
性分なのか、僕は何かに夢中になると、仕事でも遊びでも、まあこれくらいでいいか・・が苦手だ。
気がつくとその事で頭が一杯になってしまっている。
何かに夢中になるっていうことは、一人でやってる分にはいいのだろうが、社会ではなかなかやっかいなことも多い。
レザークラフトは仕事から帰って何時間も続けてやっていた時期が何年も続いた。これは自分の思いが、自分で完結できるので、疲れていても睡眠時間が短くてもいっこうに気にならなかった。
それがここ最近ぷつんと切れてしまっていた。どうしたことか今回は、他に何かわくわくするものができたわけでもない。家では愛犬のかたわらでぼーとテレビやユーチューブ見ながらだらだら一日をすごしたりしていることが多くなっていた。人とぶつかってでも思いを通そうということが減り、やっかいなことから身を遠ざけることも増えてきた。年をとるってこういうことかと、考え始めていた。
そんな時に出会ったのがこの革。
イタリアの ラ・ペルラ・アズーラ というタンナーのアラスカという革。イタリアでアラスカって笑
訳あって、かみさんと東京に行く機会があり、入った革屋さんで見つけた。ごつごつとしたしぼが出た革で、表面にうっすらと白いワックスがかかっている。大地に降る雪だとか。なるほど。
動物の皮はそのままでは腐ってしまうため、鞣(なめ)し、という行程を経て製品を作る革にする。元々は人間のだ液でなめしてきたものだそうだが、やがて植物のしぶ(=タンニン)を使いなめすようになった。
さらに植物のタンニンに代わり化学薬品が使われるようになるとクロムタンニンなめしが主流になった。なんせクロムなめしは均一な革が大量に、短時間でできる。植物タンニンなめしでは5か月かかるところがクロムタンニンなめしは1日~5日でできてしまう。植物タンニンなめしの革に比べて傷つきにくいし、変色も少ない。革鞄の8割がクロムタンニンなめしだそうだ。植物タンニンなめしは採算が会わなくどんどん減っていった。
しかし近年は製造過程で大量に出される化学物質による環境の汚染が問題視され、植物タンニンなめしが見直されるようになってきた。一つ一つの革の個性を大事にすることにも目が向けられるようになってきた。
イタリアのトスカーナ地方には、こうした植物タンニンなめしを頑なに守るタンナー(鞣し工場)が数多く集まっている。ラ・ペルラ・アズーラもその一つ。
表面のでこぼこ(=しぼ)は手作業でごしごしとこすってつけることもあるが、これはタンブラーに入れてがらんがらんとまわし、つけてある。何にしても型を押して作るわけではないので一つとして同じ表情のものはない。
このアラスカはそこにさらに白いワックスを吹き付けてあるわけだ。とてつもなく手間と時間がかかっている。凸凹部に白いワックスが厚め薄めに残り、地の色が覗いているところもあるため、しぼが際立つ。このワックスはやがて落ちていくので雪解けのように、大地が表れ、みずみずしく艶が増していく。
東京の革屋さんでアウトレット品として少し安く出されていたこの革は、所々に白いワックスが点々とたれたような跡をつけており、まるで陶器を焼き上げたときの釉薬の感じにも通じるものがある。傷があったり、少し色褪せ、明らかな変色がみられるものもある。だからアウトレットなんだろうが、しぼのランダム感が荒々しくも、おもしろい。
ごつごつと節くれだった自分の手の甲と見比べていたら、
「少し変色もありますが・・」と、店の人に声をかけられた。
「これもらいます。」と、即答してしまった。
革にはその動物がこの世に生まれてきた物語がある。生きてきた証。一つ一つ命は違うことをあらためて教えてくれる。まあ、そんなことを考えるのは人間のエゴかもしれないが。
命失ってもこれからこの生きた証はまだまだ底光りを増していく。
ペンケースやミニポーチを作ってみる。ランダムなしぼはあえてどうどうと見せてやればいい。同じものをいくつ作っても同じ2つにならない。




















