テレワークの機会が増え、まだ明るい時間につい“プシュ”といい気分に浸る人は多いだろう。ただ、大量飲酒が続くと、いい気分では済まなくなる。AERA 2020年7月13日号は、飲酒量の増加がアルコール依存症を招く危険性を警鐘する。

 

コロナ感染が先か、アルコール依存症が先か」

「オンライン飲み会で延々何時間も。気が付いたら明け方」「終電を気にせずに飲めるので、つい杯が進む」など、外出自粛や在宅勤務で酒量が増えたという人の声をよく聞く。

酒類販売のカクヤスによると、5月の売上高は業務用では前年同月比75.9%減だったが、家庭用は45.9%増。炭酸水など、アルコールを割るための飲料の販売も増加しており、「家飲み・巣ごもり需要」が続いていると見ている。

「自宅飲みの安心感から、飲酒開始時間が早まり問題飲酒に移行しやすくなってしまう。それが続けば、今後、
アルコール依存症に移行する可能性が考えられます」

 

「問題飲酒」という言葉に、自分の飲み方はまだまだ大丈夫、とかえって安心した人もいるだろう。しかし問題飲酒とは、酒飲みなら覚えがある行動を指す。飲んだ後、「転んでケガをする」「電車を乗り過ごす」「財布やスマホなど物をなくす」「どうやって帰ったか覚えていない」。いずれも「酔っ払いあるある」として笑い話にさえなりそうだが、専門家から見れば、立派な危険信号だ。

「かつては紙パックの焼酎やカップの日本酒にまみれて自宅で酔いつぶれている姿がアルコール依存症の人の代名詞でした。しかしこの数年、飲酒内容がストロング系缶チューハイに変わってきています」(斉藤さん)

 考えられる理由はいくつかある。ビールなどに比べてプリン体や糖質が少なく、健康を気遣いつつ飲めるイメージがあること、さわやかな印象を与えるCMやパッケージデザインで女性も手に取りやすいこと、炭酸やかんきつ系の風味が利いていて喉越しよく飲めること、値段が安いことなどだ。いずれもお酒への抵抗感を少なくしている。

 しかし、アルコール度数9度ということは、ストロング系チューハイ500ミリリットル缶1本に含まれる純アルコール量は36グラム。アルコール度数40%のウイスキーをシングル1杯(30ミリリットル)飲んで摂取する純アルコール量は9.6グラムなので、約4倍にもなる。これをグビグビッと2本、3本と飲めば、あっという間に大量のアルコールを摂取してしまう。なお、ストロング系缶チューハイを3本飲んだときの純アルコール摂取量は、ウイスキーをシングルで11杯飲んだときの純アルコール摂取量とほぼ同じだ。(ライター・羽根田真智)

※AERA 2020年7月13日号より抜粋