Funeral Wreath -304ページ目

【パンドラの箱】3―intermezzo―

*ルーファス×ブレイク

*ブレシャロ要素アリ





喜劇の「幕開け」は貴方の嘆き


悲劇の「幕引き」は愛しみの心


さあ、真っ赤な舞台にカーテンコールを




ンドラの箱】3―intermezzo―




目に映るのは天井らしき白い影。

霞んだ意識の中でもそれだけは理解出来た。

「――――あぁ」

そうでした、と柔らかいシーツの上に手を沈めて

上体を起こし、白い足の間に伝うぬめりに顔を顰めた。

申し訳程度に肩に掛かっていたシーツが滑り落ち

改めて自分の汚れた身体が目に入る。

昨晩に切れて血の固まった唇を指先で拭いながら

辺りを見回すが目当ての人物は其処には居なかった。

「やり逃げですか・・・どっちがピエロだか」

共に朝を迎えるのは鳥肌物だが、それでもやはり

逃げたと言う事実に苛立ちを禁じえない。

皺だらけのシャツを拾い上げ、軋む床に足を降ろした。


「お帰りなさいブレイク」

邸に戻るとすぐに小柄な少女が出迎えた。

彼女は駆け寄りながら何処へ行っていたのかと尋ねる。

「よろしくありませんわよ、朝帰りなんて」

「・・・ワタシは女性では無いのでいいんデス。少々調べ物を」

濁した答えに笑顔から一転、いぶかしむ表情になってしまった。

外套を脱ぎかけていた手が止まる。

「シャロン―――」

「本当に?」

下から見上げてくる視線は真っ直ぐだ。

文字通り射抜かれた様に身動きがとれなくなってしまう。

「ええ。本当、デスヨ」

ぎこちない声だ。これでは嘘を肯定しているに等しい。

一人内心で焦っていると小さな手が目の前に現れた。

真っ直ぐに現れたそれはふっと折れて指先が唇の傷に触れる。

瞬間、走った痛みに眉をひそめた。

「―――痛みますか?」

「・・・ええ、そうですね」

怒るでもなく、ともすれば無感情にも聞こえる

静かな声で訊かれれば、意識よりも遠い所から

答えてしまっていた。

「いつもの事ですけど、貴方は無理をし過ぎます」

「オヤ、心配して下さるんですか?」

「――、当たり前です!」

茶化したつもりはないが、白い頬を真っ赤に染める

少女に愛おしさが込みあげる。

その瞳はもう外見通りの幼い少女の物ではない。

「ありがとう、シャロン」

掬った小さなその手にキスを。

先ほどとは違った意味で急激に真っ赤になった彼女を

穏やかな瞳で見つめ「それでは」、と踵を返す。

「――――ブレイク!」

背に掛けられた声には、ひらひらと手を振って返した。


(女性の勘と言うのは本当に恐ろしいデスネ)

足早に辿り着いた部屋で、戸に背を預けて思う。

「・・・・・ですが、」

勘は確かに恐ろしい。だがそれ以上にそれは尊い。

あの許しが無ければ恐らく今を生きる事は叶わなだろうから。

(流石に、今回は言えませんけどネ)

あの少女は自分の光だ。

そんな彼女にこんな薄汚れた話など聞かせたくなど無い。
苦笑と共に適当に衣服を放り浴室へ向かう。

等身の鏡に映った身体はこの上なく醜かった。
何時付けられたのか、首筋、鎖骨、太ももと何か

執着を表す様に紅い痕が付けられている。

「・・・・あのアホ毛侯爵め・・・・・・・」

首筋に至っては制服の襟でもギリギリ隠れない

顎のラインの近くに付けられていた。
兎に角内部に残った跡を流そうとシャワーの蛇口を捻り

出始めの冷たい水を被る。

濡れて重くなった髪が、徐々に徐々に視界を遮っていった。

(嗚呼、何て無様―――――)

閉じられたカーテンの向こうに出る事は、まだ当分に

出来ない様だ。






氷の様な水が温かくなるには、まだ時間がかかりそうだった。







ンドラの箱】―intermezzo―







『終演した舞台の主催者は、拍手で役者を出迎える』










≫「間奏」という事で割かし穏やかな空気に。

愛の無いCP二人と愛のあるnotCP二人です。

次こそはルーさんが出てくる、はず。(!?