・・・引用・・・
三次 「お気の毒でござりますが、五両お借り申たふござります。」
白蓮 「何ンにするのだ。」
三次 「ヘイ、此間化(ばか)されました狐の穴を埋るのでござります。」
さよ 「エヽ、気味の悪ひ。お前狐に化され被成(なさん)したか。」
扁福 「どんな狐だか知らないが、穴を埋るに五両とは。」
四角 「よっ程(ぽど)大きな穴と見へる。」
(黙阿弥、『小袖曾我薊色縫』)
・・・引用終わり・・・
世の中はカネを余らしたお人が多いのか、うまい投資口にむらがり、投資であって投機でない、投機であって博打のような体裁悪いものでもない、とお思いのよう。しかし、見通しもない闇雲の方もお見受けし、さすれば博打と五十歩百歩。
ここで狐の穴とは、狐が博打を指し、その穴だから博打のソンを言う。損失を出せば穴は埋めねばならない。貸してくれと頼る先があればよいが、それでも返さぬわけにはいかぬ。よっぽどの大穴、開けて苦しむ人もみる。