ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)/美奈川 護
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人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている。
統一された政府により、様々な芸術が規制を受け始めた世界。
しかし、そんな世界各地の壁面に封印されたはずの名画が描き出される事件が起こる。
『Der Kunst Ihre Freiheit!』
絵とともにそう書き残していく<アート・テロリスト>を人々は敬意を込めて「破壊者(ヴァンダル)」と呼んだ。
 政府を敵に回すという危険を冒してまで彼らが描く理由とは。そして真の目的とは――? 第16回電撃小説大賞金賞受賞作。 】

おおおお。

■ 感想とか色々~

世界政府が発令した<プロバガンダ撤廃令>で戦争関係全部ダメだよ!
描いたら捕まっちゃうよ! 演奏したら捕まえちゃうよ! っていう世界。なんて迷惑な。
あれ? じゃあなかったけど小説で戦記とか書いたらアウトなのかな。
自国の歴史をどうやって学ぶんだろう……こういうのって狩り始めたらどこまでも狩るから嫌。

「大戦」が終わって「ちょっとお前らいい加減にしろや」となったのかどうかは知らないが戦争やめましょうねな話になったらしい。
p197にちょと書いてあった。

風神雷神図屏風ならさすがのわたしでも判る!
でも作中では「風神雷神図」だった。俵屋宗達。
他に出てくるのは
グスタフ・クリムト「接吻」
フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」
ウジェーヌ・ドラクロウ「民衆を導く自由の女神」
パブロ・ピカソ「ゲルニカ」
レナード・ウィンズベル「ノートルダムの凱旋」(架空)
最後にヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」。
フェルメールの少女は心の中の命名が見返り美人でしたほんとすいません。(持っている図書カード1万円がこれ)
あの子可愛いよね! ゲルニカはドイツが空爆したんだへー。

始まりは三年前の日本。
一瞬にして廃ビルに描かれた葛飾北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪浦」。

画家と科学者の間に生まれた正確に模写出来る目を持った女の子。
左側サイボーグで不死ではないが不老の「ハルク」。
「人の姿を模さないこと」「人に危害を加えないこと」が縛りのネーヴォはAI。
インターポールからはゲティスバーグとカッツェ。
「君は何のために、警官になったんだ?」ゲティスバーグの問いかけに「全てを平等にするためです」と答えた女性警官。(p269)
ゲティスバーグが上からひとりだけ部下を付けてもらえるときにつけた条件が「馬鹿だけど優秀な警官」。
ちなみに「自分と似た人間が欲しかったってことだよ。僕も馬鹿の部類だからね」(p270)らしい。
ハルクがハルクになる前に知り合ってんのかなー 少年兵って呼んでた。
大規模反政府組織「DEST」は指導者が射殺されてその力が弱まってるとか。
ちなみにエナ(女の子)のお父さんは「見てはいけないもの」を見て描いたから死刑執行。作中のフランスでは死刑制度復活してます。リアルでは死刑廃止ですよねーと思ったらウィキペディアによると憲法で死刑の廃止が明記されているらしい。わーお。


基本的には町を転々としています。美術館侵入して絵を覚えて描いて人の目に付くところに張って(?)逃げる。
空っぽの宝石箱に行ったり、カジノに行ったり、パトロンの所に行ったり。パトロンが中々出てこなくてパパとパブロフを行ったり来たりしました。
描くときは篭もっちゃうらしい。期待を裏切らない進み方をする。恋愛も冒険(戦闘)もないんだけど地味によい。
インターポールの2人も癖があってよい。ページがない分ちょと不憫かもしれん。

p292がじんわり泣ける。
芸術に、その自由を。

イラストレーターは望月朔さん!
良い名前! この人の名前好きだー。