■チャップリンではないが、一人2人殺せば、殺人罪で裁かれるが、戦争で敵を大勢を殺したら、勲章をもらえる、もっと言えば、キリスト教や仏教では、殺人はいけないと教えているはずなのに・・・、という矛盾を、子供たちにどうきっちり説明するのか、ということである。

 19日(日)である。
 テレビで妻夫木聡・主演
『ブタがいた教室』
 が放映されたので録画しておいたところ、子供たちは録画に気づいて、すでに見終わっていた(笑)。
 ほんと言うと、家族4人で一緒に見たかったのだが・・・(苦笑)。
 私も、小学生低学年のころ、父の実家の隣の分家で、豚を飼っていたので、よく豚小屋に入って子ブタと遊んでいたことを思い出していた。
 我が家では、私がこれはと思う映画を家族全員で見て、見終わった後に、あれこれと意見を述べ合ことにしているのだ。
 平成2~4年にかけて、大阪北部の小学校で実際に行われた授業だという。
 というわけで、娘の解説を聞きながら、早送りをしながら、ざっと目を通させて頂いた。
 クラス全員で可愛がり飼育した豚を、みんなで食べるか食べないかで、クラスはもちろん、父兄や教師たちの間でも議論沸騰する話である。
 私は、原作本の黒田恭史
『豚のPちゃんと32人の小学生・命の授業900日』
 は読んでいないのだが、大変興味深い取り組みだった、良い授業になったはず、と思う。
 子どもたちが、まさに命について、食べるということ、生きるということについて哲学しているのである
 ただし、私の見方は、ありがちな「命の尊さ」を学ばせる、という観点からのことではない。私の場合は、命以上に尊いものがこの世にはある、ということを前提にして見ているのである。
 命が尊いことぐらい、わざわざ教えなくても、子どもたちだって分かっている。
 では、何故、命を軽んじるような、もてあそぶような事件が起きるのか、と言えば、その一番大きな要因は、大人にある。
 チャップリンではないが、一人2人殺せば、殺人罪で裁かれるが、戦争で敵を大勢を殺したら、勲章をもらえる、もっと言えば、キリスト教や仏教では、殺人はいけないと教えているはずなのに・・・、という矛盾を、子供たちにどうきっちり説明するのか、ということである。
 つまり、大人もその価値観が混乱しているわけだから、子供が混乱しないはずがない。
 そして、この『ブタがいた教室』という映画でも、命をテーマに、生徒や父兄や先生方の間で、論争が繰り広げられるし、映画という枠組みを超えて、視聴者の間でも、議論が沸騰したのである。
 そんなわけで、家族で見る値打ちのある映画だと思うのだが、アマゾンのDVD『ブタがいた教室』に寄せられたカスタマーレビューを覗いて、その反応がほぼ両極端に分かれたのには、さもありなんと思わせられた。といっても、「ほぼ」であって、いろんな意味で興味深かった、感動したという人たちが勝っていた。もちろん、少数とはいえ、真ん中もいる。

 カスタマーレビューの内訳である。
 レビューを書いた人は、全員で59名、星5つが17名、4つが14名、その反対の星1つが16名、星3つは10名、2つが2名となっていた。
 以下、レビューから両極端をそれぞれ2つずつピック・アップさせて頂いた。
 それにしても、どうして、これほどの正反対の評価がでてしまうのかと、訝(いぶか)る人もいるのだろうが、つまり映画や本を見たり読んだりする側の価値観や受け止め方にも問題があるからである。
 まず、大別すると、ものごとを積極的肯定的に受け止める癖がある人と、批判難的否定的に受け止める癖の人がいる。それだけで、違って受け止めてしまう。
 好き嫌いもあるだろう。
 また、同じ人間であっても、その人の機嫌が悪い時と機嫌がいい時では、もうそれだけで映画の受け止め方は変わってくるのである。

 最後の記事は、私が私淑するドナルド・キーン氏に関する最新ニュースである。

 まず、5つ星から。

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【子供との対話に】
2011/6/17 、Bykatakata
 
とても大切なテーマを扱っているし、この授業のやり方、あるいはこの作品そのものに対しての賛否両論も、子供と対話するのに良いと思う。
 実際に子役にブタの世話をさせセリフを決めずに撮ったという討論の言葉は生の迫力がある。


 食肉用と愛玩用は違う、食べるためだったら情を移さぬよう育てるものという感想を多く見るが必ずしもそうとは限らないと思う。
 メインの目的が食肉ではなく可愛がってきた家畜(卵を取る鶏など)を最終的には食べるという行為はあることだしまた、最初から食べる予定だった対象に情を移してしまった苦しみというのも実際家族や友人の体験として聞いたことがある。
 今の食肉事情もまた一つの形でしかないということも含め、食べるということについて深く考えさせられる


【正解は無い】
2011/6/19、By ヒデ
 この映画は、見た人が個々にどうすればいいのかを問いただしている。
 生徒の意見が、みんな違う。すべてが正しい。
 しかし大人になっている自分にとってどう対応するか考えると。この話と同じ結論に至ると。
 食のテーマだと、生きていくには食事ををしなければならない。
 生ある動物を食す事を悪とするならば、生ある植物はいいのだろうか?
 生きていく事が悪なのか?
 誰一人として結論は出ないと思う。だだ、日常で何も考えずに過ごしている時に立ち止まって考える事が必要なんだと感じた

 次に、以下、ひとつ星から。

【こんな映画見るんだったらベイブを見たほうがよっぽどいいですよ】
2011/6/18、By kemmaarch
 
非常に不快感を覚える映画だった。しかも実話をもとにしているというではないか。信じられない。
 こんな教師の独り善がりの教育に巻き込まれた生徒さんたちと、命を弄ばれた豚さんに同情します。


 多くの人がすでに指摘しているようにペットと家畜は違う。ペットとして可愛がっていた動物を、最初の約束だからという勝手な理由で、小学生達に「殺す」決断をさせるのはいかがなものか。この教師は命の大切さを本当にわかっているのか?

 命の大切さを教えたければペットを最後まで面倒みさせればいい。生きるために人間は他の動物を食べないといけないのだということを教えたいのであれば、ペットとして飼うべきではない。まあ、人間は他の動物を食べて生きていかないといけないなんて事は、大人になってから考えたい人が考えりゃいい話であって、子どもの頃から考えることでもないのだが。

 しかも、私が一番気に食わなかったのが小学生にディベートをさせているシーンだ。先生は何も助言をしないで生徒達に意見を述べさせている。
 小学6年生といえどもまだ子どもだ。幼稚な論理しか持ち合わせていない。15少年漂流記じゃあるまいし、彼らだけで解決できるような単純な話ではなかろう。
 子ども達に一方的な価値観を押し付けるのではなく、自由に討論させたいとか考えていたのかもしれないが、先生はむしろ多様な価値観をまずは提示してみせ、そのような多様な意見を発展させることで子ども達はいろいろな見方・考え方ができるようになるのではないかなと思う。
 まあ、そもそも、この先生自体、確固とした考えがあったとは思えないけど。。。そういうことで、この低レベルのディベートと先生の無責任な対応を見ていたら、それだけで非常に不快になれました。

命の大切さを学びたければ、ベイブを見たほうがよっぽどいいんじゃない。


【★1つすらあげたくない】
2011/6/17、By ゆき
 心底嫌な気持ちにさせられた映画でした。

 家畜は家畜、ペットはペット。今の教育する側ってそれくらいの分別もつけられないの?
 クラスというコミュニティの一員と化した豚は、もう家畜じゃないよね。豚だからという理由で「仲間」を食肉センターに送りますか?

 つくづくあの授業の子供たちが可哀想でした。私は豚を食べますし、豚の解剖も小学生の時に見てきましたが、 この映画に感じた不快感と苛立ちはその比ではありません

 そもそも、あの先生の安易なコンセプトが間違っています。
 あなた達のエゴで、可愛いだの食肉にするだの、命を弄ぶなと言いたい。

 
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キーン教授が最終講演 日本永住後も「意欲」
2011年6月14日 12時03分

【ニューヨーク=長田弘己】
 日本文学研究の第一人者で、日本永住を決めている米コロンビア大のドナルド・キーン名誉教授(89)が13日、ニューヨーク市内で最終講演を行った。
 約300人の聴衆を前に、
「日本へ永住後は、求められれば(東日本大震災の)被災地へ行き、講義をしたい。被災者の忍耐強さを深く尊敬している」
 と熱っぽく語った。
 講演は大学の講義に似た対話形式で、日本文学・文化への情熱がテーマ。キーンさんは、コロンビア大に入学した時の日本人教授との出会いや、源氏物語に感銘を受けたことなどに触れ、
「日本語はなんてきれいな言葉なんだ」 
 と衝撃を受けた当時の思い出を語った。
 日本国籍取得の意向を公表して以来、
「勇気をもらった」
 と多くの手紙が寄せられたと話し、笑顔を見せた。
 キーンさんは、8月下旬に日本へ移り、江戸時代の蘭学者で発明家、平賀源内の著作の翻訳に取り組むという。
 講義後、本紙の取材に、漢字での名前の表記を
鬼怒鳴門(キーンドナルド)」
 にする考えを明かした。
(中日新聞)


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