打ち明け
『友達でいよう』
僕自身の事を打ち明けた時、彼女は戸惑いながら僕にそう言った。
僕は彼女に『付き合ってほしい』と申しこんで彼女からOKの返事をもらってから、3日経ったある日。罪悪感からくるものか-本当の事を話そう。僕は僕自身の事を打ち明ける事に決意した。もし、受け入れられなくて今よりもっと惹かれあい、感情移入してからではお互いに辛くなるだろう。この事で別れることになっても傷は浅いうちに。。。
これが俺だ!
-そう自分に言い聞かせてもやっぱり怖かった。だけどこのままでは何も始まらない。僕は携帯電話を手にとり彼女へメールを送る事にした。直接、顔を見てとか声を聞いてでは、感情が先走ってしまい、よく話せないかもしれない。メールという、あえてワンクッションを置くことで彼女の冷静な返事を待つことにした。
『ドギョン 真剣に話すから聞いてね。俺の戸籍と身体は女だよ。この事を知ってドギョンが受け入れれなかったら友達でいい。だけどもし受け入れてくれたら本当に大事にする。』
そう彼女に送ってから、携帯電話ばかりが気になり、胸の鼓動は増す一方だ。30分ほど経っただろうか。携帯電話からメール受信の通知メロディが流れた。
彼女からだ!!ドキドキしながらも開いた。そこには・・・
『身体が女?私が見たときは顔も声も女じゃなかったよ、本当に信じられないよ。信じたくない。嘘だと早く言って!』
『本当だよ。嘘は言わない。これが俺だ。』
『しっかり男だったのに。では、アユムと私が同性恋愛してるの?』
同性恋愛-やはりそう感じてしまうものなのか。。。
『違うよ。俺は今まで自分を女だと思ったことはない。男として女を好きになる。身体が女なだけだ。』
-突然、僕の携帯電話が鳴る。彼女からの着信だ。
彼女からの着信は出ず、すぐに僕から折り返した。
『びっくりした?だけどちゃんと言わないといけないと思ったから・・・』
『びっくりしたよ~どうする?・・・本当に女?冗談でしょ?よくわからない・・・あ~私が日本語よくできないからこんな時すごく悔しい。言いたい事もたくさんあるけど何て言っていいかわからない・・・』
『頑張って勉強して~ヾ( ´ー`)』
わざと陽気にみせる
しばしの間沈黙が流れた
『・・・・友達でいよう。ごめんね。大変だと思うけど頑張ってね。アユム!ファイティン!!』
『・・・・・わかった。仕方ないね。これからも友達でいよう。日本語もわからないところあったら遠慮しないで聞いてね。わからないところあったら俺の携帯に合図して。俺がかけるよ。』
-わかった。と言っても実際は心が張り裂けそうだった。そこに自分の感情を入れてはダメな気がした。これが俺なのに。これが自分なのに。。。
『私、本当に今アユムのことで頭がいっぱい。今から仕事行きたくない。どうしよう~どうしようかなぁ。。。』
『ちゃんと仕事行かないとダメだよ。休憩になって退屈だったら電話したらいいよ』
『それなら私とずっと恋人でいて?いい私が日本に住もうか?日本で就職しようか?お酒もタバコもやめて。』
彼女のそんな優しい言葉に涙があふれてくる。僕は鼻声になって泣いてるのがばれないように言葉を発さなかった。
『もしかして泣いてるの?あ~やっぱり女だ~:*:・( ̄∀ ̄)・:*笑:』
僕をからかい僕もつられて笑う
それから彼女は仕事に向かい、仕事の休憩中と仕事帰りに電話がかかってきた。僕は彼女からの着信は出ずにすぐに折り返した。
『何で~?出ていいよ。やっぱりアユムは優しいね。』
彼女の『出ていいよ。』という、そんな気遣いに逆に『友達』という一線を引かれている気がした
『今、終わったの?おつかれ(^-^)/!』
『うん。今自転車乗って帰ってる途中だよ。』
何となく会話に沈黙があったり、ぎこちなかったりする
『自転車?ベンツ??(σ・∀・)σ』
くだらないおやじギャグを飛ばしてみる
『フェラリー(≧▽≦)』
彼女も負けじと答える
お互いに笑いあい、ぎこちなさもどこかに飛んでしまう。笑える事は本当にいい事だ。
『寮に着いたよ~』
彼女が息切れしながら僕に言う。
『どうしたの?息切れして』
『アユムと話したいからエレベーター乗らなかった』
-彼女は寮の4階まで僕と電話しながら階段をのぼってくれたのだ。いつも『めんどくさい』 『疲れた』が口癖な彼女の優しさに胸が痛くなる。
それから3日ぐらい経ったある日。彼女からメールが届いた。
あれからお互いに核心には触れないものの、明らかにお互いの連絡頻度が減った。
それもそのはず-彼女と僕は『友達』。僕は自分にそう言い聞かせていた。
添付写真付きだ。何だろう。。。? メールを開いてみる。 そこには・・・・・
『私の心だよ。。』
彼女が自分の愛用Tシャツを着て撮った写真がメール本文と共に送られてきていた。
メールと写真を見た瞬間、僕は思わず吹き出した。いかにも彼女らしい。そしてすぐさま彼女に電話する。
『何これ~( ´艸`)?』
照れくさいのと、じわ~っと襲ってくる感動に感情をごまかして彼女に問う。
『私の心!ハートだよ、ハート(*v.v)。』
僕はあえてそれ以上彼女に何も聞かなかった。彼女の気持ちが痛いほどに伝わってきた。嬉しかった。
それから僕は翌日に、彼女にキティちゃんの電報(彼女はキティちゃん好き)を送り、もう一度告白する。
電報が届いた事で彼女は大はしゃぎ。
『今までの恋人にこんな事したことあるの?』
へ? そこ?ヽ((◎д◎ ))ゝ笑
それから彼女からメール受信
『ありがとう。。私を大事にして。。。』
きっと彼女はそれしか言えないんだろうな。
ありがとう。彼女を本当に大事に幸せにしてあげようと強く思った瞬間だった。
はじめに。
僕は性同一性障害です。戸籍上は女です。某大学病院で数名の医師とカウンセリングや様々な検査を受け、2004年12月に性同一性障害と診断されました。その後、ホルモン療法開始と共に裁判所で改名申請をし、2005年4月に現在の名前に改名しました。今では、不自由なく男として働き、生活しています。ここ数年で性同一性障害に関する法案が改正されたり、メディアでとりざされたりで、僕たちと同じ悩みを抱える同士には、本当に希望のある光が見えてきたように思います。これまでは、周囲の偏見や差別、無理解に幼少期から苦しんできました。それも無知であるが故の個人的感情なのかもしれません。また僕自身も知らず知らずの内に人と距離を置き、傷つくことを恐れて予防線を貼っていた時期がありました。だけど今では、ありのままの自分でいれ、こうして生まれてきた自分だからこそ、人の痛みがわかるようになりました。
国、文化、言葉、距離、思考、性別・・・あらゆる障害を乗り越え、今、僕には心から大切な彼女がいます。彼女は僕の一番の良き理解者であり、パートナーです。このブログはそんな彼女との恋愛やこれまでの出会いを書き綴っていきたいと思います。
このブログを通してたくさんの方との出会いや交流を大切にしていきたいです。こんな僕たちですがどうぞ温かい目で見守ってください。よろしくお願いします。