Allan Holdsworth のJazzhouston とのインタビュー (こちら にも転載されています)の翻訳です。
The Allan Holdsworth Interview!
by
Mike Morrison
Feb 9th, 2006
MM: アランはギター界にとても貢献してるよね。新しいアイディアをどんどん開拓してるし。たとえば、パワー・アンプ・ソーク1 やサイレント・スピーカー・ボックスを開発することで、多くのギタリストを呪縛から解き放ってる2 し。
AH: 呪縛の話は知らないけど、ともかくありがとう。
Q: 今でもシンタックス は使ってるんだ……
A: スタジオの中だけだけどね。なにしろ今じゃとても希少だからね。数年生産されてないし3 。2つもってるけど、1つは使えてもう1つは壊れてる。その気になれば元の会社にいた人を突き止めて修理を頼めるんだろうけど、持つ運びやツアーでの移動はホントに大変だからね。シンタックス自体の信頼性にも問題がある4 しね。スタジオで使い続けられることを神頼みするしかないんだ。
Q: 気に入っているモデリング機器はないの? シンタックスの代わりになりそうだけど。
A: VG-8 は気に入ってるんだ、本物のコントローラーじゃない5 けど…… 未だにピックアップの類を使ってるんだよ。ローランド がオレのギター2本に組み込んでくれたものがあるけどね。ジョン・マクラフリン がローランドの新しい機器について教えてくれたんだ。ピックアップの類は使っていても依存の度合いは減っている6 って。マクラフリンはミュージシャンとしてはもちろんだけど、テクノロジーにも精通してるから、とても尊敬してるんてだ。そのマクラフリンがローランド製品を薦めてくれたんだ、コンピューターにも音を取り込めるって。いい音してるよ。ジョンは、オレがシンタックスでやったことに感化を受けて、自分でもシンタックスを試したんだけど、ピンと来なかったんだね。どうしたわけかオレはシンタックスにはまったんだから、運が良かったんだろうね、オレにはしっくり来たんだ。ローランド製品に探りを入れることになるだろうね。いずれシンタックスは完全に壊れるだろうから。
MM: ローランドが聞けばきっと喜ぶよ! ローランドがサポートしてくれればいいね……
AH: (笑)ああ、そうだね。
Q: 今使っているシンセの音源は?
A: 90年代にはマトリックス 12 を2台、オーバーハイム・エクスパンダーを2台使っていたんだ。ホントに大好きだったよ。あと、ヤマハのDX-7、小さい箱のようなTX-816も持ってたね。この2種類のヤマハからは色んな音を出したね、気に入ってたよ。今耳にするようなサンプリング・ベースのシンセは好きじゃないんだ。ちょっと嫌な点があってね。コンピューターを使った音楽はずっと耳にしていて凄いとは思うんだけど、オレがシンタックスを使っていた終わりの頃には、シンセの類にイライラしていたから、音源もシンタックスも全部売り払ったんだ。半年ぐらい経ってから、処分したことがひどく悔やまれてきたので、あとで友達になった人のところに駆け込んで、その人が持っていたシンタックス1台とオレのギター2本とを交換したんだ7 。ところが、その頃はシンセ音源を一切持ってなかったし、オーバーハイムの類も見つけられなかったんだ。製造中止だったし……。今持ってるのはヤマハのDXやTXのモジュールだよ。自分でプログラムして色んな音を出してるんだ。
1 元の表現はpower amp soaks。ジュース・エキストラクター やハーネス に当たるものを、一般的にはこう言うらしい。基本的なアイディアは、フル・ボリュームで出力しなくても、フル・ボリュームで鳴らしたときのようなトーンを獲得出来るようにする、というもの。
3 元の表現はthey haven't been made in several years.。シンタックスを生産した会社は倒産しているため、theyが存在している(たまたまここ数年生産されていないだけ)ことを含意しうる現在完了が使われるのは奇妙に思える。 → むしろ「生産が終わって数年経つ」ということ??
4 設定してあるパッチ情報が消失するといった問題があるようだ。
5 元の表現はit wasn’t really a controller。見かけは単純過去時制だが、仮定法過去と見て良いだろう。つまり、「コントローラーではない」と断言すると、それが事実に反してしまうということ。では、どうして端的に「コントローラーだ」とは断言できないのか? ここに、V-ギターの〈分かりにくい〉点が絡んでくる。脚注6参照。
6 元の表現はthat works off that same pickup thing。ローランドによるピックアップを使った「ギター・シンセ」は、物理的弦振動から音程情報を取り出して、その音程でシンセを駆動する。対して、同じローランドのV-ギターは、ピックアップを介すものの、音程情報を取り出すのではなく、音自体を取り込んで、取り込んだ音を加工することで「モデリング」する。前者の場合、音程検出のタイムラグが問題となるが、後者はいわばエフェクターの延長でしかなく、タイムラグの問題は発生しない。こうしたタイムラグの問題が軽減することが、専用ピックアップを介しつつも、その役割がギター・シンセほど重要ではなくなった結果であるとホールズワースは考えているようで、それをwork offとの言い回しで表しているものと思われる。