◆母親から武術を学んで育ったというドニー・イェンは、子供の頃からの熱狂的なブルース・リーのファンで、太極拳などの武術大会での優勝経験があるという。

 3月6日(水)である。
 いま、我が家は、密かな
「イップ・マン」
 ブームである(笑)。
 イップ・マンは、「マン」が付くからといって、スーパー・マンみたいなアニメのスーパー・ヒーローというわけではない。
 イップ・マンは、中国語では、
「葉問」
 と書くのだが、未だ知る人ぞ知る存在なのかもしれないが、香港に住んでいた頃の若きブルース・リーのカンフーの師で、詠春拳(えいしゅんけん、永春拳)の使い手の武術家である。
 我が家では、特に中1の息子がイップ・マンの自伝的映画にはまっているのだが、私も、娘も一緒に見ているのは言うまでもない。自伝に自伝的と「的」をつけたのには、理由がある。そのことは、後述させていただく。
 もちろん、妻も見たがっているのだが、じっくり見る余裕がなかなかないようで、次の仕事休みの日に見るのを楽しみにしているようだ。
 映画というのは、2008年制作のウィルソン・イップ監督作品で、主演はドニー・イェン、その他、「トゥームレイダー2」のサイモン・ヤム、池内博之(36歳)、リン・ホンなどが出ている
『イップ・マン 序章』(原題:葉問、英題:Ip Man)
 と、2010年制作のウィルソン・イップ監督、『イップ・マン 序章』の主演、その他、サモ・ハン・キンポー(本作では、アクション監督を兼務)、ホァン・シャオミン、リン・ホンなどが出演している、前作の続編
『イップ・マン 葉問』(原題:葉問2、英題:Ip Man 2)
 の2本である。
 日本公開は、ともに2011年2月であったが、『イップ・マン 葉問』がまず公開され、評判が高かったので、『イップ・マン 序章』が公開となったという。

 息子も私も、主役を演じているドニー・イェンがとても気に入ったのである。
 もちろん、役作りの演技なのだろうが、清潔感があるし、スマートだし、動きもいいし、
「イップ・マン役にはピッタリだ」
 と、私などには思えたのである。
 それもそのはずで、母親から武術を学んで育ったというドニー・イェンは、子供の頃からの熱狂的なブルース・リーのファンで、太極拳などの武術大会での優勝経験があるというではないか。
 ファッション・モデル兼女優のリン・ホン(32歳)は、映画の中では主人公イップ・マンの健気な妻を演じている。
 特筆しておきたいのは、上記2作品の音楽を担当しているのは、日本人作曲家・川井 憲次(かわい・けんじ、kenji kawai、1957年4月23日- 。55歳)である。


◆「監督は、日本軍による中国人の虐殺シーンを入れるのは本意ではなかったそうですよ。あのシーンを撮ったのは、あくまでも中国政府からの指示であって、受け入れないと映画が作れなくなるんですよ」

 おりしも、夜、武術研究家の長野峻也先生と電話でお話させて頂く機会を得たので、専門家の長野先生にイップ・マンの映画のことについてあれこれ質問をさせて頂いた。
 なんと、映画関係者の中に友人がいるのだそうで、おかげさまで映画の裏話を耳にさせて頂くことができた。いろいろと面白い話を耳にさせて頂けたが、その中からいくつか披露させて頂く。
 ブルース・リーの師だからという話はさて置いても、イップ・マンの人生はとても興味深いので、
「本は出ていないのですか?」
 と問うたところ、映画にはなっているものの、
「日本語で読める本はまだ出ていませんね」
 とのこと。
 できれば、きちんとした評伝を読んでみたいのである。
 というのも、『イップ・マン 序章』では、広東省仏山市が舞台となっていて、1938年に日本軍に占領されたこの街での中国人虐殺が描かれていて、
「これって、中国映画ならではのジャパン・パッシングで、事実とは違うのではないのか?」
 と思ったからである。
 私なりにネットで調べてみると、ウィキペディアにこうあった。一部、読み易く修正させていただいた。

「イップ・マンは戦時中、日本軍に邸宅を奪われ次女を栄養失調で失っている。
 日中戦争で一度財産没収の憂き目に会い、中共内戦で再度共産党軍に財産を没収され、香港に亡命した後は
『日本人には詠春拳を教えるな』
 と公言したと伝えられる人物で、劇中でも日本軍との対決姿勢が物語の主幹を占めている」


 気になっていたことなので、日本軍の虐殺シーンについての疑問をぶつけたところ、長野先生曰く、

「監督は、日本軍による中国人の虐殺シーンを入れるのは本意ではなかったそうですよ。あのシーンを撮ったのは、あくまでも中国政府からの指示であって、受け入れないと映画が作れなくなるんですよ。
イップ・マンは、武術家ですから、伝統文化を重んじるわけです。ですから、当然、伝統文化を否定する共産党軍にも抵抗し、戦ったようですが、当然そんなシーンは描けませんよね」  


 とのことであった。

◆「ボクサーとの試合は、実際には無かったそうです。見せ場がいりますから、映画用の作り話ですね」

 続編の『イップ・マン 葉問』では、香港が舞台ということで、イギリス人ボクサーとの試合が描かれる。
 まさに激闘である。
 この映画のクライマックスといっていい。
 このシーンに関しても、
「どうも変だ。ボクサーとの戦いに勝つのに、こんなに時間がかかるはずがない」
 そう思っていたので、長野先生にこの点についても聞いてみた。
 すると、長野先生曰く

「ボクサーとの試合は、実際には無かったそうです。見せ場がいりますから、映画用の作り話ですね。
 もし、実際に戦っていたら、おっしゃるように、あんなに時間はかからなかったし、あれほどボコボコに殴れることもなかったでしょうね。
 事実、ブルース・リーも、詠春拳を習っていた頃にボクサーと戦ったことがあるそうですが、あっという間に勝ったそうですから」


 長野先生のお話は、私にとって
「えーっ」
「えーっ」
 という、驚きの連続であった(苦笑)。
 というわけなので、冒頭で敢えて
「自伝的映画」
 と書かせていただいたわけなのである。

 ついでながら、以下、
「長野峻也ブログ」
『ドニー・イェンがワシと同歳だったとは・・・』(2010-05-27)
 からの抜粋である。
 見出しは、筆者である。

/////////////////////////////////

◆「『葉問』の海外版DVDを新会員の方から借りて観たんですが、本当に素晴らしい。」

 何故か日本ではあまり名前が浸透しないアクション俳優に、ドニー・イェンがいます。
 一般的にはジェット・リーが人気が高いものの、ディープなマニアは断然、ドニーが好き。
 それは、演武中心のカンフーの世界で、ガチで戦えるカンフーの遣い手としての評価が高いからです。
 特に欧米ではドニーの人気はブルース・リーに迫る勢いで、ウェズリー・スナイプスなんて、『ブレイド』シリーズの撮影に参加したドニーと会った途端、
「師父・・・」
 って言って跪(ひざまづ)いて挨拶してんだもん。
 どんだけ尊敬されてるの?って唖然(あぜん)としました。


(中略)

 ドニー・イェンがブルース・リーの詠春拳の師匠、葉問を演じた『葉問』の海外版DVDを新会員の方から借りて観たんですが、本当に素晴らしい。
 日本語字幕がついてないから、日本の将校役の池内博之が喋ってるところくらいしか解らないんですが、“マッハ蹴り”の異名のある超速蹴りではなく、詠春拳の高速連打をこれでもかっ!という具合にダダダダダダダ・・・・と打ちまくるドニーの凄まじさに痺(しび)れます。
 しかも、関節技で相手を固めておいてダダダダダ・・・・と打ちまくる容赦の無さは、
「やっぱり、武術というのは容赦なくやる時はやらなきゃダメだな~」
 と思わせます。
 前半で北派拳法の遣(つか)い手と戦うシーンが見物で、この北派拳法の遣い手は、劈掛掌(ひかしょう)や戳脚(たっきゃく)の技を駆使して佛山(ぶつざん)の武舘(ぶかん)を次々に撃破していくんですが、その乱暴なところは
「ドニーでも勝てないかも?」
 と思わせます。
 が、ドニーは優雅かつ精密絶妙な技で圧倒してしまうのです。
 そして、クライマックスは池内演じる日本人将校の空手と対決。こちらも危なげなく勝ちますが、将校の部下が放った銃弾に倒れて・・・というところで終わります。
 もっとも、葉問は長生きして香港でブルース・リーに教える訳なので、ここで死ぬ筈もなく、シリーズは続き、現在、パート2が香港で大ヒットしているのだそうです。
 そんなドニーの新作情報は、『映画秘宝』の谷垣監督の連載中で触れられています。
 それは、あのブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』と同じ『精武風雲』だそうですが、ドニーは以前、このTVシリーズに主演していて香港での人気を確立した作品でしたから、今回も気合が入りまくっているそうです。

 それにしても、谷垣監督の記事中、ドニーの年齢が47歳だということを読んで、私は愕然(がくぜん)としてしまいました・・・。
 いや、そのぐらいだろうとは思っていましたけど、私と同じ年齢で、あれだけのアクションができるという点と、あれだけの引き締まった肉体を維持しているという事実にグワアァ~ン!と脳天に衝撃が走り抜けたのです・・・。


//////////////////////////////////


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 東洋思想へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ


ランキングに参加しました。
クリックしてください。