現実逃避
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恐怖からの解放されると、さっき鬼のような形相で土下座して謝れと恫喝され散々小突かれた頭が痛い。ゲンコツで叩かれたからコブになっている。皿を洗う手首が痛い。赤くなっている。でも、耐えられない痛さではない。それが夫の狡い所だと思う。痣になるとそれを見て夫の怒りがぶり返しても困るので蛇口から流れるお湯を水に替え冷やす。

心が痛い。こちらはもう少し重症だ。離婚したい。毎日思う。でも、お金も無い、仕事もない、資格もない。生活がきっと出来ない。いや出来なくは無いと思うが今日食べるものに困る貧乏暮しは、もう嫌なのだ。この環境に我慢すれば、少なくとも中の上ぐらいのイヤそれ以上の生活が出来る。衣食住の心配はしなくていいのだ。堂々巡りの思いが募る。

 

ペットの餌やりが終わり身支度を済ませた夫が、普通の人になっている。

「じゃあ行ってくるよ。」

と、にこやかに優しい口調で言って、ビジネスバッグを持ちスーツに身を包んだ姿で玄関に向かう。その後を急いで付いて行き、プリウスに乗り込むところで

「行ってらっしゃい。気を付けて。」

と、感情を殺して心にも無い事を言いニコニコと手を振る。駅まで徒歩5分なのだか快速が止まらないので隣の駅に駐車場を借りているのだ。大した通勤時間でもないのにと心で毒づきながら車が見えなくなるまで見送った。

家の中に入ると心からホッとし大きなため息が出た。そして深く息を吸い呼吸を吐くと本来の自分に戻る時間がやってきたことを感じた。