◆「日本人武道家と闘ったのは迷蹤芸(秘宗拳)の霍元甲((かく・げんこう、フォ・ユェンジャア)だし、外国人ボクサーと闘ったのは、“神拳大龍”とあだ名された華拳の蔡龍雲(さい・りゅううん)です。しかも、蔡龍雲は、この時、14歳でロシア人の巨漢ボクサーを倒してます・・・。」

 20日である。
 17日(日)は、柏市での妻の甥の結婚式と披露宴に出席させていただいた。妻はもちろん、子供たちも一緒である。
 それも、朝9時ころから約1時間、セント・マーガレット・ウエディングという教会での式に出席させていただいたのだが、披露宴はというと、「ザ・クレストホテル柏」で12時から3時過ぎまでということで、ほとんど一日を要していた。
 数百人規模の盛大なもので、身内の思わぬかくし芸にも驚かされた。

 18日は、NYから来日中の妻の姉Aさんと、その娘のLさんが遊びに来たので、数年ぶりに半日を過ごさせていただいた。ご主人は今回仕事で来れなかったとのこと。
 私の娘は、英会話の勉強にもなると、積極的にLさんと話をしていた。

 19日は、福岡から上京された出田貴宏氏から、私の体のことをお気遣い頂きながら、
「できることなら、ぜひお会いしたい」
 とのお願いをお受けして、お会いさせて頂いた。
 たまたま、この日の夜は、妻の実家の法事が阿佐ヶ谷で予定されていたので、早めに出て駅前でお会いし、近くの喫茶店で約2時間余、お話しさせて頂いたのである。
 
 さて、以下は、本ブログでも取り上げさせていただいた映画、イップ・マンに関しての武術研究家の長野峻也先生のブログからの大変興味深い記事である。
 もちろん、ブルース・リーのことにも触れてある。
 それにしても、長野先生の話題の豊富さには驚かされる。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////

★『イップマン葉問』


 ドニー・イェンが主演した、ブルース・リーの師匠として世界的にも有名な、香港の詠春拳・宗師イップマン(葉問)を描いた作品が、CSで放送中です。
 陽明学の林田先生の御要望で、今回は、このイップマンが伝えた詠春拳について書いてみましょう。

 詠春拳は、日本で教える道場は極めて少ないのですが、欧米では太極拳に次いで広く普及していることで知られています。
 これは、言うまでもなく
「ブルース・リーが学んだ拳法」
 だという点が大きい。
 70年代に日本で起こったカラテ・ブームは、世界中でも起こっておりますが、日本では極真空手のブームとミックスされたために、
「ブルース・リーはアクション俳優であって武道家ではない」
 という宣伝がされました。
 例えば、唯物弁証法を使った武道論の第一人者(というか、この人しか居なかった)である南郷継正氏は、自著の中で
「ブルース・リーは空手の初心者に過ぎない! あんな高い蹴りは実戦では通じない!」
 などといった論を展開していました。
 あるいは、連載されていた劇画『空手バカ一代』(原作・梶原一騎)には、極真のハワイ支部にブルース・リーらしき人物が入門したという逸話が挿入され、
「ブルース・リーは極真空手の初心者だったのか」
 という“ガセネタ”も広められていました。
 これらの例は、ブルース・リーに関する国内の情報をミスリードしたのであって、長く
「ブルース・リーはアクション俳優であって武道は素人レベル」
 という誤ったイメージを日本の武道界に定着させるのに一役買ったのでした。

 しかし、ブルース・リーがアメリカの武道界で有名であった事実(全米武道界のドンであったケンポーカラテのエド・パーカーの開催するトーナメントで特別演武をした時に、伝説となった“ワンインチ・パンチ”を披露したのは有名な話)が後に知られるようになると、これらの情報の間違いが指摘され、武道家としてのブルース・リーが再評価されていきました。

(ブルース・リーは俳優になる以前に武術の道場を開いており、脚本家のスターリング・シリファントや、俳優のスチーブ・マックィーン、ジェームズ・コバーン等にもプライベート・レッスンをしていて、そのような縁から『グリーン・ホーネット』のカトー役や、『可愛い女』『復讐の鬼探偵ロングストリート』等にからみ、『燃えよカンフー』の企画を出したりした。しかし、東洋人が主演することが難しい時代でもあったことから、ジェームズ・コバーンのアドバイスで香港に戻って主演映画を撮り、それが『燃えよドラゴン』の主演へと結び付いた)

 ここまで来るのに、日本ではおよそ20年以上はかかりましたが、海外では、とっくの昔にブルース・リーの武術家としての実力が高く評価され、彼が創始したJKD(截拳道)と共に、彼が香港で学んでいた実戦拳法“詠春拳”が広く普及していたのでした。
 JKDに関しては、ブルース・リーが香港時代に学んでいた詠春拳をベースにしているものの、太極拳や、北派少林拳系の節拳、南派の蔡李佛家拳、周氏蟷螂拳等を採り入れており、アメリカへ渡ってから学んだと思われる、テコンドー(ジョン・リーに師事)や、フィリピン武術の遣い手であるダニー・イノサントとの交換教授によるカリシラットや、ボクシング、フェンシング、レスリング、柔道、合気道、ロシアのサンボ、フランスのサバット(サファーデ)、ムエタイまで研究していたようです。
 総合格闘技のスタイルの原型を作ったのはブルース・リーであるとさえ言われていますが、それは、掴めるグローブやキックミットの発明、そして『燃えよドラゴン』や『死亡遊戯』で披露したスタンディングでの打撃・逆・投げからグランドでの寝技の関節技や絞め技で仕留めるスタイルで自明となるでしょう。
 そして、老子、荘子、孔子、孟子等の中国の思想家や、スピノザ、クリシュナムルティー等の哲学者の思想で体系付けました。とりわけ老子とクリシュナムルティーの影響が強いようですね
 もっとも、アメリカ流の成功哲学(ナポレオン・ヒルとか)にも取り組んでいた様子ですから、結構、現世利益的な下世話な考え方も可としていたのでしょう。
 この辺は、やっぱりアメリカン・ドリームの考え方があったのかもしれません。

 さて、では、詠春拳です。
 実戦的なケンカ拳法として有名になった詠春拳ですが、何と! 創始者は女性です!
 その名は厳詠春! 南派少林拳を父に仕込まれた(至善禅師に習ったという説が一般的)ものの、女性が遣うのに特化した拳法として、鶴の動きを参考にして編み出した・・・という伝説があり、南方の武術に多い鶴拳系統の拳法の一つです。
 まあ、この辺は伝説なので、本当に女性が創始したのか?は諸説ありますが、細かい手技と内股にして進退する歩法(クーニャン歩と言う)に特徴があります。
 ミシェール・ヨーが主演した『厳詠春』という作品もありますが、サモハン・キンポーがアクション指導している『ユン・ピョウinドラ息子カンフー』で、霊幻道士役で有名なラム・チェンインが演じた詠春拳の遣い手の京劇の女形をやっている師匠が素晴らしいですね。
 また、ニコラス・ツェーが主演し、ユン・ピョウがその父の詠春拳の有名な師範だった梁老師を演じた香港のドラマもあって、ここでもサモハンが特別出演していました。
 この時に相当、特訓したらしく、ニコラスは詠春拳の動きを武侠物でも、よく披露していますね。
『男たちの挽歌』に出ていたティ・ロン(『酔拳2』でジャッキー演じるウォン・フェイフォンの父親ウォン・ケイインを演じていた)も、詠春拳の遣い手で知られていますが、あんまり映画では披露していないみたいですけどね・・・。
 詠春拳の特徴としては、まず何よりも有名なのは、木人椿訓練です。対人練習をしなくとも木人相手に練習することで動きを徹底的に覚えさせることができます。
 逆説すると、これを練習しないと今イチみたいな印象さえあります。
 套路(型)の練習は、葉問系では三つあり(本来は五つあったらしく、葉問が習い易いように簡略化し理論化したらしい)、小念頭(シムニウタウ)、尋橋(チャンキャウ)、標指(ビルジー)の三つ。

 ちなみに大阪の賢友流空手道宗家の友寄隆一郎先生にうかがった話では、沖縄空手の六機手(那覇手系統の技)の原型になっている手法が詠春拳ではないか?ということでしたが、確かに那覇手系の剛柔流の手法と酷似した動きがあります。
 本土に伝わって以降の空手ではあまりやりませんが、沖縄空手ではカキエー(掛け手)と呼ばれる太極拳の推手に似た練習法がありますが、これは詠春拳の黐手(チーサウ)という訓練法から来た可能性も否定できないでしょう。
 また、沖縄空手のサンチン(三戦)の足構えは、明らかにクーニャン歩から来ていると推察できます。

『イップマン葉問・序章』では、日本軍人の空手家との対決が描かれ、日本軍に追われてイップマンが香港に逃げるように描かれていますが、実際は中国共産党に追われて香港へ移ったのですし、この辺りの描写は中国に返還された香港での映画作りが検閲でいかに改竄されているか?の露骨な具体例と言えるのではないでしょうか?
『ドラゴン怒りの鉄拳』の後日談を描いた『精武風雲』でも、日本人を徹底的に悪役に描いていますが、それが今の中国の政策だということです。
 実際にスタッフとして関わった谷垣健治アクション監督の本『アクション映画バカ一代』でも、監督やドニー・イェンから
「日本人が見たら気を悪くするだろう・・・」
 と心配する声があったことが明かされています。
 もっとも、この作品が日本でも公開されたことで極地的?にドニー・イェン人気が静かなブームとなっていることも事実です。
 特にラストの空手との対決では、単撃必倒の空手の突き技に対して、交叉手で受け流しながら多撃連発して仕留めていく詠春拳の戦闘法を遺憾なく表現していて見事です。

 物語の構造はジェット・リーの『スピリット』(『ドラゴン怒りの鉄拳』の主人公の師匠で実在の武術家・霍元甲を主役にした作品)に似ていますが、イップマンは理想的武術家であり温厚篤実でいながら、ひとたび立ち会えば無敵の強さを発揮する英雄的存在として描かれています。
 実際のイップマンも温厚な人だったそうですが、それでいて武館ひしめく香港で実戦拳法と恐れられていたのですから、道場破りや腕試しをコテンパンにするこの映画も、あながちフィクションだとは断定できないでしょうね。

 続編の『イップマン葉問』では、香港に来てからのイップマンが香港武術界のドン(サモハン・キンポーが洪家拳宗師を演じる)と友情を結び、外国人ボクサーの横暴に怒って挑戦したドンが殺されてしまい、イップマンが中国武術の名誉を護るためと友人の仇討ちのためにリングに上がる・・・という話で、何か『ロッキー3』みたいです。
 日本人武道家と闘ったのは迷蹤芸(秘宗拳)の霍元甲((かく・げんこう、フォ・ユェンジャア)だし、外国人ボクサーと闘ったのは、“神拳大龍”とあだ名された華拳の蔡龍雲(さい・りゅううん)です。しかも、蔡龍雲は、この時、14歳でロシア人の巨漢ボクサーを倒してます・・・。
 イップマンはそんな派手なことはしていなかった筈なんですけど、やっぱり、あの派手派手のブルース・リーの師匠ということで、英雄的に描かれたということでしょうね?
 何というか、『空手バカ一代』の中国版と思えばいいのかな~?

 以前、ヨーロッパでダンスを教えられている松田孝子先生が見学に来られた時に、旦那さんが詠春拳を習われているというので一緒に連れてきてもらいましたが、その時にいろいろ見せてもらって、大変、楽しかったですね~。
 松田孝子先生、また、遊びに来てね~!

PS;今月のDVD割引セールは、2月に引き続いて『合気の応用』と『基礎錬体』のカップリング割引(30000円のところ10000円引きの20000円)と併せて、『発勁と化勁』、『独己九剣の応用』を、それぞれ単体で、15000円のところ10000円に割引させていただきます。また、今月後半には新作『歩法1』を先行販売すべく鋭意製作中ですので、お楽しみに・・・。


//////////////////////////////////////////////////////////////////////////

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 東洋思想へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ


ランキングに参加しました。
クリックしてください。