初めて見た深イィ話で、初めて聞いた原田真二という名前。
初めて聴いた『タイムトラベル』。
かっこよすぎでバビった。
「女の子一人幸せに出来ないで、何が政治家よ。」
確かにそうだった。
『国民の幸せ』や『世界に誇れる日本』のことばかりを考えて、
お前には何ひとつしてきてやれなかった。
民政については詳しくなったかもしれない。
外交についての経験は積めたかもしれない。
それに引き換え、
俺はお前のことは何も分かってはいなかった。
誕生日はいつだったろう。
そもそも付き合いだしたのはいつだったろう。
もうどれくらいこんな関係を続けてきたのだろう。
むしろ、よく今まで付き合ってきてくれたもんだ。
自分を笑うしかなくなって、タバコに火をつけた。
こうしてる間も、何かを言って欲しそうな顔をして
お前はまだ俺の弁明を待っている。
使い古されたような言い訳を口から吐き出そうとした時、
先にお前は微笑みながらつぶやいた。
「私を幸せにできなかった分、日本を幸せな国にするように。」
そう言うやいなや、
伝票を持ってアイツは席を立っていった。
こんな俺を愛してくれた女だ。
捨て台詞まで、本当にいい女でいてくれた。
さっきの一言で、
俺は本当にアイツを愛していた事、
それゆえにないがしろにしてしまった事、
全てに合点がいった。
目を落とすと、
わずかに残ったコーヒーが、
カップの中で波打っている。
俺は泣いているんだな。
もういなくなったアイツではなく、
何も足す必要の無いコーヒーカップに、
一滴の言葉が垂れた。
「ばかやろう」




