薄情林之 今更いふも愚痴ながら落目になるは情(なさけ)ないもの、形見に貰(もら)うた二万円の金が手許にある内は、他人ばかりか現在の伯父伯母までがやれこれと、無理に女房の押掛け相談、金がなければ直(すぐ)に断り僅かな事の無心さへ聞かぬ其の上伯父甥の縁さへ切ると愛想づかし、斯(か)うも人が薄情になるのも元は皆金づく、利口になるも馬鹿になるも、まことに金の世の中ぢやなあ。 (黙阿弥、『人間万事金世中』) まったく人の気持ち、カネ次第。 薄情な世の中を誰しも生きていかにゃならん。