茂木  よく『工場の効率を上げる」というと、チャップリンの映画『モダン・タイムス』のように、人間が機械のスピードに合わせて猛烈に働くというイメージがあります。ところがトヨタの工場を見て驚くのは、働いている人がじつに楽しそうなことです。人が機械に合わせるのではなく、むしろ工場のほうが、人の創意工夫やひらめきをうまく引き出すように設計されている。


中略


山田 私がトヨタに通っていたころ、まだご健在だった大野さんが「製品が流れている際の加工時間と停滞時間の比率を調べると、加工を一として、停滞が三00ある」とおっしゃった。私はそれを聞き、驚いて自分のコンサルティングしてきた会社を調べてみると、なんと一対五000も停滞がありました。次に日本の赤字企業を調べてみると、悪い会社ほど停滞の比率が増えている。


 それを発見して、私は気持ちが楽になりました。つまり、「加工を増やすことを考えるのではなく、停滞を減らせばよいのだ」と。カイゼンというのは、人間の労働をベルトコンベアに合わせてスピードを無理に速くするという話ではなかったのです。


茂木 割合からすれば、一対三00のうち三00のほうが、改良の余地がある。〈


    自分で考える社員のつくり方 ムダとりが生み出す「やる気革命」  山田日登志  PHP新書

                            P12~14の中から 茂木健一郎氏との対談の部分



 昔、鎌田慧さんの「自動車絶望工場」というのを読んだことがあるのだが、これはルポライターの著者が季節工としてトヨタに入りその体験をレポートしたものである。あれはかなり売れたのだろう。いまだにトヨタのイメージが悪い人が多い。(文庫本では本多勝一さんが解説ですからw)

「痛くない注射針」の岡野工業の岡野雅行さんの本ではトヨタはまた違った顔を見せてくれる。岡野さんはトヨタとはいわないがプリウスの重要な部品に金型が採用されているのは間違いない。共同で開発してもミスを記録し皆で共有する姿勢は岡野さんも絶賛している。


 この山田日登志さんという方はNHKで三洋電機の鳥取工場の工場診断とカイゼンの番組で見て興味を持ち何冊か著書も読んだ。