宇野side





家に帰ってママ達に隆弘が帰ったことを伝えたら隆弘のお母さんまで帰ってしまった.  ご馳走は殆ど手がつけられていなくて寂しげで.



宇「あ、そうだあの人に連絡…!」



新手のナンパ師みたいとか失礼なこと言っちゃったけど助けてくれたことに変わりはないし.  ミニーのパーカーのポケットに手を突っ込んで紙切れを探す.



宇「あった.  ……っえ?」



出てきたのはビリビリに破かれた紙屑だった.  パーカーに入れておくだけでここまでビリビリになることは有り得ない.  私ではないから必然的に隆弘が犯人なわけで.




宇「あの…ばかっ!」



リビングにある固定電話に直行.  電話帳をパラパラとめくってあいつの名前を探す.  別に明日言えばいいことなんだけど…やっぱり何処かで仲直りしたい自分がいた.




_________いや、喧嘩したのか?




宇「あった…」



慎重に番号を入力して受話器を耳に当てる.  ……出るかな.





purrrrrr




purrrrrr






お掛けになった電話はお客様のご都合によりお繋ぎできません





宇「……」




もう一度、もう一度と掛け直していたらいつのまにか7回目になっていた.  …流石に次で最後にしよう.




purrrrrr



purrrrrr





西「……7回目、なんだけど」




宇「あ、やっと出た」




西「…んだよ、もしかして気づいた?」




宇「なに破ってんのよばかっ.  連絡しようと思ってたのに」




西「…いいじゃん連絡なんかしなくて.  どうせああいうナンパ師は色んな人に声かけてんだよ」



隆弘がニヤニヤしてる様子が電話越しにも伝わる.  さっきまで切なそうな顔して抱きしめてきたくせに.  なによそれ.




宇「ばーか.  …あの、さっきのことだけど、」




西「じゃ切るから.  また明日」




ブチリ.  一方的に切られた電話.  隆弘がさっきの抱きしめたことについての話題を嫌っているのは目に見えていた.  




宇「んだよそれ」




上手く言えないけどなんだか寂しいような、虚しいような.  こんな気持ちなのが私だけっていうのがムカつくような.  自分の気持ちがわからなすぎて、怖い.




宇「変なの」





“君の声が聞きたくて  鞄の底探す電話







ページめくって君の名前なぞる







僕らはまだ未完成   噛み潰したオレンジさ






上手く言えないことばかり  拾い集めて”






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