ハリーポッターと賢者の石
〜Another story〜
第1章
第2話
組み分け帽子
『ーおはよう、諸君。
そして、ようこそ、ホグワーツへ。
今日は諸君の大事な行事である
組み分けの儀式を行う。
時計台の時刻で朝9時
大広間のドア前大階段に集合するように。』
部屋のラジオから聞こえる
ダンブルドア校長の声で目を覚ますと、
カオリはベッドに寝っ転がったまま
天蓋を見上げる。
「ホグワーツに来たの…夢じゃないんだ…」
「私もおんなじこと思ってた。」
隣のベッドで同じ体勢のマユが
放心したように呟く。
カオリがやっと起き上がると、
同じように今起き上がったエミカと
ふらふらと顔を洗いにいくマユと
既に制服に着替えて本を読むアカリと
“フレッドとジョージの※極秘※アンケート”
を記入するアンナがいた。
「あーーー、一瞬でメイクできる魔法
習えたりしないかな〜」
「髪乾かす魔法ならいけそう(笑)」
「ねえてか思ったけど、
この世界のドライヤーって
ほんっとにゴミ」
「んね、最悪。」
たわいもない会話をしながら
5人はそれぞれの支度をする。
Yシャツにスカートのこの制服に
それぞれの色のローブが組み合わさる。
今日、何もかも始まる。
5人はお互いの制服や寝癖をチェックして
約束の時刻10分前に
大階段に到着する。
新入生は興奮と不安で騒がしかったが
大広間の扉が開くと
自然と静かになった。
♪entry into the great hall / the banquet
大広間から出てきたのは
ミネルバ・マクゴナガル。
ホグワーツの副校長であり、
グリフィンドールの担当教務である。
「新入生の皆さん、
ホグワーツへようこそ。
これからあなた方には、
扉の向こうの先輩達と合流して
いただきます。
その前に、
どの寮に入るか組み分けをします。
グリフィンドール、ハッフルパフ
レイブンクロー、そして、スリザリン。
学校にいる間は
寮が、あなた方の家です。
良い行いをすれば寮の点数となり
規則を破れば減点となります。
学年末には最高得点の寮に
優勝カップが贈られます。」
「優勝カップ!?
それってトロフィー!?」
「ミスターシオザキ。話の途中です、
口を慎みなさい。」
無邪気な少年の言葉に
新入生はどっと笑う。
「あなた方がこれから行う組み分けは
あなた方の学校生活や
これからの人生に大きく関わる
大事な儀式です。
くれぐれも、
不真面目に取り組むことがないよう、
気をつけること。
いいですか?
ミスターシオザキ。」
「はーい!!!」
「いいでしょう。
それでは、
名前を呼ばれた生徒は前に出て、
組分け帽子の下の椅子に座るように。
そして、各自の寮のテーブルに移動し
先輩方や同級生に自己紹介を行うこと。」
カオリが上級生が待つテーブルを見ると、
赤の横断幕の下
ーグリフィンドールのテーブルに
兄とその友達が、
ワイワイ騒いでいるのが見えた。
「アンナ・アラガキ」
アンナは組み分け帽子が待つ椅子に向かう。
新入生や上級生も、静まり返って見守る。
「ほう…アラガキ家の子だな。
レイブンクローには十分の知性がある。
…だが、君は時に勇敢で、
調和を重んじる優しさも持っている…
非常に多彩な才能だ……
……よし、
君の独創性と、その知的好奇心を讃え
…
…
………レイブンクロー!!!!!!」
おおっという会場のどよめきと、
レイブンクローの生徒達の歓迎の声で
会場は一気に明るくなる。
マユはカオリにひっそりとつぶやく
「アンナ…本当にレイブンクローだったね。」
「ね。てことは、
5人一緒はやっぱ無理そう(笑)」
「アカリ・イシバシ」
アカリが椅子に向かう間、
新入生のドラコ・マルフォイは鼻をつまみ
「マグルの匂いがするぜ、なぁ?笑」
と揶揄って白目を剥いた。
エミカは振り返ると、
「ねぇ、何が面白いの?
こっちからしたら、
アンタの香水の匂いの方が、
臭くて吐き気がしそう。
ちょっとはセンスあるのに
新調したらどう?」
マユは唖然とし、
カオリはエミカの堂々っぷりに
満面の笑みを浮かべた。
フッ、と鼻で笑われ、
しっしっとエミカを払いのけるような
動作をされたが、
エミカはドラコとその周囲にも
睨みを効かせてから
目線と姿勢を元に戻した。
アカリは帽子の下に座る。
「……ほほう。
今年の新入生は優秀だ。
君は並外れた能力を持っている。
マグル生まれとは思えないほどだ。
機知に富み、学ぶことに喜びを覚える。
ホグワーツ史でも稀に見る秀才の君が
この学校で何を学び
どう活躍してくれるのか
健闘を祈るぞ。
…
…
…
…レイブンクロー!!!!!」
おおおーー!っという歓声と、
「稀に見る秀才」という言葉に
生徒はざわめく。
アンナとアカリは手を何度も合わせ喜び、
青のローブに身を包んで嬉しそうにしている。
「エミカ・オヤマ」
「…緊張する。」
「行ってらっしゃい。」
エミカは目を瞑って椅子に座る。
帽子はすぐに話し出さず、
少し悩んで語り出す。
「なるほど………
色々な素質を持っている子だ。
非常に勇敢で、大胆であり、
それでいて立ち回りが上手く、
時に狡猾に行動する。
だが…
君は仲間想いだ。
人を惹きつける魅力と友愛があり、
忍耐強く、忠誠心がある。
このまま決して道を外すことなく
真っ直ぐと生きる君は
素晴らしい魔法使いになるだろう。
…
…
…
…ハッフルパフ!!!!!!」
ハッフルパフの生徒が立ち上がって喜ぶ。
会場は拍手に包まれ、
エミカは安心したように笑顔でテーブルに向かう。
「うわっ、分かれたね。」
「ね…でもエミカ、
ハッフルパフがいいって言ってたから、
嬉しそうでよかった。」
「ハヤト・サノ」
返事の声の先にカオリはハッとする。
ボートで出会った少年だ。
彼が椅子に向かう時、
新入生は静まり返って
固唾を飲んで見守る。
彼は既に中心人物になっていた。
「………グリフィンドール!!!!!!!!」
わぁーー!っと歓声に包まれ、
新入生からは「やっぱりな」と声が上がる。
カオリは思わず目で追ってしまうと、
席についたハヤトと目が合う。
ハヤトはハッとするカオリに小さく手を振ると
赤のローブに着替える。
マユは静かに、そんなカオリを見ていた。
____________________________________
…グリフィンドール!!!
ハッフルパフ!!!
レイブンクロー!!!
スリザリン!!!
続々と組み分けが進み、
“選ばれし者”
ハリーポッターの寮が
グリフィンドールに決定した数人後…
「マユ・ヌマチ」
「うっ…呼ばれた…」
「ね…行ってらっしゃい…」
ハッフルパフのテーブルでは、
エミカが手を握りしめて見守る。
マユは帽子の下に座ると、
頭の上で動き、喋り出す帽子に驚きつつ
心を落ち着かせる。
「……ヌマチ家の子だ。
君の母親をよく知っている。
魔法動物を愛した女性だ。
君は分かりやすく忠実で、
友人を大切にする。
決して競争的でなく、
常に相手を受け入れる寛大な心を持つ。
特別に秀でた才能よりも
努力と勤勉さを持つ君は
この寮の模範であり、中心となるだろう。
…
…
…
…
…ハッフルパフ!!!!!」
マユは安心したように息を吐き、
エミカの方へ向かった。
エミカは嬉しそうに
自分の椅子の横の椅子を引いて、
マユを受け入れる。
その時ー。
ガシャーン!と音がして
マユとエミカが座るテーブルに視線が集まる。
先ほどマクゴナガル先生に怒られた彼が
慣れないローブに引っかかる食器を
床に落としてしまった。
スリザリンではドラコ達が
「さすがは落ちこぼれの寮の生徒だ」
とクスクス笑う。
背後から杖を振り、
食器類をあっという間に元に戻したあと
雑に彼のローブを直した男性は
セブルス・スネイプ。
スリザリンの教頭であり、
魔法薬学を担当する教授だ。
マユとエミカはその圧倒的な雰囲気に
唖然とし、固まる。
しかしその少年は「へへっ」と笑うと、
スネイプの腕にしがみつき
まるで犬が甘えるように
顔をすりすりと腕に押し付ける。
すぐにスネイプに名簿のような薄い冊子で
頭を叩かれていた。
笑いを堪えるマユとエミカは
歯を食いしばるように下を向き、
お互い逆の方向に顔を向ける。
エミカはスネイプ先生に
少年が飲み物を溢して濡れた分のパンを
持ってくるよう頼まれ、
フリットウィッグ先生に先導されると、
学校のキッチンに向かう。
少年は正面のマユと目が合うと
てへっと言わんばかりに笑った。
その時、笑った少年の歯は
左右が尖っており、背中の後ろには
フサフサした尻尾が見えた。
マユはその姿に驚き、
「しっ…尻尾…!」
と小さな声で言う。
「あ?俺、動物もどきなんだ〜
まだ、習得途中だから尻尾と牙だけ。」
その話に驚いた、
ハッフルパフの先輩は、少年に話しかける。
「そりゃすごいね。
魔法省に登録は出した?
出さなきゃアズカバン送りだぜ。」
「アズカバン…?
とうろく…?」
「おう…こりゃ色々教えなきゃだね(笑)
君の名前は?
それと…君は?」
「シオザキ ダイチ!」
「ヌマチ マユです。」
「ダイチ、あと、マユ。
よろしく。
俺はシマダ ユウタっていって、
この寮の監督生をしてる。
どんなことでも、何でも頼って。」
「シマダ先輩、よろしくお願いします。」
「お願いしまーす!!」
シマダは笑って頷くと、
組み分けしている生徒の方に体を向ける。
「……マユ?、っていうの?
名前、聞いてなかったから。」
「うん。私こそ。
ダイチくん…?よろしく。」
「“くん”はいらないよ!
これから仲良くしてよ!」
「ありがと、ダイチ。
さっきここにいたのは、エミカ。」
「あの子、お姉さんっぽいよね!
同い年だと思わなかった!」
「誰が老けてるって?」
「そんなこと言ってないってばぁ!」
「シーッ!ダイチ、うるさい!」
3人はすっかり打ち解けて、
エミカが取ってきてくれたパンを分け合う。
シマダはその様子を微笑ましく見ていた。
組み分けが進み、
壇上の生徒は次第に少なくなる。
「カオリ・ヤマザキ」
アンナとアカリ、マユとエミカが
それぞれの寮で楽しそうに
話している様子を見ていたカオリは
何だか嫌な予感がして、
頭がクラクラするような感覚がしていた。
『魔法界は、
決して楽しいことだけじゃない。
だけどきっと
あなたは偉大な魔女になる。』
母の言葉を思い出し、
フーッと息を吐き切り、椅子に座る。
帽子はカオリの頭に乗ると
驚いたように語り出す。
「君はまさか……
……遥か昔のことだ。
君のお爺さんは非常に優秀で、
それでいて強大な力を持っていた。
ダンブルドアやマクゴナガル、
そして、
“例のあの人”に匹敵する力だ。
君の母親はその力を見事に継いで
今や魔法省でこの世界の法律を管理する
重大な人物になった。
マクゴナガルと並ぶ
偉大な魔女といえるだろう。
そう、君も、
きっとこの世界に名を刻むことになる。」
カオリは目を瞑って、肩で息をする。
レイブンクロー、ハッフルパフの
テーブルの4人も、
祈りながらカオリを見つめる。
「さすがの血筋だ。
君は非常に強い魔力を持っている。
まだ誰も気づいていない、
君の中に眠る力も、あるだろう。
さて……君をどこに入れようか…。
お爺さんは純血主義者だ。
そして君には狡猾で理論的な面がある。」
ドラコ・マルフォイは眉毛ピクッと上げて
ヒュ〜と口笛を鳴らす。
「さらに君は勤勉で、努力家であり、
知的好奇心がある。
忍耐や忠誠心にも満ちているだろう。
……しかし
君は戦うために、杖を振る人間だ。
誰より勇敢で、大胆だ。
仲間を守るために立ち上がる。
そして、
君は愛された。
1人の伝説となった女性に。
…君のお婆さんだ。
彼女は秀でた才能があるわけではなかった。
しかし、誰より献身的に、そして忍耐強く
魔法界の平和を守った。
彼女がかけた守りの魔法は
今でもこの校舎にかかっている。
君には愛という魔法がある。
それは時に、死にも勝つ魔法だ。
…どうだ、カオリ。
君は、
どんな魔法使いになりたい?」
「…私は………
……愛のために戦う魔法使いになりたい。」
「…いいだろう。
…
…
…
…グリフィンドール!!!!!」
グリフィンドールの生徒が立ち上がり
大きな歓声に包まれる。
勇気ある寮からの歓迎に対する
嬉しさと同時に
4人の友達と別の道を歩むことへの
不安と、孤独に苛まれた。
グリフィンドールのテーブルでは
兄とその友達がカオリを囲む。
「さすがは俺の妹!
最初からわかってたぜ!」
「ねえ、クィディッチに興味ない?
俺らのマネージャーになってよ!」
「今年の優勝は
グリフィンドールで決まりだな!」
カオリは華やかな生徒達に圧倒されるなか
1人の少女に手を引かれる。
「カオリ、あなたのお爺さんのこと、
よく知ってるわ。本を読んだの。
お爺さんは純血主義者みたいだけど、
私は大ファンよ!」
「そんな…ありがとう。
祖父の分まで謝るわ、ごめんなさい。
私はそれと違って、何もできない。
灯を灯す魔法も知らないの。」
「そんなの大丈夫よ!
一緒に頑張りましょ!
私は、ハーマイオニー・グレンジャー。
いつもはハリーとロンといるの。
女の子と出会えて嬉しいわ。」
「ハーマイオニー、ありがとう。
これからよろしくね。」
花織は席につくと、
ハッフルパフとレイブンクローにいる
4人に小さく手を振る。
カオリに話しかけてくれた少女がいることに
安心した4人は手を振りかえすと、
それぞれのテーブルの会話に戻った。
「静粛に!」
ダンブルドア校長の声が大広間に響くと
生徒達は静まり返り、
校長の方に体を向ける。
「新入生諸君。
ようこそ、ホグワーツへ。
これから先輩達にさまざまな規律や
学校生活について教わるのじゃ。
それと、
君たちによく伝えておくことがある。
暗黒の森は、立ち入り禁止じゃ。
それと、管理人のミスター・フィルチからも
注意事項がある。
西の塔3階の廊下には近寄らぬこと。
そこには恐ろしい苦しみと死が待っておる。
以上だ。
歓迎と歓談を楽しむように。
乾杯!」
校長の合図により、改めて
楽しい晩餐会が始まる。
ハーマイオニーがハリーやロンと話す間
カオリは1人でスープに手をつけていた。
「隣、座っていい?」
「…あっ」
どこからか現れたあの少年が
花織の隣に腰掛ける。
「もちろん。ボートで話しかけてくれたよね。」
「声、初めて聞いた。
もっとなんか、高い声かと思った。」
「え?まあ、よく言われるけど。」
「俺のこと、ハヤトって呼んでよ。
君の声で聞いてみたい。」
「…わかった。」
「……呼んでくれないの?」
「…ハヤト。」
「…可愛い。」
「…なに。」
カオリの耳は真っ赤だった。
「ごめんごめん、
良かったら仲良くしてよ、
俺、言っとくけど
女の子だから
こんなに話しかけてるわけじゃないからね。」
「…じゃあ、なんで。」
「仲良くなりたいんだ、カオリと。
ボートに乗ってる時、
一目見ただけで
君に近付きたいって思った。
それに理由なんている?」
「……。」
「ごめんごめん(笑)
怖いよな。」
「…ボートでハヤトが
話しかけてくれた夜から
……ずっとドキドキしてた。」
「本当に?」
ハヤトの目は真っ直ぐで力があって
引き込まれそうになると、動けなくなる。
「…これから私と色んな冒険してくれる?」
「任せてよ。」
「夜中に抜け出してハッフルパフの寮は?」
「透明マントを持っていく。」
「スリザリンの生意気金髪へのイタズラは?」
「言われなくてもやるって。」
「じゃあ、8月の日が1番長い日の夜、
灯篭祭りに行きたい。
ママが一度だけ行ったことがある。
無数のランタンが空に上がるの。
でも、“禁じられた森”を通らないと
ここからじゃそのお祭りにはいけない。
そのランタンがどうしても見たいの。」
「………考えるよ。」
カオリは少し残念そうに視線を下に向ける。
「禁じられた森を突破するか、
森を通らず飛んじゃうか、だな。
バックビークがいいんじゃないか?
2人でも乗れそうだし。
昨日ハグリッドと話したんだ。
あの髭モジャ、
ドラゴンを3匹も飼ってんだってさ。
俺、あの人に聞いてみるよ。
夏までに2人乗りできるかって。」
カオリは驚いてハヤトを見つめ、
やがてニッコリ笑う。
「………楽しみ。」
「………俺も。」
組み分けされた生徒達は、
各寮に移動するため
臨時の部屋に置いてあった荷物をまとめる。
5人は集まって手を取り合った。
「私たち、これからもずっと
友達だよね?」
「うん、どこの寮だって関係ないよ、
ホグワーツの生徒でしょ?」
「テスト前は頼んだよ、
アカリ、アンナ。」
「じゃあ、満月の夜は必ず
西の塔の屋上広間で女子会するのはどう?」
「「「「大賛成!!!」」」」
今日、私たちは、
魔法使いへの第一歩を踏み出した。
茨の道かもしれないし
雲の上の道かもしれない。
でも
きっと
大丈夫。
この先何があっても
私たちは一緒だ。
5人はそう思って、
「普通の女の子」でいられる最後のひとときを
目一杯楽しんだ。
