相州小田原宿に入ってきた一人の男。
みすぼらしい身なりであるが堂々としている。
旅籠の亭主に勧められて泊まり、七日の間一日三升の酒を飲み、二階で寝ているばかり。
「お前さん、怪しいよ、あの人。また一文無しを引っ張り上げたんじゃないのかい?」
案に違わず一文無し...
「あんたの商売はなんだい?」
「絵師だ」
「絵描きじゃしょうがねえなあ。大工や左官屋だったら家を直してもらうんだけど...」
「あそこに無地のついたてがあるなあ。あれに絵を描いてやろう」
ついたてに描かれた雀は、朝日を浴びると抜け出していく...