Funeral Wreath -398ページ目

【檻の中】2

*【檻の中】1の続き。









――――黒はただ、何処までも黒く、


全てを飲み込まんとでも言うように―――――




【檻の中】2―堕ちる鳥―




「・・・・・・・・はぁ」

夜逃げ同然にナイトレイ家を出てからしばらくの後。

首都から外れにある新居にも徐々に落ち着きつつあった。


だが彼が彼の『主人』を助ける為に日々奔走する為か、その疲れも

溜まって来ているようだった。

朱に染まる外を眺めて思う。


―――必ず、必ず俺が取り戻すんだ―――


心に決めた信念は何年経っても揺らぐ事を知らない。


どれほど身を削って、

どれほどの傷を受け

例えこの身を投げうっても、

あの光は取り戻す

―――異常ですヨ?―――


白い道化師の言葉が響く。

構わない。

それが『自分』だった。

ぼすっと、ベッドに背中から倒れこむ。

「流石に、少々キツいか・・・・・」

顔が熱い。

疲れが知らぬうちに限界にきていた。

(今日は寝るか・・・)

主人を迎えるのに自分が倒れては元も子もない。

休むという事に抵抗を感じながらも、

闇に染まりつつある静寂に身を任せた。




「・・・・・・・ん・・・・」


寝苦しさに目を覚まし寝返りをうつと、額から何かが落ちた。

「・・・?」

シーツの上に落ちたのは濡れタオルだった。

ぼやけた思考で考える。

「・・・誰が・・・・」

「あれ、起きてる」

突然の声に心臓が跳ねた。
「―――ヴィ、ヴィンス!?」
音もなく部屋に現われたのは実の弟だった。

彼はいたって普通に、何時もの笑みを絶やさずに立っている。

その手に在るのはトレイに乗った水だ。

「よかった。あんまり苦しそうだったから医者を呼ぼうかと思ってたんだ」

「そ、そうか・・・すまない・・・・・・・・・・・・・・・って、何でお前が居る!」

ようやく覚醒した脳が警鐘を鳴らす。

「僕はギルの事なら何でもわかる・・・・此処を調べるのも簡単だったよ。

 それでその熱も、また『主人』の為に無理してたんでしょう?」

「・・・・・ッ」
ギルは優しいものね、と弟は机の上に水を置きベッドの傍に歩み寄る。

落ちていたタオルを取り上げ、屈んでギルバートの額に手を触れた。

「・・・うん、もう少し寝てるといいかも」

「あ・・・・あぁ・・」

にこりとヴィンセントは笑い、兄に横になるように促しながら

布団をかけなおしてくる。

「ねぇギル・・・ギルは、こんなになってもまだ、『主人』を

 取り戻したいの?」

「・・・当たり前だ・・・主人は、俺の・・・全てだから――」

ギルバートの言葉は呑み込まれた。

弟の表情に険しさが宿り、オッドアイの瞳が心臓を射抜くようだった。

顔の両脇に手を突かれ、より深く身体がシーツに沈む。

視界は薄暗い影に覆われた。

黙って見つめてくる視線に呼吸が浅くなる。

「ヴィン・・・ス・・・・・?」

「・・・・兄さんは、いつもそうだね・・・そうやって独りで走っていく・・・

 周りの事なんて見えてない」

「・・・・・・・・っ」

細い指先に顎を上向かされ、逃れることは叶わない。

その親指は唇をなぞるように動き、次第に舌を弄り始める。
「・・・ふっ・・・・ぅ・・・や、・・・・・」

「やめないよ。ギルが『主人』って言う限り・・・」

唾液の絡む指を執拗に動かして、言葉の自由さえも与えない。

「知ってる?ギル・・鳥はね、籠の中に居なきゃいけないんだよ」

「・・・・・ッ・・・・?」

「綺麗な鳥が汚れてしまうから、外に出しちゃいけないんだ」
自由な方の手で、ヴィンセントはポケットから小瓶を取り出した。

中には液体のようなものが入っている。

彼は栓をしているコルクを咥え、引きぬいた。

「さぁ、帰ろう?兄さん」

「――――ッ!」

液体が口の中に数滴落とされ、すぐに吐きだそうとするその唇を

同じくヴィンセントのそれで塞がれた。

抵抗しようと覆いかぶさるその胸を叩き足をばたつかせるが、

上からの力に弱った身体は敵わない。

暫くして離れた唇が笑う。

「安心して、ただの催眠薬だよ。液体の方が即効性があるんだ」

「――なっ・・・・・ぅ・・・・・ッ?」

視界が揺らぎ目の前の人物でさえ形状が歪み始めた。


「おやすみ・・・ごめんね、ギル―――


意識は、途切れた。





―――――鳥を自由にしてはいけない―――――





だって、自由を知ってしまった鳥は家に帰って来ないでしょう?






【檻の中】2―堕ちる鳥―






≫うちの左側ってこんなんばっかだな・・・

  さて、いつまで続くかねぇ( ・(ェ)・)