旅行記は絶賛書いておりますが、

最近見て好きになった作品の感想を残したいなと思ったのでバッと書いてみました。ネタバレあり。













ナミビアの砂漠


別作品を見に日比谷の東宝に行ったらナミビアの砂漠のポスターを見て、目を引かれたので公開したら観に行くぞと思ってた。

とはいえ、楽しみにしていた割に前情報はほぼ入れずに見に行った。




特に本筋と関係ないけど、冒頭で町田駅のマルイの前をカナが歩いてくるシーンで、うわっ!めちゃくちゃ町田だ!ってすぐわかったことで非常に興味をそそられた。知ってる街なのもあって、その後のカナのシーンと合わさったら、妙なリアリティを感じた。


最初はカナを眺めるような気持ちで見ていたのに、不思議となぜか共感してしまうというか。あー、なんかあるかもその気持ち。って思って見ていた。


まずもって怠惰で停滞したカナの生活ぶりがずっと映し出されることが、それを映画館で見続けていることが何となく息苦しくて辛いように感じていたけれど、

だんだん私的には少しホッとしてきたというか。


日々誰かに求められる特に望んでもない努力や成長がバカバカしく思える時ってあるじゃないですか。

会社の自己申告を書くたびに、いや、普通に生きていける、節約したらちょっと楽しく生きていける給料が毎月入ったらいい。スキル?キャリア?この給料でそんなもん何の得があるかって。

そしていつのまにか自分で自分にストイックになる自分が時に本気で嫌になる。


カナを見てるとちょっとホッとするんだよな。自分に何も期待しない、何もできない、何もやりたくない、日がな漫然と暮らしたい時間が人生の中にあってもいいじゃんと。

カナ、多分ずっとこうではなかった気がする。考えすぎて、そしてここに行き着いた気がするんだよな。


あと、ホンダではなくハヤシを選んだカナにもだんだん共感してくる。


ハヤシが引くことなく応戦して思いっきり喧嘩しあうようになって、カナが自分が抑えられなくなってきてからが俄然ハヤシにみどころがあるというか。

ホンダはなんというか尽くしてくれるけど肝心なところで頼れないなぁ、と自分なら思ってしまう。

ホンダのやってること、本来的にカナはできるんじゃないのかな。

カナとハヤシが罵詈雑言をぶつけ合って思い切り喧嘩してるのを見て、正直ここまでやれたら羨ましいというか。こんなに大きい声で自分の思ってることを躊躇なく思ったままの言葉で言い散らかす、何度目だろうとなんだかんだ言おうとも根気強く同じテンションでやり合う、って、そうそうできることじゃない。

この2人を見てると、ハヤシは別にカナに依存してるわけではないと思う。金子さんはインタビューで“罪の意識”もあると言ってたけど、ハヤシは結構ちゃんとした気持ちでカナを見てくれてると思う。そういうところが、ホンダよりハヤシだよなって。


カナがカウンセリングに通うようになって、少しずつ今の自分の状態を客観的に見られるようになってきた気がするのが変化の兆しなのかな。

オアシスへ一時的に水を飲みに来た動物の様子を見ていたようにカナの人生のひとときを見ていて、カナはこれからカナはフレームアウトして、どんなふうにかまた生きていくのかな、と思った。


河合優実さんのお芝居が凄かったなぁ。

ただそこにいるだけで出来上がってるというか。

何をしているシーンでも画が完成されているよう。

無表情でただアイスを食べているだけの表情が、冷蔵庫から雑にハムを漁る佇まいが、こんなにずーっと見ていたくなるのは何で?

何か物凄いストーリー展開があるわけではない、でも河合さんが映し出すカナの虚無な日常の中に物凄い濃さや生々しさを感じた。


河合さんはいつも目が印象的なのだけど、

今回のカナは怠惰な暮らしをしているのに目の奥に怒りのような、怒りすらも通りこしたようなものがギラっとしているのをチラチラと見たような気がした。自分の身の回りだけじゃない、こんな空気を醸成している世の中全体へ斬りかかるような、そういう強い意志を感じる目だったな。







ぼくのお日さま


別作品を見た時、この劇場マナー講座を見かけて思わず見よう!と思いたった。

このハートフルさ、きゅんと来ません?


今年見た映画の中だと、一番好きだったな。



なんと言ってもまず冬の画の美しさにため息が出る。

雪の美しさ、氷の美しさが淡くて幻想的な映像の中に詰まっていて、どのシーンも夢中になってしまう。

特に、朝日に照らされた雪景色と、夕日に照らされたスケート場がとても美しかった。冬ってこんなに綺麗なんだ…って思うくらい。


そしてそこに出てくる登場人物がみんな魅力的。

限られた人数だけど、それぞれの関係性がちゃんと濃い。

言葉以外の描写が豊かで、とても繊細。

やっぱり子供達のお芝居がとても瑞々しくて眩しくて大好きだった。

照れ、ときめき、気まずさ、緊張、…いや、そんな言葉にあてはめてしまうのが野暮だなと思ってしまう。

無邪気で純真無垢な、それだけではない心の中に芽生える自分でも初めて感じるかもしれない、まだそれが何かわからないような淡い感情を丁寧に丁寧に掬って映し出しているように見えた。

色や名前がついていない感情がたくさん見えるのがくすぐったくてあたたかくて、なんだかとても微笑ましい気持ち。


タクヤとさくらはもちろん、コウセイもすっごいいい味出してて、みんなみんな愛おしかった。

それに、子供達を取り巻く人間関係が一つ一つ繊細でこれもまた愛おしい。


そして、そんな子供達を見守る荒川。池松さんのお芝居が最高でした。

無表情で車を運転しながらタバコを吸っている冒頭から、子供達の純粋な眩しさに当てられてどんどん笑顔が増えていって、エネルギーを取り戻していくのが印象的。

はじめにさくらに教えているときはただただ改善点ばかりを伝えていたけれど、タクヤに、そして2人に教えるようになるとどんどんできているところを褒めるようになっていったのにも驚いた。


池松さん演じる荒川のなんてことない仕草をすごく見ていたいなぁと思う瞬間が結構あって、

その一つが、スケート靴の紐を解いて脱ごうとしているシーン。ただ紐を解いているだけなのに、すごく画になるカット。お気に入り。

さくらとタクヤと並んでカップ麺食べてるシーンも可愛くて好き。

なにしろ、池松さんの声が冬の静謐な風景に響いて響いて、最高です。


さくらとタクヤと荒川が凍った湖で滑るシーンがとにかく何もかも温かくて美しくて、ずーっとずーっと見守っていたいっていうキュンとした気持ちになった。


唐突にやってくる別れたちにも切なさや痛さだけではなくて、どこか儚い美しさすら感じてしまう。荒川がフェリーに乗る姿を見てどうしてか、“悲しい”って感じなかったんだよね。もしかしたらきっと序盤みたいに無気力な荒川に戻るかもしれないのに。


個人的には、荒川と五十嵐を情景描写で恋人だと表現しているところが好きだった。なるほど、今自分はこことここを繋いだんだなぁと自分の視点を振り返ると面白い。

そうそう、全体的に余計なセリフが無いのが好きです。


ハンバート ハンバートの主題歌も歌詞まで読んでたらじんわりとしみて、佐藤さんの劇伴も凄く良くて、音楽もとても素敵だった。


メイキングがすごく面白くて、監督も実際にスケート靴を履いて、滑りながらカメラ持って撮影している様子が見られる。見終わってから動画を見て、うわ!こうやって撮ってたのか!だからこそのあの臨場感!と納得が行った。







彼女と彼氏の明るい未来


旅行の帰りが11時間フライトだったのに、時差的に寝てはならぬ状態だったから、とにかく映像を見まくろうと思っていて。

友達に勧められたのでアマプラでダウンロードしておいた。


1回目の機内食も食べたことだし、さて見るかーなんて気持ちで再生し始めたものの。

あれよあれよと夢中になって見てしまった。

次の話へ、を押す手が止まらなくて、全7話結局ノンストップで見てしまった。

これ1週間開けてたリアタイ勢、尊敬する…。


ふと思いました。明るい未来って、なんなんだろうなぁって。


私はどっちかというと雪歌に共感してしまって。

雪歌が一郎の前で見せていた姿って、本当に無理してたのかなぁって。理想を演じてたのかなぁって。

そうではない気がしてた。


雪歌とは違う方向だけど、私もまたどうしようもない過去があって、(いつかは知られなきゃいけないかもしれないけど)それを知られたらものすごく引かれるだろうことがわかってて、

そりゃその時の自分なんて知られたくないじゃないですか。

それに、好きでこんなことになったわけじゃないのに、そこの自分がありのままの自分なんて言われたら物凄く嫌だ。


雪歌が一郎の前で見せてた姿って、本当はこう生きてきたかったっていう姿なんじゃないのかなって。

対価がなくても自分を大事にしてくれる、1人の人間として尊重してくれる、安心してそばにいられる、そういう中でずっと育ってきてたら、雪歌はきっとこういう人だったんじゃないかなって。だからきっと作り物じゃない。雪歌にとったらこれもきっと本当なんだよね。

でも終盤一郎に嫌いな方の自分を“本当”と言われたら、それって雪歌にとったらキツくて仕方なくない?

…と思ったら辛すぎて涙が止まらなかった。

それ言われたら勝手に覗いといて何言ってんのふざけんなよ、と思うな私なら…。


だから、最終回で1年経った一郎がすごく良かった。

過去と今を自分の視点で切り分けて両方受け入れる、ではなくて、

時間は繋がっているから初めから終わりまで受け入れる、って変化したところが。

「全部必要だったんだと思う。で、今のこういうのとかも含めて全部、今度はきっと、これから先を作っていくと思う。」

って言葉に一郎の変化と雪歌を大切に想う気持ちが詰まってると思ったし、私もすごく救われた。


一晩話し続ける2人の距離感はとても心地よくて。彼氏と彼女、ではなくて1人の人間と人間が話してる。向き合うんじゃなくて、並んだりとか、互い違いになったりとか、視線を気にせず話せてるのが良い。

最終回にして始まったというか。最後一郎が声をかけたとき、どんな形になるかわからないけど、やっとこれからは一番いい形で一緒にいられる気がして、それが2人の明るい未来なのかな。


原作はもうちょっと表紙から受ける印象もポップだし、やりとりもテンションが高めだからこそその中でグサリと刺してくるだけど、ドラマは一個一個の厚さや重みが増していて的確に刺してくる感じがあって面白かった。


いい意味でステレオタイプなドラマのイメージではなかったというか、

なんてことない日常のシーンの温かさが丁寧に描かれているのが好きだった。

1話で一郎が雪歌と待ち合わせするのにルンルンして駆けだしていく一郎を見ていたら、あまりに可愛すぎて、こんなふうに自分に会うのを楽しみにしてくれる人がいたら嬉しいんだろうなって思って飛行機で人目を憚らず泣いた。


エンディング映像なんか号泣案件。




末澤さん、ステージや雑誌では根こそぎ視線を奪うほどあんなに鮮烈なオーラを纏っている人なのに、

ドラマだとどうやってオーラ消してるのってくらい、どこからどう見ても一郎でびっくりした。

今知ってるワイフ見ててもびっくりしてるけど、どこからどう見ても(3秒考えたらいやこんな素敵な人どこにもいないとわかるのに)普通の人にしか見えなくて、役への落とし込み方が凄い。

もっといろんな役が見てみたい。


細かいところまで見どころが多くて、特にタイトルバックの出方とか好き。


あと、本筋と関係ないけどふと思い出したのが、中学校を受験したとき、私も小学校の担任の先生に全力で応援してもらったこと。今でも折に触れて先生に“あのときは嬉しかった”って伝えている。あのとき一郎が親身になってくれたことが、てんまが大人になった時も自分の支えの一つになってたらいいなって思った。


そしてこのドラマの大ファンという佐野ちゃん、私、きっと朝まで語れるよ!笑