離婚後に請求された慰謝料を、払えないといった声を聞くことがあります。
慰謝料は離婚後も請求できることが決まっており、突然の知らせに困惑してしまう人が珍しくありません。
もし払えない時には対策を行い、不安を払拭していきましょう。
離婚した後の慰謝料の意味
離婚にかかわる慰謝料といえば離婚時のことを想像しがちですが、離婚後でも請求が可能です。
慰謝料の意味として相手に精神的苦痛を感じさせたことに対する、損害賠償としての役割があります。
精神的苦痛があれば、必ず慰謝料が発生するわけではありません。しっかりと条件が決まっています。
例えば価値観の違いや性格の不一致といったことだけでは、慰謝料を請求することはできません。
不倫による精神的苦痛
不倫による精神的苦痛に対して課せられる慰謝料です。
家庭環境や不倫相手との関係性といった細かな条件で、慰謝料に大きく違いが出るのが特徴です。
暴力による精神・身体への苦痛
暴力による精神的苦痛に対する慰謝料です。
暴力とは精神的なもの・肉体的なものどちらも含みます。
例えば収入格差を利用し心無い言葉を浴びせる・殴る・蹴るといったことが暴力として扱われます。
悪意の遺棄
家庭内の問題を積極的に解決しようとせず、放置を続けた場合に課せられる慰謝料です。
例えば夫が生活費を渡さない・嫁姑問題を放置する・夫婦がそれぞれの義務を怠るといったことがこれに挙げられます。
ほかにも理由なく性交渉の拒否、配偶者に対するいやがらせといったことも慰謝料が発生する要因となるのです。
民法第752条では夫婦は同居しお互いに協力しあい、助け合わなくてはいけないと決められています。
この決まりに背いた場合、慰謝料が発生しやすいと考えると分かりやすいでしょう。
慰謝料の支払いに時効ってあるの?
離婚後の慰謝料の請求は3年と決まっています。
この3年とは損害を知った時から起算されるため、日にちがとても大切です。
例えば不倫が原因であった場合、不貞行為を知った日・不貞行為によって婚姻関係が破綻した日・不貞行為を原因とし夫婦が離婚した日といった期日をポイントに起算されます。
離婚した原因によって慰謝料の相場は変わる
慰謝料の金額は離婚した原因によって変わってきます。
状況やその悪質度によって細かく変わってきますが、相場が決まっているので事前に知っておけば対応しやすいでしょう。
不倫・浮気の慰謝料相場
不倫・浮気をしてしまった場合は、100万~500万程度を目安と考えましょう。
しかし不倫はその悪質度によって、慰謝料の金額が大きく変わります。
1.不倫した本人とその相手との年齢差
年齢差が大きいほど、分別や不倫に至る中で主導性があったかを問われます。
例えば不倫した人が50代、相手が20代だと一般的にいって分別が同程度とはみなされません。
不倫した人の責任が大きいとして、慰謝料が高くなる傾向があります。
2.不倫期間の長さ
不倫期間が長くなるにつれ、慰謝料の金額も高くなっていきます。
不倫期間が数か月の人と数十年の人とで、慰謝料の金額が違ってくるのは自然なことといえるでしょう。
目安として1年以上の不倫が長期間と考えておいてください。
3.不倫相手との子供ができた
不倫した人と相手との間に子供ができてしまうと、配偶者に対して大きな精神的苦痛を味わわせます。
それに伴い慰謝料の金額も高くなっていきます。
4.婚姻期間の長さ
婚姻期間の長さも慰謝料の金額に関係してきます。
結婚=生活なので一緒に紆余曲折を乗り越えることもあったでしょう。
不倫はそういった思いを裏切ることになります。
相手の精神的苦痛が強くなるので、慰謝料が高くなる傾向にあります。
目安として10年以上が長期間と考えておいてください。
ほかにもさまざまな理由で、不倫の慰謝料が上下してきます。
例えば肉体関係を持った回数・夫婦関係の状況・不倫した人の年収・夫婦関係がいいか悪いかといったことが関係します。
身体的・精神的暴力
身体的・精神的暴力に対する慰謝料は、50万~500万を目安にしておきましょう。
さまざまなことが原因で、金額が大きく上下する特徴があります。
1.DVの回数
DVの回数が多ければ多いほど慰謝料の金額が高くなります。
2.DV期間の長さ
DV期間が長引くほど慰謝料の金額が高くなります。
3.被害者側の落ち度
被害者側の落ち度によって慰謝料の金額が上下します。
4.DVによるけがの度合いや後遺症の有無
DVによるけがの度合いや後遺症の有無によって、慰謝料の金額が変わります。
ほかにも子供の数やDVした人の年齢によって、慰謝料の金額に影響が出ることになります。
このように慰謝料の金額は離婚原因となった事柄だけではなくさまざまなことが重なり合うため、金額を決めるのがとても難しい仕様になっています。
慰謝料について疑問があるときは、必ず弁護士に相談するようにしましょう。
離婚後に支払う慰謝料が払えない状況が続くと最後はどうなる?
離婚後の慰謝料が払えないからと無視を続けていると、こちらにとって不利な事態を招く可能性があります。
リスクを回避するために、どういったことが起こるのか知っておきましょう。
強制執行による差し押さえ
慰謝料が払えないからと放置していると、強制執行による差し押さえが起こる可能性があります。
差し押さえとは資産価値のある財産を強制的に持っていかれる制度であり、これには車・給料・預金・不動産といったものが含まれます。
仕事に必要なものや生活に必要なものは除外されますが大切なものが持っていかれることには変わりないため、本人にとって大きなストレスとなります。
早めに支払いを済ませることに越したことはないでしょう。
離婚裁判で不利になる
慰謝料を払わないままでいると、いずれ離婚裁判を起こされます。
離婚裁判においては信用がとても大切なポイントとなるので、支払いを拒否し続けてきた場合かなり心象が悪くなるでしょう。
相手側の説得力が増すことになるので、動向次第では慰謝料の金額が増すといった事態になりかねません。
本当に慰謝料を払う必要があるのか考えることが大切
慰謝料の請求をされたからといって慌てず、本当に慰謝料を払う必要があるかどうか考えてみてください。
やみくもに相手のいいなりになるのは危険です。
時効を過ぎていないか確認する
離婚後の慰謝料請求は3年と決まっています。
不倫が原因で離婚した場合は不法行為があった日、離婚自体によって発生する慰謝料の場合は離婚が成立した翌日から起算されるので注意しておきましょう。
離婚に至った原因を考える
慰謝料は夫婦の価値観の違いといったことでは発生しません。
相手が勘違いをしている場合があるので、しっかりと確認してください。
具体的な理由があったでしょうか。
自分ではなく相手に落ち度がないか?
これも相手の勘違いで起こることですが、自分の落ち度ではなく相手に落ち度があるのに慰謝料を請求されることがあります。
離婚原因をしっかりと考え直してみましょう。
慰謝料を請求されたからといって、必ず支払わなくてはいけないというわけではありません。
本当に自分に支払い義務があるのか考えることはとても大切な行動です。
慰謝料の請求が必要ないと感じた時には、相手に対し内容証明にて反論をするようにしてください。
弁護士が代理人という形でついている場合は、弁護士に送るといいでしょう。
離婚協議書を作成していれば慰謝料を払わなくていい場合がある 離婚時に示談書を作成して置いた場合、慰謝料を支払わなくていい場合があります。
離婚時のバタバタで忘れてしまっていることがあるので、今一度確認しておきましょう。
離婚協議書とは夫婦の話し合いの元、財産分与や親権といった細かな取り決めをするために作成する書類です。
離婚協議書では慰謝料の取り決めを行うこともできるため、慰謝料不要と書いてあったら多くのケースで慰謝料の支払いをする必要がなくなります。
離婚協議書を作成しているかどうか慰謝料不要という取り決めをしていたかどうか、確認しておいてください。
離婚協議書は相手が作成することもできるため、自分の精神状態によっては内容を覚えていないことがあります。
手元にある離婚協議書を確認すれば、勘違いを防ぐことができるでしょう。
離婚後に慰謝料が払えなくなってしまった時の解決策 ・減額交渉
減額交渉をすることで慰謝料の金額を、下げることができる可能性があります。
1.相手に謝罪の意思を見せる
精神的苦痛を味わわせてしまった相手に強い謝罪の意思を見せ、相手が納得すれば慰謝料を減額してもらえることがあります。
真剣みにかけた場合かえって逆上させてしまうことがあるので、心からの謝罪を行ってください。
2.そもそも収入が少ない場合
基本となる収入が少なく慰謝料が払えない場合は、交渉によっては減額してもらえることがあります。
3.悪質度
例えば不倫なら相手が誘ってきた・暴力ならそれほどの重症ではなかったといったことで、減額されることがあります。
4.相場を大きく超えた場合
相場を大きく超えるほどの金額を請求された場合、調整できる可能性があります。
家庭の状況や相手に離婚の原因があった場合にも減額できることがあるので、まずは交渉することが大切でしょう。
分割払い
相手と交渉を行い分割払いの提案をしてみてください。
分割払いはすぐに現金が入ってこないので嫌がられることが多いですが、支払いをしないといっているわけではないので相手の性格によってはあっさりと認めてくれるケースもあります。
分割では1回の負担額が少なくなるため、支払いがしやすくなるでしょう。
分割払いにおいても途中で払えないという事態になった場合、減額交渉ができます。
欠点としては相手との関係が長引いてしまい、いつまでも離婚問題を引きずる必要が出てくることです。
離婚後は相手とかかわりたくない人がほとんどなので、大きなストレスとなるでしょう。
時間が立つことにより経済状況が変化し気持ちが変わることもあるので、支払う側の状況や性格によっては向かないことがあります。
弁護士に相談
減額交渉や分割払いの交渉は個人同士で行うと、後々トラブルになる可能性があります。
弁護士に入ってもらい、法的な視点から交渉を行ってもらうといいでしょう。
弁護士に間に入ってもらった方が減額や分割払いの交渉がしやすくなり、もしもの時の証明も確実になります。
注意点としては、どの弁護士でもいいというわけにはいかないことでしょう。
一言に弁護士といってもその種類はさまざまです。
民事に長けている弁護士もいれば刑事事件が得意な弁護士もいるのです。
離婚問題に長けた弁護士を望む場合は、必ず家事事件が得意な弁護士に頼みましょう。
家事事件とは家庭内の紛争のことを指します。 離婚問題について相談する時は家事事件を担当している弁護士のほうが、ことをスムーズに進められるでしょう。
どの分野が得意かどうかはホームページで確認することができます。
今まで担当した事例を積極的に公開している弁護士事務所もあるので、確認しておくと後々安心です。
カードローンで慰謝料を支払う
離婚後の慰謝料がどうしても払えない時は、カードローンを頼るという手もあります。
カードローンとは銀行や消費者金融にお金を借り、後から返済していくというプランです。
知人や親戚に借りるよりも後腐れがなく、返済計画も立てやすいのが大きな特徴といえます。
離婚後のごたごたが長引いてしまうと負担が強くなり、日常生活に支障を来たしかねません。
早めに慰謝料を支払ってしまい、相手との縁を一刻も早く切ってしまうというのも一つの手でしょう。
傾向として銀行が借りづらい・消費者金融が借りやすいといったことがあります。
金利の安さなら銀行、借り入れまでの早さなら消費者金融といったように、それぞれに個性が存在します。
自分に合った方法で行うといいでしょう。