西島side









学校のチャイムの音でクラスが一気にガヤガヤとうるさくなる中.  “頑張れよ” なんてガッツポーズでお見送りしてくれる日高に友情を感じながら下駄箱へ.  



校門近くで腕時計を見ると結構ギリギリで、ローファーで軽快な音を鳴らしながら走る.





西「こんにちはー」




直「おっ西島くん待ってたよ」



ただ単にかっこいいからという理由で始めたカフェ店員.  外見も雰囲気もオシャレで我ながら結構気に入ってる.




店長が直也さんで、副店長が友香里さん.  2人ともかなりの美形だけど特に直也さんは長身でスマートのイケメンだ.




友「隆弘くん、ありがとね来てくれて」




西「いえ、大丈夫ですよ」




友「お礼に今度遊んであげようか?」




西「結構です」





直「はいはい友香里ちゃん西島くんを口説かない」





こじんまりとした店内にはまだ誰もいない.  くっそ、走ってこなくても良かったじゃないか.   白シャツをパタパタと仰ぎながらクーラーの近くに寄る.





直「2人とも、紅茶飲む?」




カウンターの中で赤ワインを大事そうにトーションで拭く直也さんの指にはプラチナの指輪.  指輪があることで直也さんのダンディーさが更に際立っている気がする.




西「あ、お願いします」




友「私もー」





直「……はいよ、うらちん特製アップルティー」




カウンターにコトリと置かれた2つのマグカップ.  俺のはオレンジで友香里さんのは黒.   お客さんに出す時もその人に合わせた色を出すんだそう.  …個人的にめちゃくちゃかっけえと思う.




アップルティーの独特の芳香がカフェ全体に香る.  




友「いい香り〜」






西「ありがとうございます」




直也さんが一目惚れをして買ったというペコちゃんの8色のマグカップ.  実彩子もペコちゃん好きだし今度買ってやろうかなとか考えているなんて絶対言ってやらない.  あいつすぐ調子に乗るから.





友「隆弘くんはさ、どこの大学行きたいの?」




友香里さんがおもむろに尋ねてくる.  友香里さんは外見とは違って可愛い声をしていて、そこもまた魅力だと思う.  どちらかというと友香里さんは綺麗系なお姉さんって感じだから.




西「えっと、できれば英語が盛んな四葉大学ですけど……挑戦というか、




友「へぇー……なんで行きたいの?」




西「あの……幼馴染がそこに行くって言ってて……」




驚いた顔.   いやまぁそうなるよな.  今時幼馴染なんて早々いないだろうし.



友「やっだぁぁ可愛いぃぃ!」




直「うるせぇなっ」




西「……」




友「なに!?その幼馴染とはどういう関係!?」






西「えっと…いや、…好きというか…ってもちろん幼馴染としてです.  幼馴染としてですからっ」




失言.   焦ってアップルティーを一気飲みなんかして.   猫舌の俺が撃沈したのは言うまでもない.  友香里さんはほぅっと息をつくと、カウンターの中にいる直也さんに話しかけた.




友「青春だぁ羨ましい、ねぇ直也くん?」



直「えー俺会いたいその子に」



“どうしよう落とせたら” ニヤニヤ.  明らかにからかってきている直也さんに冗談で返すなんて余裕なくて、母さん譲りの自慢の大きな一重の目で睨みつける.




実彩子関連だったら先輩後輩なんて関係ないし. 




西「近づかないでもらえます?実彩子に」




直「うぉっこえー西島くん」




西「アップルティーご馳走様でした」




友「隆弘くん頑張ってね、」




西「ありがとう……ございます」




流石に怠けすぎたななんて反省しながら空になったマグカップを下げようと立ち上がった時、カランカランと扉が開いた




直友西「っ、いらっしゃいませー」




合わせていた友香里さんとの視線を慌てて逸らして背筋を伸ばして頭を下げると、頭上から降ってきたのは聞き慣れた声だった.







宇「あ……隆弘…っ」





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