【日本株週間展望】反落へ、金利や過熱警戒-海外指標も注視

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  5月17日(ブルームバーグ):5月第4週(20-24日)の日本株相場は、3週ぶりに反落する見込み。国内での決算発表がほぼ一巡し、新規の買い材料に乏しい中、債券市場の不安定さやテクニカル指標が示す短期的な相場の過熱が警戒されそうだ。米国や中国の景気指標、日本銀行の金融政策決定会合なども注視される。
みずほ信託銀行の中野貴比呂シニアストラテジストは、「足元の金利上昇が本格化してくると、株式市場に悪影響を与える可能性がある。日経平均株価1万5000円の達成感が出てくる中で、嫌な材料だ」と話している。
第3週の日経平均株価 は、前の週に比べ3.6%(530円)高の1万5138円で終了。米国の雇用情勢の改善や1ドル=100円を超えた円安推移を受け、企業業績の改善期待が広がった上、米国株高も追い風となり、日経平均は2007年12月以来、終値で節目の1万5000円を回復した。
国内債券市場のボラティリティ(変動性)が大きくなっている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回り は9日まで0.6%前後で推移していたが、10日以降に急上昇(国債価格は下落)。15日には一時0.92%と、12年4月以来の高水準に達した。日銀の異次元金融緩和直後の4月5日には、一時0.3%台まで低下していた。
長期金利1%超えは悪影響も
為替の円安進行を背景に、債券市場でも株高傾向の鮮明化が意識されており、金融機関が債券保有のポジション(持ち高)を圧縮していることなどが要因となっている。金利上昇は金融、不動産業界にとって収益環境にマイナスに働くほか、株式市場全体にとっても「金利が1%を超えてくると、金融緩和の効果が減殺され、景気回復に悪影響を与える。望ましいことではない」と、みずほ信託銀の中野氏は懸念する。
21、22日には日銀の金融政策決定会合が開かれる。野村証券の木下智夫チーフエコノミストらは今回の会合について、金融政策の据え置きを予想。円高・株安といった金融市場の急変動がない限り、日銀の様子見姿勢は変わらないとみている。22日の黒田東彦総裁の会見では、金利上昇に対する見解の有無、発言内容が注目されそうだ。
国内では、5月2週にピークを迎えた3月期決算企業の業績発表がほぼ一巡。第4週は、20日に東京海上ホールディングスなど一部の大手保険会社を残す程度だ。みずほ証券リサーチ&コンサルティングによると、10日時点の東証1部企業(金融除く)の14年3月期経常利益見通しは、前期比28%増。13年3月期は前の期に比べ9.7%増だった。
業績改善は反映済み
今期増益を計画している企業は全体の76%で、13年3月期の実績(増益企業は58%)に比べ裾野が広がってきている。ただ、DIAMアセットマネジメントの岩間恒アセットアロケーショングループリーダーは、「前期実績と保守的な想定為替レートによる今期のアップサイドともに、業績改善は株価に織り込んだ」との受け止め方だ。
一方、海外の景気指標も現地株式の動きを通じ、日本に影響を及ぼす可能性がある。米国では22日に中古住宅販売、23日に新築住宅販売、24日に耐久財受注が公表予定。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の中央値では、中古住宅が前月比1.4%増(前回0.6%減)、新築住宅は1.9%増(同1.5%増)、耐久財は1.7%増(同5.7%減)と改善が見込まれている。中国では23日にHSBC製造業購買担当者指数(PMI)がある。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鮎貝正弘シニア投資ストラテジストは、「米国では過剰流動性継続への期待の中で株式への資金シフトが続いており、指標が大きく上下に振れなければ、あまり米国株にマイナスに作用しない」と予想。一方で、中国PMIは心配とし、「大きな落ち込みなら、世界景気へのマイナスとして意識される可能性がある」とみる。このほか、22日は前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録も公表されるため、「出口について突っ込んだ内容が出ていたら、短期的に反応する可能性がある」と同氏は言う。
スピード調整、海外勢買い期待は強い
日本株の上昇ピッチは足元で加速し、日経平均は15日、200日移動平均線に対し44.7%の上方乖離(かいり)となった。東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長によると、長期の移動平均からこれほど振れるのは、08年10月27日に下方乖離が44.5%に達して以来という。このため、短期過熱感から日経平均で1万4500円程度までの調整が意識される可能性もある。
もっとも、下値では海外勢を中心に投資家の押し目買い意欲が強そうだ。米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの5月のファンドマネジャー調査によると、グローバル投資家の日本株の配分状況は31%のオーバーウエートとなった。1月にオーバーウエートに転じて以降、5カ月連続で上昇。前月に引き続き、今後も日本株市場が最もオーバーウエートしたい市場とみられている。
隅谷氏は、メリル調査で量的緩和が強化された04年、小泉郵政選挙で政策期待が高まった05年はオーバーウエートがそれぞれ50%台、60%台まで急伸した経緯があると指摘。量的緩和と政策期待が両方備わった今回は、海外勢の買い余力がまだまだ大きいと分析した。