少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (単行本)/KADOKAWA/角川書店

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【十倉和成。中堅おぼっちゃん大学の1年生にして、20歳。
彼のボロ下宿の天袋から、絶滅危惧種の大和なでしこ“さち”がとつじょ這いおりてきたその日から、その停滞しきった生活は急転する!
ノンストップ迷走系青春ミステリー!】


走れ走れー

■ 感想とかネタバレとか

女人禁制の下宿先で「温子」と「武蔵」が誘拐されたことを発端に
屋根裏から女の子が出てきて一緒にご飯を食べる
キネマ研究部の部長からは邪険にされるわ、ご飯を食べにくるアモンからは説教されて試験前に教科書取られるわ、合コン大好き女の子大好きな久世とさちさんは仲良くなってしまうわ、
伝説の部長には映画を撮らないのかと誘われるわ
なんだこれ 映画に始まって映画に終わる、むしろ映画しか出て来ない。
映画+どうしようもない恋愛

面白かったー
特にみんな一斉に走るところもう意味解んなくてすごい楽しかった!
なにあれすごい意味解んない! アモンさんも意味解んない(笑) 忠犬ハチ公の資質。
ああいう勢いが全てを持っていく。ベスパ疾走事件も好きだけどあそこでいっせいダッシュするの好きだ。
走れ走れー!!!

あとあそこでアモンが「撮影するから通るな」でラクロス部と揉めたのを見てそりゃ揉めるわと思う
ただしそのあとラクロス部員が文句言うのはイラッと来た、「駄作映画の為になんで道開けるんだ」は、じゃあ、「傑作映画なら開けるの?」ですよ、結果論で道開けるか開けないか決まるなら、未確定の未来引き合いに出して言うこっちゃねーわ。


キリコ嬢とイソシマ氏はなんとなく解った
自分自身を賭けるのが怖くなったのか
境界線を、境界線だと知ったうえで、向こう側に行く勇気。
保守的? というか…自分は自分だけなのに自分だけじゃなくなった、かな…

「○○に似ている」が決していい意味でないことを承知の上で
プシュケの涙を思い出し、おちゃらけ王(+かもめ高校)を思い出し、東京バンドワゴンを思い出し、犬はどこだを思い出した。
死んだ人の道を辿り、鬱屈した学生生活の中で、古めかしいやり取りを、うつくしい言葉で。
痛いくらいの、怖いくらいの、死んでもいいくらいの「幸せ」がきっと、どこかにあって、それを読むのも好きで、きっと、同じくらい、痛みを伴うしあわせも、好きなんだ
終わりもしないし、始まりもしない。ただけじめをつけるだけだ。

間違え続けた手紙の宛先を、交換すれば、過去の言葉がようやく伝わる。
「はやくこい」はずるい。あれはずるい。ずるいだろう。
考えるよりも早くいっしゅんで届くのは、ずるいだろう…


深夜の古書店での裸祭とか
わたしなんでベスパ知ってるんだ? ベスパ直す話
映画嫌いが2人に映画狂いが…何人だ
落ちて終わって、偽装して続けて、得たからこそ撮れなくなって、失ったから理由を確かめて、辛酸舐めたから遠ざけて
「さち」さんが温子と武蔵をさらった理由

装画はなまにくATKさん