しばらくすると、海面に白い塊のようなものが目立つようになってきた。
何かなと思って近づいてきたそれを見てみると、氷の塊だった。
崩れた氷河の一部のようだ。
更にフィヨルドの奥に進んでいくと、遠くに見えていた青い壁がどんどん迫ってきた。
船は、急な崩落が起きても安全が保てるギリギリのところまで氷河に近づいていった。
これはすごい!!!
来る途中で見た氷河よりも更に迫力がある。
感動して眺めていたら両サイドから歓声が。
何かと思ってみんなが見ている方向を見ると、氷河が崩れ、海へと崩落していくところだった。
氷河は大きな音を立てて海に落ち、そのときの衝撃で起こった波が船まで伝わり、大きく揺れた。
その後も何度か大きな崩落があり、その度に大きな歓声が上がった。
崩落を見ているうちに、イベントとして崩落を眺めるのは確かに迫力があって楽しいのだけれど、こんなに頻繁にしかも大規模に崩落が起こっているなんて、温暖化のペースはこんなにも速いのかと思い始めた。
世界中で問題になっている地球温暖化のとてもわかりやすい一片を、直にまざまざと見せ付けられ感動と同時に複雑な気持ちになった。
氷河を離れクルーズも終盤に差し掛かってくると、今回はクジラは難しいかもなと考えていたが、外洋を引き返していた頃に突如アナウンスが。
「みんな、2時の方向を!Killer whaleがいるぞっ!!!」
アナウンスと同時に席を立ち、デッキに出て2時の方向(進行方向ななめ右前方)を見ると、そこには確かに特徴的な鋭いシルエットをしたシャチの背びれが見えた。
群れのようで、小シャチもいる。
すごい!!
写真にはなかなか収めることができなかったが、ちゃんとパンダのような白い斑紋も見ることができた。
大きい。
あんな大きな生き物が海の中で暮らしているなんて。
わかってはいることだけど、いざ野生のシャチを目の前にするとやはり感動してしまった。
その後しばらくシャチを見ていたが、今回船内アナウンスのわかり易さのおかげで、本当に容易にシャチの姿を捉えることができた。
例えば、正面は12時、右は3時、後ろは6時、左は9時というように、時計の配置に例えて方向を伝えてくれたため、国籍に関係なく誰もが理解できる非常に明快なアナウンスだった。
やがてフィヨルドの湾奥に船は戻り、再びスワード港に。
そして、来るときに乗ったアラスカ鉄道に乗り、アンカレジへと戻った。
帰りの列車からもムースを見つけられた。
アンカレジの町に着くと23時ごろになっていたが、高緯度にあるため町はまだ明るい。
とはいっても、次の日の朝のフライトで日本に帰るので、パブで一杯飲んでから宿に戻って、寝た。
氷河といい、シャチといい、今回は本当にいい旅だったな。
もし次来る機会があったら、今度は今回見られなかったザトウクジラを見てみたいな。