株、長引きそうなリスク回避 「6月末の株高」は特殊要因、底堅さに油断禁物

2013/06/21 12:11 日経速報ニュース 1400文字
 21日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、節目の1万3000円を再び割り込んだ。前日20日の米ダウ工業株30種平均が353ドル安と今年最大の下げ幅を記録。19日にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が具体的な米量的金融緩和の縮小に言及し、同日の米株安を発端とした株安の流れは「世界一周」した後も歯止めがかからない。ダウ平均が過去最高値圏まで駆け上がったのは「緩和マネー」の押し上げによる面が大きいだけに、マネー縮小によるリスク回避の流れは、一朝一夕には収束しそうにないとの雰囲気が強まっている。
 米緩和縮小方針は、さまざまな市場に波紋を広げた。前日のニューヨーク金先物相場は約2年9カ月ぶりの安値を付け、新興国の株価指数は全面安となった。きょうは東京商品取引所で、白金が寄り付きから取引を一時中断するサーキット・ブレーカーを発動。いずれも投機マネーが敏感に反応している証しとみられる。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「これまで過剰流動性が支えてきた多くのマーケットが、新たな適正水準を探る動きに入ったようだ」と指摘する。その代表格が前日に2.4%台と約1年10カ月ぶりの高い水準(価格は下落)を付けた米10年物国債利回りだ。藤戸氏は「米長期金利が落ち着きどころを見いだすまで、各市場は不安定な値動きが続くだろう」と読む。
 一方、前日やきょうの日本株の底堅さに寄与しているのが、現在1ドル=97円近辺で推移している円相場だ。日銀が「量的・質的金融緩和」路線を変更しない限り、米長期金利の上昇は日米金利差の拡大によるドル高・円安要因で、現時点での円相場の日米金融政策に対する反応は「教科書通り」といえる。このまま円相場の下落基調が続けば、輸出関連株をけん引役に日本株が相対的に堅調に推移するシナリオも描けよう。
 ただし、世界的なリスク回避の流れが長引くようだと、外国為替市場では投機筋による円売りポジションの巻き戻しなどを誘い、逆に円高・ドル安が進行する可能性も無視できない。投資助言を手掛けるブーケ・ド・フルーレットの馬渕治好代表は「円相場は当面、双方の要因による綱引きとなりそうだが、(リスク回避を背景とする円売りポジションの巻き戻しという)後者が優勢になった場合は日本株の下げがより際立つ展開もあり得る」と話していた。
 前場の日経平均は前週末終値(1万2686円)を前に踏みとどまり、その後は急速に下げ幅を縮小した。日経平均への影響度が高いファストリに断続的な買いが入るなど、相場の底割れを回避したい思惑が一部にあるようだ。例年、6月末の日経平均は強含む傾向がみられる。前年までは2年連続で6月の最終営業日にかけ3日続伸している。「株主総会シーズンで国内機関投資家が売りを出しにくく、6月決算期末を控えた海外投資家によるドレッシング(お化粧)買いも入りやすい」(藤戸氏)ことが背景のようだ。これらは一時的な特殊要因で、株価下支え効果が長続きするとは考えにくい。
 7月は自民党の圧勝が見込まれる参院選が予定されるが、市場の関心は当面目新しさを期待しにくい政府・日銀の政策対応より、米国や新興国発の波乱に向かいつつある。市場では「6月が底堅いとしても、7月が下げの本番となりかねない」との警戒も聞かれ始めている。〔日経QUICK