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Rodriguezのブログ

小説とか物語とか書いていこうかなと思いました。

僕の彼女は、よく皿を割る。
別に彼女が割りたくて割っているわけではないので、正確に言えば、「よく皿を割ってしまう」になるのかも知れない。

僕らが同棲している半年の間に、彼女は4回も皿を割った。
細かく言えば、1枚の皿と2個のコップ、そして一客の茶碗を割った。

彼女が最初に割ったのは、何の変哲もないガラスコップだった。
彼女は皿洗いをしていて、奥の方の汚れをとるためスポンジをコップに押し込もうとした拍子に割れてしまった。
割れたというよりは、外れたと言った方がいいくらいに静かな割れ方だった。
あまり破片は飛び散らなかったのに、彼女は手の甲をガラスで切ってしまっていた。
その小さな傷からは、彼女の赤い血がにじみ出ていた。

次に彼女が割ったのは僕の茶碗だった。
この時も彼女は皿洗いをしており、僕はテレビを見ていた。
重ねてあった僕の茶碗と彼女の茶碗が上手い具合にはまってしまい、彼女がなんとかしようとしていたら、下側にあった僕の茶碗が割れてしまった。
この時もあまり破片は飛び散らず、静かな割れ方だった。
今度は幸いにも彼女はガラスで手を切らずに済んだ。
次の日、僕は割れた自分の茶碗の代わりに、新しいのを100円ショップに買いに行った。

3度目に彼女が食器を割ったのは、2度目の事件から2ヶ月ほど経った時のことで、この時、僕はまだ職場から家に帰宅する途中だった。
彼女が使ったコップを流しに置いたら、そのコップの端がポロリと欠けた。
彼女いわく、「普通に置いただけ」らしいので、寿命だったのかも知れない。
そのコップは、彼女が僕と住む前に一人暮らしをしていた時に買ったもので、青色っぽいガラスの、なかなか綺麗なコップだった。
しかしそのコップは突然音もなく割れてしまった。
彼女に怪我はなかったが、お気に入りのコップを失い、彼女はとても悲しがっていた。

そして昨日だ。
洗い終わった食器を拭いている彼女に、僕は「話」を切り出した。
僕の「話」は、【僕は君のことはすごく好きで、僕は今幸せだけれども、このまま同棲を続けても、僕は君と結婚したいとは思わないと思う。なぜなら同棲を始めて半年経った今も、僕は君との結婚生活なんて微塵も想像できないからだ。だからお互いのために少し距離を置かないか?】
そういった内容だ。
彼女はショックを受けたみたいだったが、何も言わなかった。
そして、いきなりそこにあった僕の皿を地面に叩き付けた。
派手な音と共に、辺りには粉々になった皿の破片が飛び散った。
裸足でスリッパを履いていた彼女の足からは、2カ所ほど赤い血が出た。
もちろんこうなることなど予想もしていなかったが、僕は偶然にも、いつもは家ではあまり履かない靴下を履いていたので、破片で足を切ることはなかった。
しばらくして彼女は何も言わずに家から出て行った。

彼女は僕の皿を粉々にし、僕は彼女の心を粉々にしたのだ。

今朝になって、彼女に自分の気持ちを言ってしまったことを後悔したが、もう遅かった。
彼女は帰ってくるだろうか。
そんなことを考えていたら、ふと、自分も皿を割ってみたい衝動に駆られた。
僕は、彼女の皿を持って、マンションの裏にある空き地へ向かった。
周りに誰もいないことをたしかめ、勢いよく彼女の皿をコンクリートの地面に叩き付けた。
皿は割れた。
気づいたら、自分の指から、彼女のそれよりも赤い僕の血がにじんでいた。

そう、血を流しているのは彼女じゃない。僕だ。

割れた皿と血のにじむ指を見ながら僕は、次に買う皿は落としても割れないプラスチックの皿にしようと思った。