ある日のことでございます

お釈迦さまはふと、釣りをなさろうと思い立ちました

そこは極楽、辺りには池があり、一面に蓮の花が咲いておりました

 

お釈迦さまのことですから、魚を釣り上げて食べようなどとはお考えにはなりません

蓮の池の中から、地獄の苦しみに喘ぐ罪人を一人、極楽に釣り上げてやろうと思い立ったのでございます

蓮の池の底には地獄が見えておりました

 

ちょうどカンダタと言う男が地獄で苦しんでおりました

大変な殺人鬼でございましたが、お釈迦さまは有余依涅槃のころアングリマーラと言う殺人鬼を改心させ仏弟子にして解脱させた経験がございます

生きている人間であれば、七科三十七道品または三十七菩提分法という7コース37のカリキュラムでお釈迦さまはお救いするのです

 

そこでまず蜘蛛に糸を出させ、カンダタに見えるところに垂らしました

カンダタはすぐに気付いて、極楽めがけて登り始めました

でも、お釈迦さまは天眼をお持ちですから、カンダタがこの蜘蛛の糸は自分が見付けたのだから他の者は離れろと叫び、糸が切れて地獄に真っ逆さまと言う未来が見えておりました

 

地獄で苦しむ罪人もそれぞれ業を背負っていて、業が深い罪人には蜘蛛の糸は見えません

カンダタは地獄での責め苦が長く、少し業が薄れてきておりました

地獄で喘ぐ罪人で、ある女性がいました

 

極楽へと登るカンダタを観て大声で叫びました

「あたしも連れて行ってくれーっ」

カンダタにはその声に聞き覚えがありました

 

優しかった母の声に聞こえたのです

カンダタは一度地獄に戻り、その女を背負って登ります

その女はしわくちゃの老婆でした

 

しかも口が悪く、カンダタに背負われながらいろいろ悪態をつきました

それでもカンダタは母親と思い込み、悪口に耐えてあと少しで極楽と言うところまで来ました

その頃老婆の言う言葉は少し変わってきていました

 

カンダタを励ます言葉になっていました

そして声もいつの間にか若い女性の声になっていました

そしてカンダタにこう言いました

 

「ナミアムダブツを一心にお唱えしなさい

阿弥陀如来に極楽に往生させて欲しいと願いつつお唱えしない」と

カンダタは疲れて力尽きそうでしたが「なんまんだ」とお唱えしながら蜘蛛の糸を登りました

 

でも、あともう少しと言うところで力尽きました

蜘蛛の糸から手を放してしまいました

でもどうしたことでしょう

 

カンダタは地獄へ真っ逆さまとはなりませんでした

背負われていた老婆はそれは美しい女性となりカンダタのそばに立っていました

女性は明らかに観世音菩薩でした

 

七色に輝く雲に乗っていました

カンダタが足元を見ると自分も同じような雲に乗っていました

頭上にはお釈迦さまと共に阿弥陀さまがお迎えに来ていました

 

カンダタは合掌してさらに必死に「南無阿弥陀仏」と丁寧にお唱えしました

すると雲はさらに浮かんで、完全に極楽に入っていました

観世音菩薩は一つの蓮の花をお示しになりました

 

カンダタはそこに座を占めました

ふくよかな香りが漂い、音楽が流れていました

カンダタの業が完全に清められ、極楽往生した瞬間でした