Funeral Wreath -321ページ目

【パンドラの箱】1―open―

*ルーファス×ブレイク

*R18(後編より)









『その箱』に触れてはいけません


『その箱』を開けてはいけません


『その箱』を覗いてはいけません


これは『忠告』。


蜜の味に溺れたが最期、二度と戻っては来れません





ンドラの箱】1―open―





夜も更けた頃。

街灯に照らされる石畳の街を歩けば

そこらに散らばる紙に目が留まった。


『―街は鮮やかな極彩色にまみれて狂い、

人々は甘美な歓喜と恍惚に酔いて溺れます。

今宵は華やかなるカーニバル♪

現は忘却の彼方へ捨て、夢の中で舞いましょう?』


「―――ご機嫌麗しゅう、侯爵殿?」

手にしたチラシから視線を上げれば

目深に帽子を被る男が一人、すぐ目の前に立っていた。

「・・・汝も暇人じゃの。帽子屋よ」

手にした紙切れを指から放せばふわりと舞い

相手の足元に落ちた。それを摘みあげた彼が嗤う。

「意外ですネ。こんなものに興味がおありだったとは」

「ぬかせ、邪魔なゴミを拾ったまでの事」

先日より街を賑わせているのは旅のサーカス団。

陰鬱な話の多いこのご時世からか、特に子供のいる

家庭はこぞって出掛けている様だ。

「貴殿も偶には知性の渦から離れ、感性を刺激されては?」

「――ふん、策士がよく言ったものよ」

男は背の高い帽子を取り、晒した顔に満面の笑みを湛えた。

白髪が冷えた風を受けて揺れる。

「なかなか面会が叶いませんので、要らぬ心配をしました」

皮肉だ。

「そのまま死んだと思っておれば手間が省けたが、残念な事よの」

「お元気そうでなによりデスヨ・・・ルーファス様」

一つしかない朱い目が、真っ直ぐこちらに視線を上げた。


「まことピエロに相応しき男よ。今夜の舞台には上がらぬのか?」

「生憎、老体には少々堪えますので控えさせて頂いております」

冷笑に次ぐ冷笑の不毛なやりとりもそろそろ終止符を打ちたい所だ。

思考を巡らした所で一つの戯れを思いつく。

「・・・時に帽子屋よ、そなた己のチェインの名の由来を知っておるか」

「『マッドハッター』のですか?・・・いいえ」

「・・・場所を変える。ついて来い」

気付けば雪が舞い始めていた。

外套を翻し歩きながら、背後に続く彼の足音を聞く。
人気の無い道に二人の足音が静かに響き、

吐いた息の白さはより寒さを実感させた。

「――その昔、帽子のフェルト加工には水銀が使われておってな

職人達はその蒸気を日常に吸入しておったのだ」

「・・・ほう?」

「その内体内に蓄積した水銀は神経障害を引き起こし、

乱視や錯乱した発言行為・幻覚を引き起こした。

当時の事実を知らぬ一般人には『狂気』としか映らなかった様じゃ。

これが『Mad-Hatter』たる由縁よ」

「そうデスカ」
事も無げに応える声を振り返る。

先程までいた煉瓦と石畳の住宅街抜け、更に人気の無い

屋敷の前まで来ていた。二つの門燈が互いの顔を仄かに照らす。

「ここは」

「我の屋敷だ。入れ」

「何故」

元よりあった警戒心がより強くなった。

大方予想通りの反応に口の端が引き上がる。

「今宵は皆が幻想に溺れる日・・・興じてやるのも悪くはなかろう」

「ワタシを招く理由を伺いたい」

穏やかな声音に苛立ちが混じる。

苦笑を零しながら扇を取り出し広げて見せた。

「そう毛を逆立てずともよい。単なる暇つぶしじゃて」

「・・・貴方のそういう言葉は信用なりませんネ」

肩に積もり始めた雪を払いながら彼は言う。

愉快で堪らない気持ちを抑え、目の前まで歩み寄った。

訝しげに視線を上げかけた彼の心臓を扇の先でトンと突く。

「何を、」

「汝は叩けば幾らでも埃が出そうじゃの?」

ドクン、と震える鼓動が手の内に伝わり動揺を知る。

「幻覚にもまどえぬ哀れな羊がまた一匹、―――楽になれ」

「――ッ!?」
脇を抜け、頸部に手刀を見舞う。

彼は一瞬目を見開いて震え、直ぐにふっと眼を閉じた。

意識を失った身体は糸の切れた人形の様に崩れて落る。

足元に転がるそれを見下ろし嗤った。


「喜べ。汝を今宵の余興に据えてやろう」









ンドラの箱】1―open―









『その箱』に触れてはいけません


『その箱』を開けてはいけません


『その箱』を覗いてはいけません


これは『警告』。


蜜の味に溺れたが最期、二度と戻っては来れません















≫リクエスト第5弾で無理矢理系「ルーブレ」の、

前編です。長くなってしまったので切りました。
本番突入(←)までもう少しだけお待ちください。

因みにいかれ帽子屋の話はWikiからの引用です。