■「この映画の特筆するところは、映画に出てくるほとんどの信じられないようなエピソードが、脚色ではなく事実だということだ」

 久々に、ショッキングな映画を見た。
 今風に、「超」をつけて、
「超ショッキング」
 と言い換えてもいい、それほど印象に残ってしまった。
 もちろん、ケーブルテレビで、である(笑)。
 アメリカの恥部を描いた映画である。
 おかげで、アメリカがさらに嫌いになった(苦笑)。
 録画しておいたので、妻にも見るように言っておいたら、3日の夜遅くに仕事先から帰宅して、布団に入って見ていたら、途中で見るのを止められなくなってしまい、結果、睡眠時間が1時間になってしまい、仕事へ出たが、流石に辛かった、とのこと(苦笑)。
 妻が大好きなアンジェリーナ・ジョリーが主役をつとめているから、妻は睡眠時間を犠牲にして見入ってしまったわけではない(笑)。
 睡眠不足になるのも、無理ない、と私がうなづくほど、凄い映画だったのだ。
 その映画のタイトルは、
『チェンジリング』(2008年米、142分)
 である。
 チェンジリングをあえて直訳すれば、「取り替え」となる。なんとも意味不明のタイトルだが、もちろん、見れば分かるような仕掛けになっている。

 さて、この映画は、実話である。
 それも、1920年代のロサンゼルスで実際に起きた非常に凄惨かつ猟奇的な事件
「ゴードン・ノースコット事件」
 の被害者家族を描いており、今から約80年前の事件ということで、映画の中では、関係者全員の名前は実名であり、「シネマトゥディ」にこうある。

「普通、実話に基づいた映画というのは、ベースとなった話をフィクションでドラマチックに脚色していくものだが、この映画の特筆するところは、映画に出てくるほとんどの信じられないようなエピソードが、脚色ではなく事実だということだ。」(「映画『チェンジリング』は実話だった……!耳を疑う衝撃の事実に迫る」)

 事実、
「これ、脚色なし、事実?!ほんとう?!」
 とつい口走りたくなるほど、いくつもの事件が重なって起きるのだ。
 つまり、アンジー演じるクリスティ・コリンズという女性は、一つだけではなく、いくつもの苦難を背負わされていくのである。
 見ている側では、恐怖、怒り、悲しみがない交ぜになる。
 かつて愛読したイギリスの詩人、バイロン(George Gordon Byron)の言葉に
「事実は小説より奇なり」
 というのがあるが、まさしくこの映画にぴったりといっていい。
 念のために、「事実は小説より奇なり」を分かりやすく言い換えると、
「世の中に実際に起こる出来事は、虚構の小説より却(かえ)って奇妙で不思議である」
 となる。
 政治家の汚職を描いたアメリカ映画『オール・ザ・キングスメン(すべて王の臣)』も、実在の政治家をモデルにした映画だが、『チェンジリング』の底なしの怖さに比べたら、色あせてしまう。


■「暴力や権力に屈しない母親の〈良知〉が、事件を解決に導いたし、人々を救ったんだよね」

 驚くなかれ、アマゾンのカスタマーレビューが、75件もあるではないか。そのうちの55件が5つ星、12件が4星である。なんと9割以上の方が、絶賛しているのだ。
 監督は、『硫黄島からの手紙』のクリント・イーストウッド、製作はクリント・イーストウッド、ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード、ロバート・ロレンツ。
 主役のクリスティン・コリンズをアンジェリーナ・ジョリー、グスタヴ・ブリーグレブ牧師を、『マルコヴィッチの穴』という摩訶不思議な映画で印象に残っているジョン・マルコビッチが演じた。
 日本公開は、2009年で、この映画は、第61回カンヌ国際映画祭出品、第81回アカデミー賞主演女優賞、撮影賞、美術賞にノミネートされたというが、主演女優賞を得るにふさわしい体当たりの演技であった。
「暴力や権力に屈しない母親の〈良知〉が、事件を解決に導いたし、人々を救ったんだよね」
 とは、妻の感想である。
 もちろん、この私も妻の感想には同感で、まさしく良知を予感させてくれて余りある実話であり、映画である。

 ストーリーが分かってしまうと、おもしろみが半減してしまうので、あらすじは書かないようにしたいのだが、そうするとこれ以上書くことがなくなってしまうので、どうしてもあらすじに触れざるを得ない・・・、参考までに、以下、アマゾンのカスタマーレビューから2つほどを転載させて頂くにとどめさせて頂く。
 以下にはあらすじが含まれているので、読みたくない方は、ここで読むのをやめて、ぜひDVDで見て頂きたい。
 そして、あらためてこのブログを覗いて頂きたい。
 なお、我が家では、ちょっと恐怖する映画でもあるのだが、あえて子どもたちにも見てもらった。現実に、世の中には、人を殺すことが平気な怖い大人がいるということを、少しは思い知ってくれたらとの老婆心からである。
 以下の他にも、
「面白いというより〈深い〉という賛辞をおくりたい」
 などといったコメントが寄せられている。
 なお、見終わった方は、ウィキペディアで是非「ゴードン・ノースコット事件」をチェックして頂きたい。驚くなかれ、映画も怖かったが、映画以上にもっと怖い事実が述べられている(怖)。


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●とてつもなく深い母親の愛情が、こじ開けた世界
5つ星のうち 5.0、2009/8/30 By監桶ロック

「全くジャンルの違う『ウォンテッド』でも、役柄にどこか母性を感じさせたアンジェリーナ。“母性”なくしては成り立たないこの作品を通じて、これほど慈悲深い母親役を自然にこなせるハリウッド女優は他にいないと、改めて思いました。
 前半はLA警察のあまりの非道さに翻弄される主人公が可哀そうで、正直に言えば観るのをやめたくなりましたが、ストーリーが思わぬ方向に進みだす中盤以降、画面にくぎ付けでした。
 女性への差別だけでなく、市民の権利などお構いなしの身勝手で腐敗した政治や警察、大恐慌というかつてない不安な時代背景の中、ひたすら子供の無事を信じて人生を歩み続ける姿には、本当に心をうたれます。
 絶望的な残酷さと、消えることのない希望とを、見事なバランスで描ききった作品です。」



●当時の社会を震撼させた事実。
5つ星の内 5.0 、009/8/30 By happybear0823

「原題の『Changeling』はヨーロッパの民話で
”取り替え子”
 という意味であり、1928年にロサンゼルスで実際に発生した事件に基づき、クリント・イーストウッドが監督、アンジェリーナ・ジョリーが主演し映画化したものです。
 実話であるためか、シングルマザーで懸命に育てていた子どもが突然失踪し、警察から別人の子どもを当人だと言われ、それを違うと言えば精神異常者として取り扱われ、想像を絶する苦しみを受けたことと察しますが、それを映画の中では敢えて強烈な感情を押し殺して、淡々と事実に基づく展開を繰り広げており、死ぬまで子どもの生存を信じていたという被害者家族への配慮と敬意を払ったものと思われます。
 この映画のコンテンツは、子ども失踪誘拐事件をクローズアップしただけではなく、どちらかと言えば、当時のロサンゼルス市警の腐敗体質の暴露した権力行使、女性や人権軽視といったダークな社会問題に主眼を置いたものと言えます。
 こういった事件が世の中に明るみに出ることはほんの一握りなのかもしれませんが、約80年を経ても衝撃であり生々しく感じ、二度と繰り返さないよう、安全で明るくクリアな世の中であってほしいと切に願います。
 アンジェリーナ・ジョリーはどちらかと言えばドンパチの派手なアクション系で多くの作品で好演をしていますが、この作品ではそういった容姿を一転し、ごくごく控えめな1920年代の一般女性といった演技に徹しています。」



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