ボクは、しがない、ぬいぐるみ。だけど。
教室に入って来る人たちが纏っている「ありがとう」が。
ボクに気持ちを与えてくれた。
ありがとう。ボクの気持ちを育ててくれて。
ありがとう。ボク、もうちょっと、がんばれる。
なにをどう、がんばるのか知らない。けれど。
がんばる、ボク。
もうすこし、ボクはボクで居られそうだ。
それから、ボクは。
教室に居る人たちの、「ありがとう」以外の気持ちも。
見分けることができるようになった。
ふよふよ浮かぶ、人たちの、気持ちを見つめることが。
ボクの日課に、なった。
<了>