「プラチナ通りで逢いましょう」 のスピンオフストーリーとして、
「Coral ~B087 The Wisdom of Love~」がスタートしました。
和久の物語です。
「プラチナ通りで逢いましょう」 とはまた違う和久の一面を描いています。
併せて、お楽しみ頂ければ嬉しいです。
STEP AGAIN 「Coral ~B087 The Wisdom of Love~」
あやめ
今年も、この季節がやってきた。
顔を撫でる風は清々しく、柔らかい光の下で青葉が揺れる5月。
康介と出逢った季節。
そして、康介が逝ってしまった季節だ。
あれから5年が過ぎ、私たちは30歳になった。
就職の面接の時に言った、子供を育てる親のための雑誌を作りたいという夢は、
今年、やっと実現した。
子供と親が一緒に遊びにいける場所の情報や、シンポジウム、
親子で参加できるキャンプやハイキング、料理教室の企画、
そして、不登校や引きこもりに対する取り組みなどを、
毎月、様々な形でアプローチした雑誌だ。
「育児雑誌にはしたくない」 という私の希望が通って、
働き盛りの父親や、仕事をもつ母親が会社の帰りに読めるような、
そんな情報誌になった。
私は、この創刊のために、必死に仕事をした。
幼少期の親との関係性が、その子の人格を作る・・・、
それは康介が取り組み続けた問題だった。
私は心理学の世界からは遠ざかってしまったけれど、
いま、こうして、全く違う形で、その問題に関わっている。
康介が私に渡してくれたバトンだ。
「茉莉ちゃん、頼んだよ」 そんな康介の声が聞こえるようだった。
毎年、5月に、私は康介の墓を訪れる。
小さな花と、缶ビール、そしてハイライトを持って。
康介の墓は、いつもきれいにされていて、
康介がちゃんと愛されていたことを、改めて実感するのだ。
だから言う。
「康ちゃん。 康ちゃんには家族がいるよ。 こんなにみんなに大事にされて」
エヘヘと照れ笑いする康介が、そこにいる。
「康ちゃん、今になってわかったの」
そうなんだよ。 オレって、大事にされてたんだよね。
出逢った頃、康介がしてくれた 「大熊座」 の話を思い出す。
今、康介は天に昇り、お母さん星の側で輝いているのだろう。
「いいね。 今は側に本当のお母さんがいて、
ハイライトの煙が、空へ立ち昇る。
康介のいる青い空へ。
プラチナ通りは、今年もまた青葉を揺らしている。
この街は、まったく変わらない。
いつもゆったりした時間と、優しい空気で満ちている。
江口君は会社を辞め、新潟の実家に帰って、農業をやっている。
ユリは今や、福岡放送の看板アナウンサーで、
咲乃は、就職した事務所の税理士先生と結婚して、去年子供を産んだ。
和久は帰国してしばらくしてから、知り合いとIT企業を立ち上げて、
今や、会社の取締役だ。
雑誌にも、時々取り上げられているのを見かける。
浅尾さんは・・・、合コンで知り合った女の子とできちゃった結婚。
色んなことがあった。
この5年間で、すっかり私の周囲は変わってしまったのに、
プラチナ通りはいつものまま、私を迎えてくれる。
そしてここには、25歳のまま変わらない康介がいる。
ねぇ、康ちゃん。
生まれ変わったら、私たちまた、巡り逢えるよね。
今度はね。 私、ちゃんと受け止めるから。 もう、逃げたりしないから。
だから、ここで待っていてよ。
いつものBLUE POINTで。 アイスティを飲みながら。
またいつか、プラチナ通りで逢いましょう。
~ END ~