日銀異次元緩和は「政府と心中宣言」、ソロス氏嘘つかない-藤巻氏

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  4月15日(ブルームバーグ):著名投資家ジョージ・ソロス氏の投資アドバイザーを務めた経歴を持つフジマキ・ジャパン代表取締役の藤巻健史氏は、日本銀行が黒田東彦新総裁の下で異次元緩和に踏み切ったことは国債の暴落で日銀も破綻する事態つながるとして、「政府と心中宣言をした」との見方を示した。
藤巻氏は「日銀資産のうち、国債の割合がさらに増えて80%から90%が日本国債になる。国債本位制となり、国債の信頼が崩れたら紙幣の価値がなくなる。日銀は国と運命共同体になる」と述べた。インタビューは11日に行った。
日銀は3、4日に開いた金融政策決定会合で、消費者物価 上昇率2%という目標をできるだけ早期に実現するため、マネタリーベースを2年間で約2倍、日銀の国債保有額と平均残存期間を2年間で2倍以上に拡大することを決定した。長期国債の購入についてこれまでの月約4兆円から、毎月の国債発行額の7割に当たる7兆円強とする。
藤巻氏は、「私のモルガン銀行勤務時の日銀国債保有高は50%以下、マネタリーベースは約40兆円が常識だった。それを2年後に270兆円にするとしており、実務家としての私の感覚では、とんでもない数字だ。7倍にマネタリーベースを増やすことは、天と地がひっくり返るようなオペレーション」と説明した。
ハイパーインフレで地獄味わう
さらに、「白川方明前総裁が副作用が怖いからやらなかったことを、副作用を無視してとんでもないことをやるのは、ものすごい大きな賭け。この賭けは失敗してハイパーインフレが起きると思う。日銀は単なる紙幣印刷工場に変わった」と指摘した。
日銀の大胆緩和による将来のインフレ高進の懸念も強まっている。藤巻氏は、「安倍晋三首相と黒田総裁はハイパーインフレにゴーサインを出した。アベノミクスで、国債を買って市場に資金を供給、円が急落すれば、2%のインフレ目標を達成できるが、その後、制御できないだろう」と予想。「インフレからハイパーインフレになった時に、金利が急騰したら国債を買う人がいなくなり、資金を吸収する手段がない。預金封鎖と新券発行しか方法はなくなるだろう。ハイパーインフレになれば国の財政は持つかもしれないが、国民は地獄を味わうことになる。大変危険なことに一歩踏み出した」と解説した。
長期金利 の指標となる新発10年債物国債利回りは5日に過去最低の0.315%を記録した後、約2倍の水準となる0.62%まで跳ね上がった。藤巻氏は、「アベノミクスで、国債を買って市場に資金を供給し、円が急落すれば、2%のインフレ目標を達成できるが、その後、制御できないだろう」と予想する。
国債バブル
さらに「じゃぶじゃぶの資金が今は国債に行って、国債バブルになっている。薄くなった風船が破裂寸前なのを予知して、市場では早く逃げようと思い始めた人がいて、国債が大きく売られたのだろう。国債トレーダーの不安の象徴。あれだけ売りが出たのを見るとポートフォリオマネジャーも怖いと思うだろう」と分析した。
外国為替市場で円は11日、対ドルで1ドル=99円95銭まで円安が進行し、4年ぶりとなる100円の大台に接近した。藤巻氏は、ハイパーインフレ・財政破たんへの対応策として、ドルを中心とした外貨建て資産、円プット・ドルコールのオプション、日本国債のプットオプションなどを挙げた。
その上で、「財政破綻のヘッジとして、外貨建て資産を持っている。米国株、ドルのマネーマーケットファンドなどを保有している。為替では200円台までは行かないが、100円台で一番長いもので5年以内のオプションを持っている。ドル・コールオプション、日本国債のプットオプションを持っているのは、自己破産したくないから」と説明した。
ソロス氏の意見尊重すべき
ジョージ・ソロス氏は5日、CNBCとのインタビューで、日銀の政策が円の一斉売りをもたらすリスクを警告。「実際すでに起きていることだが、円が下落し始めれば、日本国民は円が下がり続ける可能性が高いと気付き、自分たちの資金を海外に移そうとするだろう。そうすれば、円は雪崩を打って下落する可能性がある」と語った。
藤巻氏は、「ソロス氏の発言はポジショントークという人がいるが、あれほどの大物リスクテイカーの意見は尊重すべきだ。絶対嘘はつかない。かなりポジションを持っているから発言しているのだろう」と話した。
ハイパーインフレや財政破綻への対応策について、「ヘッジとして外貨建て資産、米国株やドルのマネーマーケットファンドなどを保有。為替では200円台までは行かないが、100円台で一番長いもので5年以内のオプションを持っている。ドル・コールオプション、日本国債のプットオプションを保有しているのは自己破産したくないから」と説明。一方、「株は市場の暴落時に生き延びる会社か見極めが難しい。日本株はずいぶん前にほぼ全て売った。不動産も元利金を払って持ち続けられる人は良いが、混乱期を乗り越えられるか次第だ」と述べた。
藤巻氏は1950年生まれ。74年に一橋大学を卒業し、三井信託銀行(現・三井住友信託銀行)に入行した。米ノースウェスタン大学大学院で80年に経営学修士(MBA)を取得。85年にモルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)に移籍し、95年から2000年まで東京支店長。00年にはジョージ・ソロス氏の投資アドバイザーを務めた。