むかし、むかーしのお話。


あるところに、スポーツ大好きな女の子が居ました。朝から晩まで9年間、やればできる、そう信じていました。

持っていた衣服はパジャマと制服とTシャツとジャージという中でも何の不満もありませんでした。

ずっと、この世界で生きていきたいなと願っていました。

ですが、9年目のことです。

全力で走っていたところに進路を変えた人を避けた瞬間、変な音と激痛を感じながら転んでしまったのです。

女の子は、入院をしました。そこでもう一線でやっていくのは難しいと言われました。

春からはプロになることが内定していました。

そういう時に、転んでしまったのです。


全てが終わったと思いました。

病院の窓から下を見て、落ちたら死ぬよなーもう考えなくても泣かなくてもいいのかなーと思っていました。

誰にも会いたくない、ましてや同期には。

夢に向かっている人に会うことは苦痛でした。

私には何も失くなったのに。


自分探し、これからなんて考えられなかった。

松葉づえ生活は前にもあったけれど、今回はもう前を向いて進むことはできないんだと。


そんなとき、女の子のお父さんが言いました。

やりたいこと、やらなきゃいけないことをノートに100書きなさい、そしてクリアしたら消していきなさい、それが消える頃にはまたやりたいこと、やらなきゃいけないことが山積みになってるからと。


女の子は、書いてみました。

松葉づえ卒業、ケーキを食べる、フリフリの服を着る、焼き肉を食べる…そんなところから始めました。

退院して学校に行っても、部室に行けませんでした。

卒業まで。


夢が途切れた瞬間から、これからどうするか、何をするか探しをしなければならず、投げ出しそうになりながら、卑屈になりながら、周りを羨み妬みながら、ただ日を過ごしていきました。


女の子は、大人になりましたが、『その時』から同期とも会わず、学校に関わるものを自分の中から消していきました。

そうして、そこから、歩き始めをしていったのです。


お母さんになり、子どもが巣立ち、空の巣症候群になった時、軽くてすんだのは手放すことを昔、痛みと共に体験したからだったのかもと、何十年も経って考えました。


女の子はおばさんになり、たくさんのしっぽ達と暮らしながら、いつも言っています。

結果オーライと。

            おわり


路はひとつではない、枝葉を広げて見れば いくつもの路がある。そこから選ぶのは自分。

選んだら後悔しない


反省はしても後悔はしない

それがおばさんになった女の子の信条となっています。



かーちゃん、生きろ‼️