すっかり私たちの生活に定着したスマートフォンや携帯電話ですが、書籍『毒になるテクノロジー』は、
その依存性に警鐘を鳴らします。たとえば、次のような光景を見かけたことはないでしょうか。
・レストランや自宅で食事をする際、どのテーブルの上にも携帯電話がのっている
・映画館で上映後、場内が明るくなる前から観客が一斉に携帯電話を取り出す
・電車に乗ってまわりを見渡すと、誰もが携帯電話の画面を覗き込んでいる
もしも、携帯電話やスマートフォンが普及する前の人たちがこの光景を見たら、現代人を皆、異常だと
思うかもしれません。こんな実験結果があります。
ある2つのキャンパスで、一方は1週間SNSの禁止をし、もう一方は1週間一切のテクノロジー(携帯やパ
ソコン、テレビなど)の使用を禁止したそうです。どちらの実験でも、禁止の指示を守れた学生はごくわず
かで、SNSを使わないことに成功した学生は、たった10%~15%だったそうです。ある学生の感想がその体
験をよく表しています。
「大切な情報を逃しているかもしれないと思って、不安でたまらなかった」
同書によれば、テクノロジーに依存しすぎた人には、精神病に似た兆候が見られると言います。
・フェイスブックで嫌味をいわれた若者が、侮辱的表現でやり返す。相手も応酬し、互いを激しく罵倒する
やりとりが何日も続く
・会社員の夫が、夕食の席でも携帯電話から目を離さず、妻や子どもから話しかけられても反応しない
・試験勉強をしている学生が、無自覚のうちに様々な対象に気を散らせている。教科書を数秒読んだかと
思えば、フェイスブックを覗き、チャットをし、iPodの音楽を聞き、テレビのリアリティ番組に見入る。これらの動作を延々と繰り返す
このようなテクノロジーやメディアの過剰な利用によって生じる、様々な精神疾患の症状や兆候を]
「iDisorder(iと障害を意味するdisorderをつなげた造語)」と呼びます。ただ、メールやインターネットが日
常に当たり前に浸透した今、テクノロジーの使用を止めるのは現実的ではありません。最善策は、
バランスよく、テクノロジーの適度な使用をすること。
たとえば、「テクノロジー休憩」。仕事に15分集中したら、1分間はメールやSNSをチェックすることで
集中力を高める方法や、自然に触れる、簡単な運動をするなどしてストレスを減らすことで、情報処理能
力を高めることを推奨しています。
現代人のほぼ全てが対象といわれる「テクノロジー中毒」。その処方箋として、読んでみてはいかがでしょうか?
『毒になるテクノロジー iDisorder』
著者:ラリー D.ローゼン,ナンシー チーバー,マーク キャリアー
出版社:東洋経済新報社