■「政府が決めた〈ベント〉も何の予告もなかった。町民が真下にまだいるのに、ベントが行われた。自分たちを日本国民と思っているのか。」

 以下は、ジャーナリスト・烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)氏が、福島県双葉町・井戸川克隆(いどがわ・かつたか。63歳)町長に取材してツイッターに公開した記事を、勝手ながら私が編集したものである。
「カバママ」さんから情報を提供して頂いたので、この場を借りてお礼を申し上げる。

 参考までに、以下、烏賀陽氏のプロフィールである。

 烏賀陽 弘道(1963年1月8日 - )は、日本の著述家、ジャーナリスト、音楽評論家。元朝日新聞記者。軍事学修士(コロンビア大学、1994年)。日本ポピュラー音楽学会員。日本外国特派員協会名誉会員。朝日新聞社友会終身会員。(ウィキペディア参照)

以下、見出しは筆者。

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●「胸から下、すね毛まで毛が抜けてつるつるになった」

 12日、町民が脱出するなか、双葉厚生病院の前で入院者や近くの老人ホームのお年寄りをバスに乗せる誘導をしていたら、最初の水素爆発が起きた。
「ズン」
 という鈍い音がした。
「ああ、とうとう起きてしまった」
 と井戸川町長は思った。
 数分して、断熱材(グラスファイバー)のような破片がぼたん雪のように降ってきた。
「大きなものはこれぐらいあった」
 と町長は親指と人差し指でマルをつくった。

「12日の水素爆発のあと、 福島第1原発から断熱材の破片のようなものが雪のように降ってきた」。
 その後、飯舘村にいた人が
「空気中を繊維のくずのようなものがキラキラ舞っていて、あれ、外なのにおかしいなと思った」
 という証言と一致する。
 水素爆発のあと、福島第1原発から双葉町に降り注いだ断熱材(グラスウール)の破片のようなもの。これはどう考えても
死の灰
 ではないのか。

 福島第1原発から断熱材(?)が雪のように降り注ぐ光景を、町長は
「それはそれは不思議な光景だった」
 と振り返る。
「そういう映画にでも出てきそうな光景だった」。
 なすすべもなく、服についた〈チリ〉を手で払い落とすしかなかった。

 そうした〈福島第1原発からのチリ〉を浴びた町長に
「それは危険なものだという認識はあったのですか」
 と問うと
「今でも
『もう終わった』
 と思っている」
 と応えた。
「それはどういう意味ですか」
 と問い返すと
「鼻血がとまらない」
 と言った。
「ずっと鼻血がとまらない。鼻をかむと今でも血が出る。たらたら垂れることもある。もう乾燥しているんだかなんだかわからない」

「胸から下、すね毛まで毛が抜けてつるつるになった」
「銭湯で隣に座ったじいさんが
『おい、女みたいにすべすべになっているぞ』
 というので気づいた」
「体毛がないと肌着がくっついて気持ちが悪い」
 と真剣な顔で話したあと、
「でも陰毛は無事でした」
 と付け加えたのが笑えた…。
「放射能のせいかどうか、わかりませんよ」
 とちゃんと断るのも信頼感があった。

「3月11日直後から東電の職員は2人が町役場に来ていた。ふだんから担当している広報課の職員だ。しかしメルトダウンや水素爆発の情報は何も教えてくれなかった。今から思うと顔面蒼白で、知っていたのかもしれない。」

 福島県大熊町にベントの連絡はなかった。同双葉町にもなかった。
「政府が決めた〈ベント〉も何の予告もなかった。町民が真下にまだいるのに、ベントが行われた。自分たちを日本国民と思っているのか。まるで明治維新の前からそのままではないか。」

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