今回からの数回に渡り、各属性の代表的なカードや属性ごとの戦い方を紹介して行きます。


 内容はオーソドックスなビートダウンデッキ(相手を素早く殴り倒すタイプのデッキ)を使う場合を想定しています。というのもビートダウンデッキと対になるコントロールデッキは、まずビートダウンデッキの特徴や動きを理解していないと組むのも動かすのも難しいからです。


 ちなみに、第1回で書いた「属性の特徴」とは全く異なる内容になっています。その属性の「得意なこと」が全て強力な戦闘手段である訳ではないからです(ぇー)。この記事ではより実用的で実戦的なノウハウを書いていきます。




炎の代表的なカード


言い換えれば癖がなく使いやすいカードです。属性の特徴をよく表したカードではない場合もあります。


┌─────────────────────────────────────
│●[燃えさかる子猫]
│Summon
│3(炎) / 300f
│----------------
│猫の召喚
│Atk=1 , HP=1
│・自爆[1MP / 30f]
│対象のクリーチャーに1点のダメージを与える。燃えさかる子猫を完全破壊する。
└─────────────────────────────────────
↑序盤の攻防を担うと共に、必要であれば1点のダメージを飛ばすことができます。
たかが1点といって軽視できません。HP1のクリーチャーには除去すべきカードが数多く存在します。


┌─────────────────────────────────────
│●[猪の戦闘バギー]
│Summon
│4(炎炎) / 450f
│----------------
│猪の召喚
│Atk=2 , HP=2
│アクティブ状態で場に出る。
│ブロックに参加できない。
└─────────────────────────────────────
↑ブロックに参加出来ないデメリット以上に、出たターンに攻撃できるメリットは絶大です。
同タイミングで登場する《音速猫》に弱い点は上記の【燃えさかる子猫】でカバーしていきます。


┌─────────────────────────────────────
│●[溶岩巨人]
│Summon
│5(炎炎) / 400f
│----------------
│巨人の召喚
│Atk=4 , HP=4
│後手
└─────────────────────────────────────
↑【猪の戦闘バギー】と並ぶ炎のエース。後手という複数ブロックに対する弱点があるものの、MPを残し手札の火力をちらつかせてアタックすればゲームに慣れたプレイヤーほど手を出してきません。
また、同じ炎のデッキと対峙した場合、同じく相手の《溶岩巨人》を倒せる数少ないカードです。


┌─────────────────────────────────────
│○[焼却]
│BattleSpell
│4(炎炎) / 0f
│----------------
│対戦相手のメイン戦闘クリーチャーに4点のダメージを与える。
└─────────────────────────────────────
↑炎の優れた除去カード群の中でも最も使いやすい一枚です。炎のデッキを使う上で相手との駆け引きの多くはこのカードを巡るものだと思って間違いありません。
同時にこのカードが、炎が相手に出来る「限界」です。それについては後述します。


┌─────────────────────────────────────
│○[劣化マグネシウム弾]
│Sorcery
│5(炎炎) / 450f
│----------------
│対戦相手に5点のダメージとあなたに1点のダメージを与える。
└─────────────────────────────────────
↑ABCDの中でも最も高速かつ無条件にダメージを奪うことの出来るカードです。
このカードを採用しないデッキも多く存在しますが、それでも熟練プレイヤーは炎と対峙する場合、相手が常にこのカードを握っているという前提で戦っています。





炎の基本戦術


 炎最大の魅力は「相手にダメージを与える速度」です。3~5MPに強力なクリーチャーが集中しており、これらを順に並べていくだけでもかなりの打撃力を確保することができます。


3MP : 【燃えさかる子猫】【怒り狂う上官】
4MP : 【猪の戦闘バギー】【好戦的な鶏】
5MP : 【溶岩巨人】


 4MPのクリーチャー2体の「ブロックに参加できない」というデメリットはあまり大したものではありません。相手に奪われた場合のことを考えればむしろメリットと言っても良いくらいです。攻撃能力に関しては折り紙つきですので安心して使いましょう。


 これらのクリーチャー群+除去+【劣化マグネシウム弾】を使い、高速で相手を仕留めるのが炎の基本戦術です。目安としては8ターン以内、速い場合は5ターン目、遅くとも10ターン以内に勝負を決めます。

 逆に、これ以降のターンへ戦いが伸びれば不利になる一方です。炎のデッキを扱う場合は、とにかく相手を速やかに倒してしまう事を第一に考えて下さい。





万能な除去と強力なブラフ


 クリーチャーの除去合戦においても、デュエル中盤までであれば炎のカードは最も使い易く、また強力です。使えるタイミングや状況に制限が無いからです。このことは他属性の除去カードと比べれば一目瞭然です。


炎 : ソーサリー・バトルスペル共に軽量で使いやすい。バトルスペルは攻防時関係なく使用可能。
水 : 全ての除去が重い・遅いソーサリー。バトルスペルの除去は皆無。
風 : 殴り合いの際クリーチャーを強化することで除去の代わりにする。つまりクリーチャーがいないと駄目。
光 : ソーサリーは詠唱が長い。バトルスペルは防御時のみ。
闇 : ソーサリーは対象が限定的。バトルスペルは防御時のみ。


 バトルスペルの除去を攻撃時に使えるのが炎と風だけであることに注目して下さい。しかも風の場合はクリーチャーをぶつける必要があり、攻撃の機会を1回分無駄にしてしまうのに対して炎は相手の防御クリーチャーがいなくなれば攻撃がそのまま通ります。貴重なパンチ1回を無駄にすることがありません。後述しますが復活つきのクリーチャーに対しても、風よりは有利に戦えます。


 相手にしてみれば、MPさえあればいつでも自分のクリーチャーを除去されてしまうリスクがあります。ですから、例え相手が《格闘僧》を2体場に出していたとしても、こちらがMPを残してアタックさせれば【溶岩巨人】がブロックされることはあまり無いでしょう。死ぬのがわかっているのに飛び込んでくる=手札に何か火力があると考えるのが普通だからです。
 対戦時にはこのメリットをブラフとして最大限に利用して下さい。最も頻度の高いカードは【焼却】です。例えこれらのカードがあなたの手札にあろうが無かろうが、不用意にMPを失って戦闘を仕掛けては(または仕掛けられては)いけません。
 先ほどの例で言えばあなたはMPを残して攻撃することで、1枚のカードも1点のMPも使うことなく、4点ものダメージを相手に与えることに成功したのです。速攻を旨とする炎ではこのようなプレイングがとても大きな意味を持つことがあります。


 復活が付与されたクリーチャーを相手にする場合も、バトルスペルを上手く活用して下さい。復活で破壊を免れたクリーチャーはノンアクティブ状態になり、例え戦闘中に復活したとしても相手クリーチャーにダメージを与えることはありません。

 例えばあなたの【怒り狂う上官】が相手の復活つき《不死骨格》とぶつかった場合、あなたは【点火】を使うことで【怒り狂う上官】を失うことなく《不死骨格》を墓地に送ることができるのです。





致命的な弱点


 圧倒的な攻撃力を持ち、クリーチャーの除去にも長けた炎の最大の敵-それは時間です。炎は速攻を得意とする反面、大きな2つの弱点によって戦いに時間をかけることができません。


 1つめの弱点は、HPが大きいクリーチャーの除去が苦手ということです。
炎のカードをよく見てもらえれば分かりますが、HPが5以上のクリーチャーを除去できる手段がほとんどありません。いくつかの例外-【直下型流星群】や【メルトダウン】はコストやリスクが高すぎてあまりにも非現実的です。
 HP5以上のクリーチャーは水と光のデッキに採用されることが多く、《多脚天使》《タキタロウ》《荘厳なる水竜》などのクリーチャーが場に登場すると多くの炎デッキは「詰んで」しまいます。そうなる前に、早急に勝負を決めなければなりません。


 2つめの弱点は、カードを引く能力に乏しいということです。
 あなたの炎デッキはデュエル序盤においては高い攻撃力で相手をリードし続けるでしょう。しかし問題は何らかの手段で相手に攻撃を阻まれ勢いを殺された場合です。多くのデッキはカードをより多く引く仕組みを採用しており、中盤以降息切れしたあなたのデッキを逆に圧倒し始めるでしょう。
 どの属性のデッキでも利用できるカードドローの手段として【違法融資機】がありますが、このカードを場に出すのに1ターン分のMPを使ってしまいます。攻撃の手を休めることで、炎が苦手な巨大クリーチャーが場に出てきてしまう可能性も高くなるでしょう。闇や光のデッキであれば相手クリーチャーのサイズに関係なく除去してしまう手段がありますので【違法融資機】が高い効果を上げることもありますが、残念ながらこのカードは炎のデッキとの相性はよくありません。


 この2つの弱点ほどではありませんが、炎にはランドスペルに対抗する手段が全くありません。特に《炎の防御円陣》や《埋もれた聖域》など光のランドスペルには炎が苦手とするものが多いので注意が必要です。





弱点を克服する


 さて、これらの弱点から、炎のデッキをひとつ上のランクに持ち上げるための指針が見えてきます。それは「常に1対1の戦いをしてはならない」ということです。1ターンに1枚ずつのカードを使い相手のカードと相殺されていく戦いをしていては、相手がフィニッシャーを出したりカードを引いたりする余裕を与えてしまうことになります。デッキのどこかに「ひとつ分の何かでふたつ分の何かをする」アイデアを盛り込みましょう。


 ひとつの手法は「行動回数を増やす」ことです。1ターンの内にクリーチャーの召喚と相手クリーチャーの除去を一度に行うことで、あたかも相手より1ターン余分に行動したかのような結果を得ることができるでしょう。

 それには、MPコストが低い行動をデッキに組み込むことです。【点火】や【ファイアスターター】、そして【燃えさかる子猫】といったカード群は与えるダメージが低いものの、序盤の攻防においては【焼却】と同様にクリーチャーを1体除去できる可能性を秘めています。確かに【焼却】は優れたカードですが、1/1や2/1程度のサイズのクリーチャーを葬るには少々重く使いづらいカードです。

 全ての除去を【焼却】に頼るのではなく、こうした限定的ながら軽いカードを混ぜて用いることで序盤の攻防を飛躍的に有利に運ぶことができるでしょう。
 この手法が大きな効果を上げるのはデュエルの第3ターンです。5MPの使い道として最適なはずの【溶岩巨人】があなたの手札にないとき、4MPのクリーチャー+1MPの除去という第2の筋があなたの手に生まれます。こうして毎ターンできるだけMPを無駄なく使い、相手より多くの行動数を得ることで自分に有利なデュエル展開をすることが大事です。これはテンポアドバンテージを得るという考え方です。


 もうひとつの手法は「1枚のカードで相手に2枚分以上の得を生む」ことです。非常に分かりやすい例は【Vレーザー】です。3、4ターン目に使うのであれば、それまでに召喚されたクリーチゃーの大部分を2体焼くことができます。
 【威嚇射撃】を除去カードとして採用するのも良いかもしれません。本来であれば相討ちになる戦闘でも、このカードを使うことで相手のクリーチャーを一方的に除去することができます。炎が苦手とする先手持ちクリーチャーに対する回答としても有効な手段です。しかもこのカードは、炎の実用的なカードには珍しくカードを引く能力がついています。あなたは手札を損することがなく、相手だけに損失を与えることができるので、このカードも「2枚分以上の得を生んで」います。相手の攻撃を1回無効化する使い方もありますが、勿体無いのでできるだけそういう使い方はしたくないものです。
 炎にはあからさまに「カードを2枚引く」と書いてあるようなカードはありませんが、こういったカードをクリーチャーの攻防に取り入れることで弱点をある程度克服することができます。これはカードアドバンテージを得るという考え方です。




 炎のデッキは構造が単純で扱いやすく、初心者がはじめて使うのにも向いています。クリーチャー+除去という分かりやすい機能でできていますので、ABCDに触れて間もない内はまず炎のデッキを一度いじり倒し、このゲームに慣れてみるのをオススメします。


 次回は光です。通常こういう記事を書く場合は属性の並び順(炎水風光闇)に従うことにしているのですが、本稿では扱いの簡単な順番で紹介をさせていただくことにします。