まいど
競泳100メートル背
金メダル秋山「誓いのピアス」輝く
懸命に伸ばした左腕が、後続をわずかに抑え、最初にゴールに届いた。
ロンドン・パラリンピック第5日の2日、100メートル背泳ぎを制した全盲の秋山に頭上のスタッフから、
悲願を遂げたことが告げられる。水しぶきを上げながら、3度、右手を突き上げた。
全盲の選手が真っすぐ泳ぐのは難しい。折り返しまでぶれず、先頭をキープしたが残り25メートル付近
から蛇行し始め、左腕がコースロープに当たる場面も。後続に差を詰められたが「気持ちが折れるわけに
はいかない」と、腕をかき続け、大会記録を塗り替えた。
04年アテネ大会で銀メダルをつかんだ、この種目。前回北京大会では、全盲のクラスは、競技者数の
減少を理由に実施が見送られた。競技をやめることも考えていた10年秋。ロンドンでの種目復活が決ま
ると、遠藤基コーチ(36)との練習にも熱が入り、長く記録が伸び悩んでいたのが一転、今年7月のジャ
パンパラ大会で、世界新記録を打ち出した。
「やる時はやる、と思っていた」。客席から秋山の家族とともに優勝の瞬間を見届けた遠藤コーチが言っ
た。明大には一浪して入学したが、浪人の間は、大好きな水泳も封印。地元神奈川の奉仕団体が点訳し
てくれた参考書の山と戦った。
表彰式。耳たぶには、ハート形の金のピアスがさがっていた。姉の百合子さん(28)が「金メダルを」と渡
英直前にプレゼントしてくれた。「つけて泳ごうかと思ったけど、なくしちゃうといけないから、優勝したら、つ
けようと……」。家族のぬくもりを感じさせるピアスは、数々の障害を乗り越えて、表彰台の頂点に立った2
4歳の秋山の下でキラキラと輝いていた
金メダル獲得おめでとう