「左様(さう)サ。貧乏するのも気楽でよからふと、茶にしてかヽつて見たが、朝夕(あさばん)の㕝(こと)には余(よつ)ぽど弱つたヨ。何の造作もなからふと思ふお飯(まんま)が、一度でも味(うま)く出来たことはなし、お菜(かづ)といへば何を煮るにも手重しか、寔(まこと)に泣出しそふな心持ちだツけ」(為永春水、『春色英対暖語』)
食事の準備は男は見くびっているかもしれないが、いざやってみるとなかなかたいへん。
ここで「手重(ておも)し」とは「容易じゃあない」という意味。まったく難しく、泣き出しそうな体験をしている御仁もいらっしゃるかも。