プリンスが亡くなった。

出張の朝、パソコンをたたむ時にYahooのホーム画面に戻ると。

「プリンスさん死去」とある。

は?

出張先に遅刻するのは嫌なので、そそくさと事実をきちんと理解せぬまま準備している。
そして、遠征先の特急電車の中でこの決定的な別れを受け止めざるを得なくなる。

もういろいろと続きすぎてしまっているので、もはや感情がわかない。

ただただ放心するしかなかった。

好きな曲やアルバムをランク付けするっていうのはいつもあれやこれやと迷って結局未完成のまま終わってしまうのだろうが。

自分の場合、尊敬するアーティストを3人挙げるとしたらこれは全く迷わない。
これからも変わることはないだろう。

・ウエイン・ハッセイ(The Sisters Of Mercy~The Mission)
・レミー・キルミスター(Hawkwind~Motorhead)
そしてプリンスである。

3人とも心の底から尊敬し、敬愛して、やまない。

ただプリンスが亡くなってしまったことで、生存しているのは引退状態にあるウエイン・ハッセイのみであり、これから「もう絶対に楽しいとわかってる新作」を聴けなくなる。

これは非常にさびしいことだ。

でも、彼らには代用品なんてあるわけもない。
探すこともない。

これからも大好きな音楽は聴いていくだろうし、それもまた変わらないのだが。
彼らを超える人はもう出てこないのがわかってる。


本当にいろいろなものを残してくれたから。
それを大事に聴いて生きていくだけでも十分幸せだ。

ましてやプリンスは人生で初めて見に行ったライブでもある。

一生の宝物だ。

そして、尊敬するレミーとプリンスはこの半年で2人とも亡くなってしまったのだが。

ジミ・ヘンドリックスという存在で微妙につながっている。


レミーはジミヘンのローディーだったし、プリンスもジミヘンの大ファンだった。

プリンスの一大ブレイク作「Purple Rain」はジミヘンの「Purple Haze」をリスペクトしてタイトルにされたという話は有名であるし。

プリンスはそのあとグラミーを何度も受賞するなど異次元に旅立つのだが、いまいちおもしろくないレミーにとっては。
スカーフを巻いてストラトキャスターのギターをかき鳴らすプリンスのスタイルを

「あれはジミヘンのコピーだ」

と少しやさぐれつつディスるのである(笑)。


天国でも2人の接点があまりあるとは思えないのだが。

プリンスの凄さというのはいろいろ受賞したという実績ではない。


天才とはどういう人っていうのを初めて教えてくれたのがプリンスなのである。



たぶん、彼の作品の中で一番聴き込んだのは「1999」だと思うのだが。

デビューからBATMANまでの15年の彼の足跡というのは奇跡のほかない。

史上最強のとんでもない快進撃である。

「ヒットを作成する公式」を作ってそこを核にどんどんヒット作を出すというやり方は一切しない。いつもいつも何を出されるかわからないのである。

とにかくファンキーな「1999」
ロックテイストでポピュラーな「Purple Rain」
とにかく自由な解放感が充満する「Around The World In A Day」
一転、密室感が強まりソウルフルな「Parade」

とにかく、達成感というものが彼にはないんじゃないかっていうくらい。

すげえっていう作品を作り上げてもとんでもない違う作品がどんどん来る。

天才というのはすごい仕事をしても、そこは通過点に過ぎない無尽蔵の才能の持ち主なのだということを学んだ。

そして、天才の作品には捨て曲がない。

あっという間に聴き倒してしまう。


今は1曲単位の時代。

iTunesやYou Tubeしかり。

プリンスはこの時代の流れをグラミーの授賞式で彼独特のウイットでこうコメントする。


みなさん。「アルバム」って覚えていますか?
「アルバム」って大事なものなのです。



アーティストは曲単位ではなくてアルバム単位で世界観を感じ取ってほしいものだという皮肉なのだろう。

「プリンスは死んだ」と断言してどう読んだらいいかわからないシンボルマークで活動してみたり。
あっという間にアルバムを1枚完成させて発売まで決定していたのに「邪悪に感じた」という理由でお蔵入りにさせてしまったCDがあったり「Black Album(のちに発売)」。

行動が予測不能で、ワクワクさせてもらった。


彼の人生、あまりにハイペースすぎて、あまりに才能がありすぎて、燃料が枯渇してしまったのかな・・・。57歳だもんな。若いよなー。

プリンスありがとう。

安らかに。




最後に何かYouTubeから持ってこようと思ったのだが、殿下のYou Tubeへの理解のなさはすさまじくPVは1曲しかなかった。
唯一彼自身が容認していると思われる、ブレイク前のライブ画像でお楽しみください。

CDを雑誌に付けて無料で配ってみたり、You tubeでは曲を拾わせてくれなかったり。
天国でほくそえんでそうな彼のチャーミングな表情が思い浮かびます。