具体的な問題処理のため「規範」と「その当てはめ」の意味も、微妙に変化してきている。抽象的な大原則ではなく、具体的事実への当てはめの一歩手前の「基準」が最も重要なのであり、それを判例から修得していくことの重みがますます増していくのである。(前田雅英・『最新重要判例刑法250(第8版)』はしがき)


もちろん、学説や条文についての一定量の知識は必要であるが、アプリオリに存在する「規範」を具体的事案にあてはめれば、問題処理ができるわけではない。なぜその解決を選択するのかを、具体的・説得的に示さなければならない。その作業により「規範」も検証され修正されていくのである。そのためには、数多くの事案とその処理を批判的に追体験し、自ら理論化する練習が最も有効である(前田雅英『ケースブック刑法(第3版)はしがき』)


これまで、法学未修者を含む法科大学院生の教育においては、「最低限度の知識があれば、後は自分で考えればよい。だから教科書は薄い方がよい」という反応が見られた。そして、「生の判例をたくさん読むことが重要である」ともされた。


しかし、具体的事実を基に論証する為にも、「考える手掛かり」は必要なのである。闇雲にたくさんの判例を読むだけでは、実力は身につかない。


「厚い本は難しい」というのは、間違いである。薄くて行間を読まなければいけない書は、むしろ難解である。わかりやすく解説すると、情報量は必然的に増える(前田雅英『刑法総論(第5版)』はしがき)



これらの前田先生の指摘にあった基本書というと、

高橋則夫先生の刑法総論、刑法各論になってくると思います。


刑法各論のはしがきにある震災についての

高橋則夫先生の追記も先生のお人柄をあらわしていると思います。



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