6月11日(ブルームバーグ):ニューヨーク外国為替市場では円がドルに対しここ3年で最大の上げとなった。日本銀行が追加刺激策を打ち出さなかったことが手掛かり。
円は対ドルで3営業日ぶりの反発。日銀の黒田東彦総裁は、期間1年超の資金供給オペ導入を見送った。またこの日は米3年債入札で需要が低調だったものの米国債相場が上昇。そうした中で円は対ドルでの上昇を拡大する展開となった。オーストラリア・ドルはほぼ3年ぶりの安値に下落。豪住宅ローン承認件数の伸びが市場予想に届かなかったことに反応した。
カナディアン・インペリアル・バンク・オブ・コマース(CIBC)の外国為替戦略の責任者、ジェレミー・ストレッチ氏(ロンドン在勤)は電話取材で、「黒田総裁からは、金融政策面でもう少し市場寄りの発言が期待されていた」とし、「配慮らしき言葉はあったものの、円安バイアスを維持させるような材料はなかった」と述べた。
ニューヨーク時間午後5時現在、円は対ドルで前日比2.8%上昇の1ドル=96円03銭。一時3.2%高と、終値ベースで見た場合の2010年5月以降最大の上昇率となった。対ユーロでは2.4%上げて1ユーロ=127円84銭。ユーロはドルに対し0.4%高の1ユーロ=1.3313ドルと、終値ベースで2月19日以来の高値を付けた。
ボラティリティ
対円でのドル相場の1年間のインプライド・ボラティリティ(IV、予想変動率)は12.8%と、11年9月以来の高水準に上昇。東京株式市場ではTOPIXが1%安、米国株もS&P500種株価指数が1%下げた。
米国債は上昇。10年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、2.19%となった。米財務省が11日実施した3年債入札(発行額320億ドル)の結果によると、投資家の需要を測る指標の応札倍率は2.95倍と10年12月以来の低水準となった。
ゲイン・キャピタル・グループ(ニューヨーク)のシニア為替ストラテジスト、エリック・ビロリア氏は電話取材で「3年債入札はかなり軟調だった」と述べた。
豪ドルは米ドルに対して2010年以来の安値を付けた。豪統計局が発表した4月の住宅ローン承認件数は0.8%増と、伸びは市場予想(2%増)を下回った。
豪ドルは0.4%安の1豪ドル=0.9427米ドル。
日銀の政策決定
日銀の黒田総裁は11日午後、定例記者会見で、同日開いた金融政策決定会合で期間1年超の資金供給オペ導入を見送ったことについて、長期金利のボラティリティ(変動)が足元で低下していることなどから、「今のところそういう必要性はない」との認識を示した。一方で「将来、必要になったら検討する」と述べた。
ウエスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズの市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏(ワシントン在勤)は電話取材で、「大半の投資家は何も行動はないと予想してたが、少数は債券利回りの上昇を抑えるため何か決定したかもしれないと考えた」と指摘。「だがそうはならなかったことで日本株は下落した。日銀からは、市場安定に向けて一段の行動に傾きつつあるとの楽観を市場に植え付けるような行動はあまりみられなかった」と続けた。