ダウ600ドル超下落(1) マリー氏「高値から10%程度下げる可能性も」

2018/02/03 07:39  日経速報ニュース    960文字  
 2日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比665ドル75セント下落した。1日の下げ幅としては、リーマン・ショック直後の2008年12月1日以来の大きさだ。1月の米雇用統計で平均時給の伸び率が市場予想を大きく上回り、米長期金利が4年ぶりの高水準に上昇。低金利と好景気の両立という「適温相場」の前提は変化してきた。米株相場は大きな転換点を迎えたのか、米市場関係者に相場見通しなどを聞いた。

■マシュー・マリー氏 ミラー・タバック株式ストラテジスト
 世界的に長期金利の上昇傾向が強まっていることが株価の割高感につながり、投資家が保有資産の見直しを迫られている。株だけでなく、ハイイールド債などを含む幅広い金融資産で価格変動率が高まっており、リスク資産を手じまう動きが広がった。ここまで相場を押し上げてきたコンピューターを用いた「アルゴリズム」取引が、金利上昇などを受けて一斉に売りを出した面もあった。

 米企業の決算発表シーズンも終盤に近づき、今後は業績改善などの好材料が減ることも投資家の楽観が後退した一因だ。米国株は長期にわたって調整らしい調整もなく上昇してきた。昨年末からの相場上昇をけん引してきた資源株が売られるなど選別物色にも限界が出始めており、相場の過熱感が鮮明になってきた。

 株価は目先、高値から5~7%程度調整するとみている。場合によっては一時的に10%程度下げる可能性もあるが、この程度の下げは健全だ。金利同様に株も世界各国の相場との連動性が高まっており、日欧株の動きに注目している。週明けの日経平均株価やドイツ株式指数(DAX)があまり下げなければ、米国株を下支えする可能性がある。

 米株式相場を取り巻くファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は強い。緩やかな物価上昇も米経済にとっては好ましいことだ。18年のFRBの利上げは4回とみている。ただ株式相場が下げ止まらないようなら、金融市場の混乱を背景に利上げ回数が減る可能性もある。

 いったん下げた後は持ち直し、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数の18年年間の上昇率は1ケタ台後半になると予想している。資源株への買いが続き、長期金利上昇で利ざやが拡大する金融株にも投資妙味があるが、銘柄を選別して投資することを推奨する。

ダウ600ドル超下落(2) ウィーガンド氏「年末にかけ上昇」、フォレスト氏「銘柄選別厳しくなる」

2018/02/03 07:39  日経速報ニュース    951文字  
■エリック・ウィーガンド氏 USバンク・プライベート・クライアント・リザーブのシニアポートフォリオ・マネジャー

 2日の米国株急落は金利上昇で(株式の割高感が強まるとの)投資家の不安が強まったことが主因だ。1月の相場上昇で大きなリターンを上げた投資家が多かったこともあり、利益確定売りが広がった。上昇基調のなかで迎えた短期的な足場固めの過程にすぎず、S&P500種株価指数は年末までに3000(2日は2762)に達するとの見方は変えていない。

 世界的な好況で米企業業績が拡大し、米株のバリュエーション(投資尺度)の急速な悪化を抑えている。とりわけ売上高の伸びが続いていることは、活発で健全な景気拡大の証しだ。インフレがやや加速しても、世界的なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の改善が続く限りは株式への恩恵はより大きい。投資環境は依然として良好であり、株式の「オーバーウエート(買い)」は維持するよう推奨する。

 2日のような急落局面では保有する資産構成を柔軟に見直す姿勢が大切だ。基本的には株高持続を前提に、ハイテク株を含めた景気敏感株の持ち高を多めにし、公益事業株や通信株などのディフェンシブ銘柄は中立以下に抑えるのが良いと考える。


■キム・フォレスト氏 フォトピット・キャピタル・グループのシニアアナリスト

 2日の米株式相場が大きく下げたのは米長期金利の上昇基調が鮮明になった影響が大きい。長期金利の水準自体は歴史的にみるとかなり低いが、米国外の国債利回りも上昇している。米連邦準備理事会(FRB)は利上げ加速を示唆しているわけではないが、2008年の金融危機後の欧米中銀の量的緩和策を受けた「フリーマネー(超低コスト資金)」の時代が終わるとの警戒感が投資家に広がった。

 今後は投資家の銘柄選別が厳しくなると予想する。投資家の強気ムードを追い風にこれまでは実力以上に買われてきた銘柄も多かった。こうした銘柄には売りが続き、目先の相場の軟調さは続く可能性がある。ただ、世界経済や米企業業績は堅調で、相場全体の水準は非常に割高というわけではない。2日の株価急落で値ごろ感が出た優良銘柄も多く、こうした銘柄には押し目買いが入り相場を支えそうだ。

〔NQNニューヨーク