株、市場揺さぶるマネー逆流 問われ始めたアベノミクス効果

2013/06/13 12:30  日経速報ニュース    1264文字  
 13日前場の日経平均株価は前日比701円92銭安の1万2587円40銭で引けた。下げ幅は一時800円を超え、取引時間中としては日銀が異次元緩和に踏み切った4月4日以来、約2カ月ぶりの安値を付けるなど大荒れの展開となった。投資家のリスク回避姿勢が強まったことから、株式を売る動きが加速。5月中旬まで株価上昇を促していたマネーの流入が一転している。マネー逆流を促した正体は何か。市場関係者の見方をまとめた。
 多数派の見方は「外国人投資家による日本株の手じまい」というものだ。米国経済の確かな回復の歩みを背景に、米連邦準備理事会(FRB)が緩和規模を前倒しで縮小する「出口戦略」に踏み切るとの観測が浮上。世界中にあふれ出してリスク資産に向かっていた過剰流動性が減少するとして日本株の売り材料になったというわけだ。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「米長期金利の上昇は出口戦略観測の高まりを映しており、日本株に投資していた海外投資家の不安心理が高まっている」と説明。「海外ヘッジファンドが、日本株に傾いていた持ち高を巻き戻している」と指摘する。藤戸氏によれば、タイやインドネシアなど高成長を続ける新興国の株式相場がこのところ低調な理由もこれに根ざしているという。
 それに対し「本当のリスクオフ相場なら株式相場はもっと下げているはず」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員)との見方もある。海外マネーが完全に流出するなら、彼らが日本に見向きもしなかった昨年11月以前の水準まで戻ってもおかしくはないが、現状はそうではない。「リスクオフ相場というより、これまで日本株に強気だった外国人投資家が多少冷静になっただけ」(秋野氏)。寄り付き前に財務省が発表した対外及び対内証券売買契約などの状況(週間、指定報告機関ベース)では6月2~8日の海外投資家による日本株投資は1136億円の買い越しだった。買い越しは3週間ぶりだ。3~7日に日経平均は週間で897円安と東日本大震災発生直後以来の急落幅となったが、海外勢は現物株を買い向かっていた。
 東海東京証券の鈴木誠一マーケットアナリストはこの統計の別の項目に注目し「海外勢が相場急落の主犯」説に対抗する。6月2~8日の国内居住者による海外株式投資は2218億円の売り越し、中長期債も3869億円の売り越しと、そろって4週連続の売り越しとなった。鈴木氏は「リスク許容度が落ちているのは海外勢というより、国内の機関投資家の方なのではないか」と指摘する。海外から資金を国内に戻す「リパトリエーション」が円高を加速し、さらにリスク許容度を下げる自縄自縛の結果ともなっている。
 誰が相場の下げを主導したのかを証明するには統計データがそろうのを待つしかない。もっとも、それが分かっても市場の不安心理が晴れるわけではない。期待に働きかけるという安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の効果を荒れ狂う株式市場は問い始めているようだ。〔日経QUICKニュース(NQN)