□幸福実現党党首・釈量子

 --6月10日、中国政府が南京事件と従軍慰安婦に関する資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録申請したと発表しました
 記憶遺産とは世界遺産、無形文化遺産と並ぶユネスコの三大遺産事業の一つで、歴史的な資料や絵画などの保護を目的としています。例えば、ホロコーストに関するものとしては、「アンネの日記」など4件が登録されていますが、これらと、プロパガンダの産物である南京事件や従軍慰安婦が同列に扱われてよいはずはありません。
 申請の可否は来年の夏ごろに決定するとみられますが、前回、ユネスコに申請されたもののうち、記憶遺産に登録されたのは約60%とのことです。戦後70年の節目のタイミングで、虚構の歴史が事実として国際社会に定着することを断固阻止すべく、日本政府には全力を尽くしていただきたいですし、ユネスコには真実に基づいた良識ある判断を求めるものです。
 --南京事件をプロパガンダの産物とする理由は何でしょう
 南京事件とは1937年12月、日中戦争時に日本軍が南京を制圧した際、民間人を含む多くの中国人を殺害したとする事件で、南京大虐殺とも呼ばれます。犠牲者数について、中国側は30万人と主張していますが、当時の南京の人口は20万人程度であり、そもそも30万人の虐殺などできるはずはありません。
 東京裁判では日本軍の南京占領後、6週間にわたって殺人、放火、略奪、強姦が発生したとされました。しかし、入城1カ月後には南京の人口が25万人に増えているのです。人口増は治安の回復を意味しているものとしか思えません。
 そもそも、当時の中国の指導者である国民党の蒋介石も共産党の毛沢東も、南京での虐殺について言及しておらず、戦後の東京裁判まで問題にされることはなかったのです。
 ほかにも、1938年7月、世界で初めて南京事件に関する著作を発表した英国紙の中国特派員・ティンパーリーが、国民党の中央宣伝部の顧問であり、同党から資金提供を受けていたことなどが知られています。
 中国は記憶遺産への登録により、南京事件を人道上の罪に仕立て上げるつもりなのでしょう。そうすることで、チベットやウイグルなど周辺地域への侵略行為や、天安門事件をはじめとする人権弾圧、傍若無人な海洋進出といった自らの覇権主義から世界の目を逸らせたいとの意図が透けて見えます。
 --南京事件はなぜ世界に広まったのでしょうか
 1997年に中国系米国人のジャーナリスト、アイリス・チャン氏が出した『ザ・レイプ・オブ・南京』が果たした役割は大きいでしょう。旧日本軍による「南京大虐殺」の犠牲者を30万人以上と断定した同書は、50万部を超えるベストセラーとなり、南京大虐殺があたかもホロコーストのように捉えられてしまったのです。当時の南京の人口を超える犠牲者数や、南京とは無関係の写真を証拠として使うなど、日本側から多くの矛盾点が指摘されたものの、英語で書かれた書籍として、世界に与えた影響は絶大でした。
 また、ほぼ同時期の93年、日本政府は従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めた「河野談話」、95年にはアジア諸国への植民地支配と侵略を認めた「村山談話」を発表。近隣諸国が外交攻勢に出る際の格好の材料を提供してしまいました。
 両談話の背景には、「先の大戦で日本はアジアを侵略した」との東京裁判史観がありますが、これは日本弱体化をもくろむ米国により広められたものです。米国は東京大空襲と広島・長崎への原爆投下により、30万の民間人を虐殺しましたが、その行為を正当化するために、日本悪玉論を流布する必要に迫られたのです。南京大虐殺の30万人という数字は、ここから導き出されたとも言われます。
 先の大戦を日本の侵略戦争と決めつける見方はあまりに一方的にすぎます。人種的偏見や欧米列強による植民地支配の打破に向けて日本が果たした役割についても、正当な評価がなされなくてはなりません。そのためにも、まずは国内において河野・村山両談話の見直しを行い、国際社会に向けてわが国の立場を堂々と示すべきです。
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【プロフィル】釈量子
 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。