掛け算順序の問題でにわかにTwitter上に話題になっておりますが、その議論のなかで立式において掛け算順序が逆であると「全国学力テストなどでは当然のように×になります」という言説がありました。

しかし、そのソースが示されていないようで、真偽のほどが明らかでなく、ソースが示される様子も内容でした。

 

とのことで、手っ取り早い方法として所管省庁である文科省に見解を問い合わせてみましたところ、本当に素早くご回答いただけましたので紹介します。
問い合わせ結果は後掲していますが、まとめますと以下の通り、「全国学力テストなどでは当然のように×になります」という言説のソースはないものと私は判断しました。(ただし、乗数、被乗数という概念自体はある、もしくはあったようです。)
 
回答として国立教育政策研究所の教育課程研究センターでの「全国学力・学習状況調査」のリンクを教えていただきました。(恥ずかしながら私はこのような資料が公開されていることをしりませんでした。)
そのうえで順序に関する一般的な採点基準はないが、設問の性質により、正しい順序で立式する解答を求めることを否定はしていないとの回答をいただきました。
 
私はとりあえず直近3年度分の小学算数B関係の「解説資料」及び「報告書」に目を通してみましたが、非常に精緻(私の印象)に正答の解答累計がまとめられており、学力テストでの採点基準として参考になりました。
 
以下3年分の「解説資料」及び「報告書」の内容から関連していそうなところに関して私が確認したところを述べさせていただきます。
尚ここにおいて
 
正答(◎)…解答として求める条件を全て満たしている正答
正答(○)…問題の趣旨に即し必要な条件を満たしている正答
 
で、どちらも正答の解答類型に分類されるものです。
 
また学力てすとにおける「採点」とは、解答を解答類型に分類することを意味しており、「減点」はなく、「正答に分類されるか否か」であるということとのことです。
 
<平成28年度「解説資料」及び「報告書」>
①問1(1)の長方形の面積の問題について掛け算準序はどちらの順番でも正答(◎)の類型とされている。
②問1(2)の長方形の面積増減を記述させる問題について、増減する面積の式(乗算)あることが正答(◎)の条件とされており、例示として一つの順序のみ示されているが、明確に掛け算順序を条件とした正答条件の記載はない。また増減する面積の式の記述がない場合でも正答(○)の条件をみたしているとされている。
③問2(1)および(2)も乗算の立式の問題が出題されているが解答累計の注意書きにて「乗算と被乗数を入れ変えた式も許容する」と記載されている。
 
<平成29年度「解説資料」及び「報告書」>
①問2(1)および問5(2)で正答条件が乗算で求まる値を求める式や言葉があることとされ、解答例として一順序の立式例が記述されているが、立式順については言及されていない。
 
<平成30年度「解説資料」及び「報告書」>
①問2(2)および問5(1)では正答条件が乗算で求まる値を求める式や言葉があることとされ、解答例として一順序の立式例が記述されているが、立式順については言及されていない。

②問4(1)では出題の文脈で示されている掛け算順序ではないと正答(◎)の類型とはされないが順序が入れ替わっていても正答(○)の類型として扱われている。

 
以上より、報告書が公表された直近3年分の全国学力テストにおいては掛け算順序を入れ替えることにより解答類型に照らし合わせて正答に分類されるないという事実は有りませんでした。
平成28年度の報告書に掛け算順序を問わないという注意書きにおいて「乗算」、「被乗数」という用語が記載されていたのでそれらの概念は少なくともその平成28年度までは有ったものと思われます。
(追記訂正)平成30年度の問4(1)にの設問に解説にも「乗算」、「被乗数」用語があり同様の概念があるのを確認いたしましたので訂正いたします。
 
以上、回答いただいた結果をもとの私の判断とさせていただきました。
 
今回は私が想定していたよりも非常に速やかに回答をいただきまして、年末年始の忙しい時期にご対応いただいた、国立教育政策研究所のご担当者様には非常に感謝しております。
 

<問い合わせ結果>

1.問合せ先

 

 文部科学省HP 御意見・お問合せ窓口案内

 

 URL:https://www.mext.go.jp/mail/

 

 「全国的な学力調査に関すること」として問い合わせました。

 

2.問い合わせ日

 

 2019年12月30日

 

3.問い合わせ内容

 

 以下の通り問い合わせました。

 

https://twitter.com/A_Utsu_tw/status/1211356822981857280?s=20  

 

4.回答いただいた日

 

 2020年1月9日

 

5.回答いただいた内容
 
 以下引用の通り、国立教育政策研究所から回答いただきました。
 (個人名や連絡先は上記の通り窓口があること等より伏せさせていただきます)

        

国立教育政策研究所
学力調査課の   と申します。

お問い合わせいただきありがとうございました。
標題の件につきまして、ご回答申し上げます。

(1)
「採点方針に対する見解」とありましたが、
公表している「解説資料」や「報告書」を
ご参照いただければ幸いです。
全国学力・学習状況調査の調査問題における設問ごとの
正答および解答類型について記載されております。

https://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

(2)
かけ算の立式におきまして、順序に関する一般的な採点基準はありませんが、
このことは、設問の性質により、正しい順序で立式する解答を求めることを
否定するものではありません。

(3)
なお、本調査における採点とは、児童生徒一人一人の解答をあらかじめ設定した
それぞれの解答類型に分類することを意味しており、「減点」はなく、
「正答に分類されるか否か」ということになります。

以上、よろしくお願いいたします。

----------------------------------------------

 国立教育政策研究所
 教育課程研究センター 研究開発部 学力調査課

 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3−2−2
  Tel                                                
  Fax                         
  Mail                                 

----------------------------------------------


■件名
小学生向け算数の学力テストの掛け算順序に関する採点方針確認の件

■内容
頭書の件、現在ではSNS(Twitter)上で現在、算数の掛け算の文章問題の回答における立式において、出題者が想定した掛け算順序でないと、立式部分で減点になる(当然最終回答は正解)というケースがあり、教育関係者や保護者、数学、物理の専門家など(正確にどのような立場の方かの実態はSNSの特性上正確に把握しているわけではないので推測ですが。)の間で議論されてます。
その議論の中で全国学力テストにおいても、立式部分で想定とは逆のパターンだと減点になる旨の主張がなされていました。しかし、そこに関して明確に採点方針の根拠となるものが示されてない状況です。
本問題は私としましては、回答児童の勉強会への動機付けや、中高の数学教育においても学習してや理解の妨げになりかねない問題だと考えてます。
そこで、貴省担当部門の本問題に対する採点方針に対するご見解を伺わせていただきたくご質問させていただいた次第です。
年末年始のお忙しいところ恐縮ですがよろしくご回答いただければ幸いです。
なお、回答いただけた場合SNS上で頂いた回答を紹介するつもりです。