化学兵器は本当にシリア政府軍が使ったのか? | アーディで行こう

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「普通」を意味する便利な言葉、「アーディ」 地元の足として、とことこ走るバスなんかを「アーディ バス」、エジプトではエアコンなし列車を「アーディ」 そんな方法での旅を紹介しましょう。
え、そんなの自分には無理だって? 大丈夫。「アーディ、アーディ」

8月21日に首都ダマスカス近郊で、化学兵器を使用したと思われる攻撃があり、多数の住民が死亡・負傷したのはご存知でしょう。これについてアメリカはシリア政府軍側が使用したとして「限定的な」攻撃を行う構えですが、使用したのが政府軍側だったのか、かなり疑問に思われる部分が出てきています。

AP通信の中東特派員を長年続けているDale Gavlakという記者が、8月29日にMint Pressというミネソタのウェブサイト型ニュース会社に掲載した記事によると、彼は現地の反政府勢力にインタビューし、今回の事件は自分たちのミスが起こしたこと(なんと化学兵器であるとの認識がなかった)、そのボンベはサウジアラビアから持ち込まれたものであること、彼らの給料(!)がサウジ政府から支払われていることなどを聞き出しています。

Mint Press-EXCLUSIVE: Syrians In Ghouta Claim Saudi-Supplied Rebels Behind Chemical Attack

日本語で紹介しているサイトがあるので、そちらもどうぞ。
ROCKWAY EXPRESSーシリア反政府勢力:化学兵器攻撃は自分たちが行ったと認める

ちなみに、化学兵器が使われたゴーダ地区というには、ダマスカス東郊外にあり、農地に囲まれて政府の軍事基地があるところです。集落は基地入り口とそこから1kmはなれたところだけで、アサド大統領が言う「自分たちの軍隊がいるところで化学兵器攻撃などするわけない」というのも一理あります(軍事基地内での作業ミスは考えられるとしても)

アメリカはシリア政府軍が行ったとする明確な証拠を30日に出すといっていましたが、私にはいつ何を出したのかさえ明確でないまま本日に至っています。
アメリカの言う証拠のキモはどうやら
「事件後に政府高官が化学兵器部隊の責任者と電話でパニック的なやりとりをしている」
→「政府本体は使用する意図がなかったにもかかわらず、部隊が独断で使用したにちがいない」
という程度のものであるようです。

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ブッシュ前大統領の行ったイラク侵攻で、当時の小泉首相はいちはやくアメリカの行動を支持すると表明しましたが、後にアメリカの主張していた「大量破壊兵器」も「アルカイーダへの協力」もなかったことが判明し、それから10年たった今でも、未だにイラクは暴力が続く不安定な状況から抜け出せていません。

アラブの人々のなかでもとびきり親切で、わりと勤勉で、こつこつと仕事をする国民性を持ち、クレバーなシリア人が、一刻も早く平和な生活を取り戻すために、今回アメリカが行おうとしている「限定的な」制裁的攻撃が、どんな役に立つのでしょう。

よく、日本の国益のために同盟国アメリカを支持するしかないといった考えが出てきますが、今回イギリスが取っている態度についてよく考えてみてはどうでしょう。小泉の支持によりその後のブッシュとの強固な関係が構築され短期的に日米関係が蜜月状態になったのは事実ですが、ならば今回猛反対しているプーチン首相と結び、北方領土問題の前進や中国牽制といった戦略を取ることだって、短期的には考えられるのではないでしょうか。