」

 

 母の笑顔が綺麗な水面に浮かんだように晃一には映った。

 

           ー325ー