「あ、いや、なんでも.....」

慌てる俺を見て一条先輩の綺麗な顔が少し歪んだと思ったら、とうとう堪えきれず吹き出した。

鳴海くんって、なんて涙を浮かべながら話し始める先輩はさっきまでとは違って太陽のようだ。

「鳴海くんってほんっとにわかんない。だって普段は元気に動くまだまだちっちゃい子って感じなのにさ、休憩になるといつもここにいるよね。ここにいる鳴海くんは涼んでるというより黄昏てるみたい、遠く見つめちゃってさ。ねえ、いつも何考えてんの?」

まさか先輩に見とれてますなんて言えないから、ぼーっとしてるだけですよって応えておく。





にしても驚いた。

まさか俺と一条先輩はお互いに思ってることが一緒ってわけだ。

先輩の方こそ何を考えているんですか、そう聞こうと思ったけどやめた。

答えを知るのが怖かった。

なんだかわからないミステリアスな雰囲気の美しい先輩をみているのが好きだけれど、今日はまさか二人きりで話せるとはラッキーだった。

まあ、人と話す先輩は明るくてあの雰囲気とは違うけれど、そんな先輩も好きなんだよな。




ブザーの音が鳴り響く。

部活の再開の合図だ。

「よしっ、行くか!鳴海くんちょっと練習の相手してよ。」

うん、やっぱり今日はラッキーだ。