臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)/小林 泰三
¥700Amazon.co.jp

【彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。
興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。
彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物語を持っているという。
彷徨い人はこの怪しげな「臓物の物語」をきこうとするが…。
グロテスクな序章を幕開けに、ホラー短編の名手が、恐怖と混沌の髄を、あらゆる部位から描いた、9つの暗黒物語。 】
(アマゾンから引用)

■ 感想とか色々


透明女
停電、が、地味に、怖い! 人間の体がぐちゃぐちゃになっていて楽しかった!
お腹開いて内臓の代わりにモノ詰めてるの(詰められたの)読むの好きだ!
脳の代わりにぷるぷるしてるものとか楽しすぎる、善意による解体中はその描写なしに会話が続くのでそれがまたよかった、短い呻き声も長い叫び声も味があってよかった、特にひとりめが気持ち悪くてよかった!

薄ぼんやりとしか思い出せない同級生と、かかってくる旧友からの電話


ホロ
ホロ(本物と見紛う幽霊)と実体を持つ人間の話
ホロができる前に出会っていた女性との会話、共有する幻覚、もう1回やり直し
どこまでが幻覚で、どこからが実体?
コーヒーを持って来たウェイトレスは実体を持つことができたから本物。
特別なのは自分と相手のどちら。

少女、あるいは自動人形
ある意味「ホロ」「造られしもの」と同系統っちゃ同系統。
どちらがオートマタで、どちらが人間?
完璧な自動人形と、くるみ割り人形と、不完全な人間

攫われて
間違えた誘拐犯と、間違えられた女の子三人組
足の筋切るあたりが好きだった、死んだ友達の服を着たりするのもよかった
殴られたあと吐いた血だまりに歯が数本
誘拐犯が「え!?」てほど爽やかになっていたので驚きました、なんだあれ


釣り人
キャッチ&リリースを信条とする釣り人たちの話
犬は殺されちゃうけど、人間は一度捕まって解放される


SRP
宇宙人(?)と人間
ふたりしかいない部署、やる気溢れる女性と、怪現象が絶えない男性の話
掘削機!!! 目だけの妖怪が増殖するのとか(内臓までも目ばかり)素敵だったけど、八岐大蛇で急に冷めた

十番星
宇宙人と虐めっ子と虐められっ子
きいきいきいという鳴き声(?)
いろいろ、考えても、怖いことに変わりはないのなら、考えない方がよいのでは?
誰かと共有できると恐怖って和らぐのか? 恐怖を共有できる人がいると和らぐのか



造られしもの
「ホロ」、「少女、あるいは自動人形」と似てなくもないけど、宇宙人とか完璧な存在とか妖怪とか霊とかけっこうとんでもだったよね
欠陥までも装ってデザインされた人間に幸せな生涯を送らせる
「プロジェクト終了」、「全員偽装解除」。
「機械を作る機械」も好きだし、「機械が作った人間」も面白そうだが、これグロではないな


悪魔の不在証明
村でのヒエラルキー
余所者は余所者としてヒエラルキーの外に居続けるが、見えないルールに取り込まれるか
神を説き続ける男と、段々彼の話を聞きに行く村人たち、反発する男と、宥める女
向こうの土台に乗った時点でアレだなあと思ってたけど、信仰するものの違いなので、なんとも
観衆は正否を判断するのではないし、「正しい」ことが常に正当に評価され埋もれず支持されるのには、それこそ同じ土台が必要では…、なまじ同じ言語喋っているだけに通じ合わないと「え?」てなる
ふたりのやり取りは「ふんふん」と思いながら読んでたけど、これどこまで行っても平行線な気が
最後はひとり残して全員死亡、「悪魔の不在証明」のタイトル通り

プロローグも解体や殺害してない割に気持ち悪くて好きだった、エピローグがあって物語が締まった。あれはよかった!


カバーイラストは森山由海さん
カバーデザインは森川結紀乃さん



「十番星」追記/2012.9.15
卒業アルバムに住所は載っていない