しばらくサボっていたブック・レビューを再開します。

10月から現在まで3ヶ月間で読んだ本は、あまり多くはありません。

・・・が、興味深い本が多かったです。

 

・これからの建築|スケッチをしながら考えた/光嶋裕介 

・ポートランド|世界で一番住みたい街をつくる/山崎満広 

・寓話集/スミルハン・ラディック 

・竹中工務店 住まいの空間 

・HOUSE VISION 2|2016 TOKYO EXHIBITION/原研哉+HOUSE VISION実行委員会 

・「サル化」する人間社会/山極寿一

・数学する身体/森田真生 

・もしも建物が話せたら/ヴィム・ヴェンダース|製作総指揮

 

光嶋裕介さんの新著は、魅力的なスケッチとともに彼の建築に対する思いが詰められています。

このところ毎年お願いしている特別講義を聞いていても感じることですが、建築家として「熱い」だけではなくて、教育者としても「熱い」!

そんな「熱い」思いが込められている必読書です。

学生にとっても、建築を志す人にとっても・・・

 

「『サル化』する人間社会」と「数学する身体」は、その光嶋裕介さんが、今年の特別講義の最後に紹介してくださった参考図書3冊のうちの2冊です。もう1冊は「ヘンリー・ソロー 野生の学舎」(今福龍太 著)で、これは現在、読み進めています。

この2冊は、たぶん彼の推薦がなければ手にも取らなかっただろう、僕の現在の興味の範囲外にあった本です。彼の推薦ということでちょっと気になって読んでみました。

どちらも興味深い、読み始めたらやめられなくなる本でした。

 

特別講義をお願いした先生方には、毎回、推薦図書を何冊か紹介していただいていますが、そのリストがバラエティに富んでいて、僕の予想をはるかに超えて魅力的な本が集まっています。

もちろん、講義の方も魅力的ですが、このブック・リストの誘惑もあって、特別講義はやめられません。

 

本ではありませんが、最後に掲げた「もしも建物が話せたら」は、しばらく前に一般公開された映画のDVD版です。

一般公開された時にも見に行きましたが、、ヴィム・ヴェンダースが製作総指揮をして、6つの建物を6人の監督がそれぞれ担当して、その建物を映像化したものです。

選ばれた6つの建物も秀逸ですが、それぞれの監督のその建物を見る視点が参考になります。

建築をどう見るか・・・どう読み取るか、建築に興味がある人、必見!

 

 

ゼミ合宿ではじまった9月は、やっと取ることができた個人的な夏休みで海外逃亡をして、すこしリフレッシュして、後期に突入しました。そんなこんなで、あまり本を読んでいません。

 

・文字を作る仕事/鳥海修 

・CONCEPTUAL 日本建築/黒沢隆 

・カタチから考える住宅発想法|「空間づくり」をはじめるための思考のレッスン/大塚篤 

・TOKYO インテリアツアー/浅子佳英・安藤僚子

 

田中一光や平野甲賀がデザインした文字の魅力とは若干異なる意味を持つフォントのデザインという仕事について書かれた本で、空気のような、水のような自然体をデザインするという感じがなんとも言えず良い感じです。ことさら主張するわけではなく、当たり前のようにそこにあることが望まれるという、なかなかその立ち位置に収まるのが大変そうなデザインの仕事である。

たとえば、横書きに適したフォント・・・をつくる、ということ。

読んでいて、ワクワクしてくる。

 

黒沢隆は、「都市住宅」で個室群住居を発表していた頃からちょっと憧れていた建築家です。その黒沢が日本建築を語っている本である。作品と同じく、ディテールに拘って、理論化は怠らない。だから、面白い。

 

夏休み、とは言っても理事会集中討議でのキャンパスの将来計画プレゼンから始まって、田野倉に盆踊りに行ったり、日本建築学会の大会で福岡に行ったり、日本家政学会で講演をしたりして、あまり休んだという気にならないで、あっという間に月末のゼミ合宿に突入してしまいました。

そんななか読んだ本は・・・

 

・これからの建築士|職能を広げる17の取り組み/倉方俊輔・吉良森子・中村勉 編著

・Elephants, Whales & Kangaroos/Tomi Ungerer

・The Line, Types of Architecture, Shores of the Mediterranean, Cities of Italy/Saul Steinberg

・絵本の絵を読み解く/杉浦範茂

・住宅設計詳細図集/手嶋保

・日土小学校の保存と再生/八幡浜市教育委員会  監修、「日土小学校の保存と再生」編纂委員会 編

・メディアとしてのコンクリート/エイドリアン・フォーティー

・拝啓 市長さま、こんな図書館をつくりましょう/アントネッラ・アンニョリ

・素手のふるまい|アートがさぐる<未知の社会性>/鷲田清一

 

まんまとUtrechtの術中にはまってしまったTomi UngererとSaul Steinbergの2冊の絵本というかアートというか・・・どちらもシンプルな構成ですが、見ていて飽きません。見るたびに新たなストーリーが生まれて来るような楽しい作品です。

やっぱり、Tomi UngererやSaul Steinbergはいいな。

それとともに、Utrechtはいいな。

 

イタリアの図書館アドバイザー A. アンニョリの「知の広場」に続く2冊目。図書館を拠点として起きる/起こすコミュニティ活動について、この本では、日本の事例等もとりあげて、綴られている。

その中でとりあげられている言葉・・・

 

空間は、ある集合的瞬間にやどる魔法を表現し、壁や仕切りや天井の組み合わせとして在るのではなく、ほとんどつねに空気や光や音のような触れることのできない要素によってつくられるものである。/レンゾ・ピアノ

 

図書館がセルフサービスの棚から成る文化のスーパーマーケットであってはならない。たとえ音楽、写真、電子メディアといった資料を提供するにしても、図書館は他とは違う、黙考できる場所であり続けなければならない。つまり、自分の内に籠ることを可能にさせる場所でなければならないのである。/ポール・シュメトフ

 

もともと3冊の別々の文章を日本向けにまとめて1冊にしたものなので、本としては、ちょっとまとまりがありません。

でも、内容は地域活動について参考になるものです。

 

朝日新聞朝刊で「折々の記」を連載している鷲田清一のアートと社会性に関する文章です。いくつかのアート/アーティストの試みを語りながらその社会性について語っています。文章がうまいので、サラッと読めてしまいますが、内容を理解するのはちょっとハードルが高い。でも、面白い。